ヴァシュロン・コンスタンタンの「ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955」はコルヌ・ドゥ・ヴァッシュの愛称でコレクターから親しまれてきたRef.6087を現代的な解釈と新しいムーブメントでもって2015年にリバイバルしたモデルである。しかし、これまでラインナップされていたのはプラチナケースと翌16年に追加された18KYGケースのみだった。しかし19年に急遽SSケースモデルが登場。愛好家たちは歓喜の声を上げたのである。今回はこのSSモデルをディテールがどれだけRef.6087に忠実で、またどの辺りが現代的に手直しされているのか観察していく。
手巻き(Cal.1142)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS(直径38.5mm、厚さ10.9mm)。3気圧防水。420万円(税別)。
Text by Mark Bernardo
ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955」
2015年にプラチナモデルが、翌16年に18KYGモデルが発売、そして19年に満を持してSSモデルが登場した「ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955」は、1955年にヴァシュロン・コンスタンタンが限定生産で発表したRef.6087をリバイバルした手巻きクロノグラフだ。
現在でもコレクター達の垂涎の的として君臨するRef.6087はヴァシュロン・コンスタンタン初の防水クロノグラフとして知られるが、その事実以上に多くの時計愛好家の心を奪ったのが、仏語で水牛の角を意味する“コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ”の形状をしたラグである。
当然、リバイバルの際もこの特徴的なラグは当然そのままの形状を引き継いでいる。そのほか、Ref.6087を特徴付けていたデザイン要素であるマッシュルームスタイルのクロノグラフプッシャーや刻みのついたリュウズも見事に再現された。
直径38.5mmというヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955のケース径は、現在のメンズウォッチの中では小ぶりに思えるが、それでも当時主流だったオリジナルの35mmに比べて拡大されている。文字盤のレイアウトもオリジナルに近く再現されているが、アプライドインデックスの書体や時分針とクロノグラフ針の太さ、3時位置の30分積算計と9時位置のスモールセコンドの書式などに現代的なニュアンスが付け加えられていること分かる。
SSケースをまとうヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955のダイアルはヴァシュロン・コンスタンタンが「ベルベット仕上げのグレーオパーリン」と呼ぶもので、そこにスネイル仕上げのサブダイアルが組み合わさる。ミニッツスケールはホワイトにアラビア数字を配した形で表され、一方タキメーターは55年のオリジナルモデル同様文字盤を取り囲むベルベット仕上げのグレーオパーリンとなっている。
レマニアの血を引く自社開発ムーブメントCal.1142を搭載
オリジナルモデルに搭載されていたムーブメント手巻きCal.492に代わりヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ1955に採用されているのは、レマニア2310を源流に持つCal.1142である。164パーツで構成され、直径は27.5mm、厚さは5.6mmである。オリジナルモデル同様手巻きムーブメントであり、約48時間のパワーリザーブを保持する。
一体型のクロノグラフ機構はコラムホイールを採用し、そのネジ山はヴァシュロン・コンスタンタンのシンボルであるマルタ十字をかたどっている。スイス製の高級ムーブメントに多く見られるように、Cal.1142はハイレベルな仕上げと装飾により権威あるジュネーブシールを取得している。そこにはポリッシュ仕上げが施された面取りや石の穴、コート・ド・ジュネーブ仕上げの地板やブリッジ、面取りされた歯車などが含まれ、コラムホイールと共にトランスパレントバックから鑑賞が可能だ。
ミラノの老舗レザー工房「セラピアン」製ストラップ
最後にこのモデルに付け加えられた新しいストラップを見ていこう。ストラップはミラノにある28年創業のレザー工房「セラピアン」(2017年よりヴァシュロン・コンスタンタンと同じくリシュモン グループ傘下)で作られた、ダークブラウンのカーフレザー製である。このストラップの定革の縫い付け部分を、セラピアン製バッグのハンドル部分のアタッコ(連結パーツ)形状としていることと、ポリッシュ仕上げされたマルタ十字をかたどったステンレススティール製バックルが合わせられていることで、セラピアンとヴァシュロン・コンスタンタンの最初のコラボレーションであることが分かる。
Contact info: ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755