真に見るべきは上質な外装にあり/カール F. ブヘラ「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」

FEATUREその他
2020.03.30
PR:Carl F. Bucherer

カール F. ブヘラが2019年に発表した「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」は年次カレンダーを搭載したクロノグラフながら、本体価格100万円を切るプライス(SSケース)設定で話題を集めたモデルだ。しかし同時に、“安価なアニュアルカレンダー搭載モデル”というイメージばかりが先行してしまい、ムーブメント以外で正当な評価があまりなされていないのも事実。ということで今回は、カール F. ブヘラのヘリテージ バイコンパックス アニュアルがいかに優れた外装を持っているのかを中心にこのモデルの魅力をお伝えしよう。

ヘリテージ バイコンパックス アニュアル

吉江正倫:写真
Photographs by Masanori Yoshie
細田雄人(クロノス日本版):文
Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)

カール F. ブヘラ「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」

 カール F. ブヘラの「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」は1950年代に発売された同社(当時はブヘラ)のクロノグラフを現代的に解釈し、リデザインしたモデルだ。

 2019年のバーゼルワールドで発表された当時、年次カレンダーという複雑な機構をツーカウンターのクロノグラフと併載しながら、SSと18KRGのコンビモデルで136万円、SSモデルに至っては90万円という価格設定が話題を呼んだことは記憶に新しい。

ヘリテージ バイコンパックス アニュアル

カール F. ブヘラ「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」
自動巻き(Cal.CFB 1972)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径41mm、厚さ14.05mm)。30m防水。世界限定888本。90万円(税別)。

 実際に同作への評価の高さは、クロノス日本版が毎号巻末で行う「Chronos Top10 Watches Rankings」からもうかがうことができる。バーゼルワールド2019の発表モデルからベスト10を選んだ83号の「佳作揃いのバーゼルワールド」では7位に、さらに2019年に発表されたツーカウンタークロノグラフからランキングを募った84号の「デザイン光るツーカウンタークロノグラフ」では堂々の1位を獲得しているのだ。

 ではヘリテージ バイコンパックス アニュアルがどうしてここまで高い評価を得られたのか、その理由を順に見ていこう。

現代的複雑機構を安価に搭載

 まず本稿の主題からは外れるが、同作を語る上で欠かせないのが、モデル名にもあるように年次カレンダーを採用している点である。カール F. ブヘラでは「マネロ フライバック」が搭載するラ・ジュー・ペレ開発のクロノグラフムーブメントCal.1970も所有しているが、ヘリテージ バイコンパックス アニュアルではそれを使用せず、ETA2892A2をベースにデュボア・デプラ(DD)のクロノグラフ+年次カレンダーモジュールを組み合わせることで“安価”な価格を実現している。

 このベースムーブメント+DD製モジュールの組み合わせによってコンプリケーションの価格を抑えるという手法はカール F. ブヘラが得意とする手法だ。同社の「マネロ パーペチュアル」では同様に、Cal.2892A2+DDモジュールによって永久カレンダー搭載機を18KRGケースながら370万円で販売することに成功している。

ヘリテージ バイコンパックス アニュアル

ヘリテージ バイコンパックス アニュアルのレトロ感をより強調するのがボックス型のサファイアクリスタル風防。カール F. ブヘラがムーブメントだけでなく、外装にもコストを掛けていることを示す一例だ。

 なお、カール F. ブヘラで汎用ムーブメントを載せる際は多くの場合で安定したムーブメントの供給を実現すべく、ETAとセリタを同一モデル内で並行して使うことが多い。しかしヘリテージ バイコンパックス アニュアルはSSモデル、コンビモデルともに各888本の限定販売だからであろう、すべてのモデルでETA2892A2がベースムーブメントに採用されている。

 かつてのようにセリタのSW300がETAの2892A2と比較して劣っているとは思わないが、今でもETAのハイグレードムーブメントを使用しているという点を魅力的に感じる時計愛好家は多いだろう。