近代的なダイバーズウォッチの在り方に大きな影響を与えたセイコーのダイバーズウォッチ。その始まりはささやかだったが、10年後の1975年には、当時世界最高峰と言うべき「600mダイバー」に進化を遂げた。1965年のファーストモデルの発表から今年で55周年。それを記念して、セイコーはダイバーズウォッチの歴史に残る3本のモデルを“トリロジー”として復活させたのである。
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https://www.webchronos.net/features/43642/
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
1965 1st. Diver’s
感性に訴えかけるダイバーズウォッチを目指したトリロジーコレクション。最も象徴的なのは、1965年のファーストモデルの復刻版かもしれない。見た目こそアンティーク調だが、高級機と呼べるだけの緻密なディテールと、今の技術を反映した、鮮やかなブルーグレー文字盤が際立っている。
2020年の復刻モデル。基本設計は2017年の復刻版に準じるが、ケース素材はもちろん、細部の仕上げやムーブメントも異なる。自動巻き(Cal.8L55)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。エバーブリリアントスチール(直径39.9mm、厚さ14.7mm)。200m空気潜水用防水。世界限定1100本。セイコーウオッチサロン限定モデル。65万円。6月6日発売予定。
エバーブリリアントスチールの採用で、いっそう魅力を増したのが「1965メカニカルダイバーズ復刻デザイン」だ。ベースとなったのは2017年の復刻版。しかし、素材に加えて文字盤の色が変更されたほか、ムーブメントもハイビートの8L55に置き換えられた。このモデルで際立つのが、復刻の純度の高さだ。1965年のオリジナルモデルは、プラスティック製風防の内側にテンションリングを噛ませて風防を固定していた。対して2020年の復刻版は、サファイアクリスタル風防をパッキンで固定している。しかし、パッキンを回転ベゼルの下に隠すなどして、オリジナル同様の見た目を得た。立体的なエンボスインデックスもオリジナルに同じだ。
ただし、このモデルは、1965年のファーストモデルはもちろん、2017年の復刻版に比べても明らかに良質になった。大きな理由は、エバーブリリアントスチールを採用したためだ。このエバーブリリアントスチールは、磨いても面がダレにくく、ケース正面に施した筋目仕上げもはっきりと出るようになった。
文字盤の仕上げも単なるブラックではなく、筋目を与えたブルーグレー仕上げだ。まず文字盤に筋目を施し、塗装した後にエンボス加工をすることで、エンボス文字盤でありながら、放射目の下地を持つに至った。また、下地がフラットなので、文字盤の印字精度も上がっている。
単なる復刻版の域を超えて、高級さを備えるに至った1965メカニカルダイバーズ復刻デザインモデル。単なるレトロ調ではない、新しい時代のスポーツユーティリティーウォッチの登場だ。