【インタビュー】パルミジャーニ・フルリエ CEO「ダビデ・トラクスラー」

2020.04.23
三田村優:写真 Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

ブランドの未来を示すまったく新しい“デイリーウォッチ”

 2月下旬、新型コロナウイルス禍にも負けず、スイスから来日を果たしたのは、パルミジャーニ・フルリエCEOのダビデ・トラクスラーだ。なぜこんな時期に日本に来たのかと水を向けると、彼は即答した。「今回はチームに会うため、そしてマーケットからのフィードバックを得るためだ。私たちの会社は人で成り立っている。関係する人たちに会わないと意味がないだろう」。彼がわざわざ来日したのには意味がある。5月発表予定のまったく新しいモデルのヒアリングのためだ。「かつて時計のトレンドは金ケースにアリゲーターストラップだった。でも今はレスフォーマルなブレスレット付きに変わった。ジョン・ロブだってスニーカーを出すようになっただろう?」。

ダビデ・トラクスラー

ダビデ・トラクスラー
パルミジャーニ・フルリエCEO。アメリカ生まれのスイス人。外交官の息子として、アメリカ、アフリカ、ブラジル、ヨーロッパで育った後、イタリアで政治学を学ぶ。卒業後、ブルガリに入社。後にショパールに転じ、アメリカとイタリアのマネージングディレクターを務めた後、2015年、コルムCEOに就任。2年目には売上高を40%も伸ばした。18年3月にパルミジャーニ・フルリエのCCO(チーフ・コマーシャル・オフィサー)となり、同年7月より現職。

 詳細については5月の発表を待つとして、彼が言うところの新しい〝デイリーウォッチ〞のコンセプトは次の通りだ。「このモデルは、私が入社してから始まったプロジェクトだ。デザインは、外部からデザイナーを招聘し、コンペティションで行った。大きな特徴は、インテグレーテッドブレスレットだ」。つまり、パルミジャーニ・フルリエは、ブレスレット付きのスポーティーウォッチを作るというのだ。

「最初のプロトタイプのデザインは気に入らなかった。それでやり直しをさせて、全員がいいなと思うデザインに落とし込んだ。リデザインは3回行ったよ。それと、デザインが良くても装着感が悪ければ仕方ない。プロトタイプが完成した今はハッピーだね」。面白いのは、外部からデザイナーを呼んだ点だ。パルミジャーニ・フルリエはインハウスのデザイナーを使うのを好んできたが、今回は方向性をまったく変えた。「外部からも呼び、社内デザイナーと協力させたよ。招聘したのはディノ・モドーロだ」。

 コルムのCEO時代に、彼はモドーロにゴールデンブリッジのリデザインをさせた。しかし、まさかこれほどの大物を使うとは思ってもみなかった。パルミジャーニ・フルリエはこのモデルによほど本気らしい。

「もっとも、デザインの基本はトンダ クロノールに準じているし、仕上げの水準は、さらに高めたよ。パルミジャーニだからね」

 トラクスラーは、一通りスペックを話した後、いくらぐらいになると思う? と試すような表情で聞いてきた。自動巻きクロノグラフで、パルミジャーニ・フルリエの仕上げを採用し、ユニークなインテグレーテッドブレスレットが付く。5万スイスフランは下らないのではないか?

「いや、販売価格はもっと下だよ。私たちは違うターゲットを狙いたいのだ」

 驚くべき内容を持つパルミジャーニ・フルリエの新作。詳細は5月をお待ちあれ。

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ クロノール」
ブランド創立20周年を記念してリリースされた、初の自社製一体型クロノグラフムーブメント搭載機。2本の針が示す通り、スプリットセコンドクロノグラフ機構を装備する。5月に発表される新作は基本的にこのモデルのデザインをベースにしたものになるという。手巻き(Cal.PF361)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KRG(直径42.1mm、厚さ14.6mm)。30m防水。1409万円。


Contact info: パルミジャーニ・フルリエ ☎03-5413-5745