ブランドの未来を示すまったく新しい“デイリーウォッチ”
ノルケインは、ブライトリング出身のベン・カッファーが創業した気鋭のブランドである。独立系であること、高品質にもかかわらず、手頃な価格であること。こういった要素は、ノルケインに大きな成功をもたらしつつある。会うなり、カッファーはこう言った。
「昨年、このことを予想した人は世界であなただけだった」
何のことかと思ったら、ムーブメントメーカーであるケニッシとノルケインとのコラボレーションについてであるらしい。
1988年、スイス生まれ。ノルケインCEO。父はロベンタ・ヘネックスオーナーで、20年以上にわたってスイス時計協会の理事でもあるマーク・カッファー。2006年、ブライトリングに入社し、スイスとアジアのセールスマネージャーを務める。17年に退社後、ブライトリング前オーナー一族であるシュナイダー家などの助力を得て、18年3月にノルケインを創業した。
ケニッシは、チューダーやシャネル、そしてブライトリングなどに優れたムーブメントを供給するメーカーだ。2020年、ケニッシは、なんと新進気鋭のノルケインにムーブメントの供給を開始したのである。
「会社を創業した時から、コラボレーションの話はあった。私たちにはETAやセリタといったワークホースはある。しかし、スペシャルなムーブメントが欲しかった。ケニッシ製のGMTと小さなムーブメントがそれだ」
GMTのムーブメントは、すでに筆者も知っている。他社の採用したものを考えると、パフォーマンスは素晴らしいだろう。しかし、むしろ驚いたのは、女性用に載るであろう小さなムーブメントだ。ケニッシが小さなムーブメントを開発中という噂は聞いていたが、まさか創業間もないメーカーが採用するとは意外だった。
直径が小さいにもかかわらず、テンプは両持ちで、緩急装置はフリースプラング、しかもパワーリザーブは約70時間もある。11.5リーニュ級のムーブメントとしては最も優れたもののひとつだろう。
「そう、採用したのは私たちが初めてだ。プレスリリースには3針の写真が載っていたが、誰もサイズに気づかなかった。実物を見て、みんな驚いたんだよね。いいサイズで、日本人には向いているだろう。また、直径39㎜ぐらいのケースに収められる」
なぜケニッシがノルケインを供給先に選んだと思うか尋ねてみた。
「ケニッシは長い目でビジネスを見ていると思う。私たちは独立系で、若く、スイス製を打ち出し、長いビジョンを持っている。それが合ったんじゃないかな?」
搭載するモデルは現在開発中という。しかし気になるのは価格だ。正式な納入価格は分からないが、同社が使っている他のエボーシュよりも高くなることは間違いない。
「私たちが顧客に提供できるのは、価格とモノのバランスが良いということだ。価格の比較はしないが、既存のエボーシュ搭載機と同じプライスレンジだよ。価格帯は、日本円で30万円台に留めたいね」
ケニッシとのコラボレーションによる次世代自動巻きムーブメント。直径はETAやセリタのエボーシュ並みだが、そのパフォーマンスは、大径の最新鋭自動巻きに比肩する。両持ちのテンプ受け、フリースプラングといった要素は、理論上優れた精度をもたらすだろう。直径26mm。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。C.O.S.C.認定クロノメーター。