パテック フィリップは、長い歴史と伝統に裏打ちされた極めて高い価値を誇るブランドだ。約180年前の誕生から現在に至るまでの歩みを確認するとともに、パテック フィリップが展開する時計の魅力も掘り下げていこう。
パテック フィリップとは?
世界でも指折りの高級時計ブランド、パテック フィリップ。歴史上の名だたるセレブリティにも愛されてきたその魅力を紹介しよう。
世界3大高級時計メーカーのひとつ
高級時計といえば、ロレックスやオメガを連想する人も多いだろう。しかし、時計の世界には、これらのブランドを超えたセレブ御用達の超高級時計ブランドが存在する。
それが、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンで、これらは「世界3大高級時計メーカー」と呼ばれている。
特に、デザインからムーブメントの製造まで自社で一貫して行うマニュファクチュールであるパテック フィリップは、他の2社からも頭ひとつ抜けて時計界に君臨するブランドだ。
創業当時から積み上げられてきた技術は全て保管。時計メゾンでも数少ない「永久修理」を掲げており、製造から100年以上が経過した時計でも、修理を拒まないという。
パテック フィリップの魅力
パテック フィリップの時計は、優れた機能や性能に完成された美しいデザイン、そして高い技術力で製造された精巧で複雑なムーブメントを備えている。
超高級の名に恥じない完成度を誇る時計であることに加え、製造から何十年経過しようとも、「永久修理」のもとで製造当時に限りなく近い完璧な状態まで修復してもらえるのも魅力だ。
このような点から、パテック フィリップはリセールバリューが高い時計ブランドの代表格とも言われ、中古市場に出回ってもその価格が大きく下がることはない。
「ノーチラス」や「アクアノート」などのスポーツコレクションの中には、購入価格より高く売れるといった現象まで起きているほどだ。
パテック フィリップの歴史
世界有数のマニュファクチュールであるパテック フィリップは、創業から180年以上もの長い歴史を誇っている。誕生から現在までの変遷をたどっていこう。
1839年が始まり
パテック フィリップは、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとフランソワ・チャペックというふたりのポーランド人創業者により1839年に創設された「パテック,チャペック社」が前身だ。
1844年のパリ産業博覧会を機にフランス人時計師ジャン・アドリアン・フィリップと知り合い、フィリップは翌年、正式に入社。その一方で、チャペックは退社することになる。
1851年には社名をパテック フィリップ社へと変更。同年、ロンドン万国博覧会に出品した世界初の鍵なし時計が称賛を集め、1868年にはスイス初の腕時計を製作するなど、彼らの名はヨーロッパ中に広まっていった。
しかし、1929年の世界大恐慌により業績が悪化し、文字盤製造会社を経営していたジャン・スターンとシャルル・スターンの兄弟が1932年にパテック フィリップ社の経営権を取得し現在に至っている。
体制変更と地位の確立
経営体制の変更後、挽回を図るため1932年に発表したモデルが「クンロク」として有名な「カラトラバ96」だ。ドレスウォッチの傑作と称され、日本の皇族にも愛用された歴史を持つ。
その後も、「ノーチラス」「アクアノート」などの名コレクションや、多くの特許を取得した数々の複雑機構を発表し続けた結果、時計界における最高峰の確固たる地位を確立するに至る。
パテック フィリップは現在もスターン一族が経営権を握っているが、創業者の遺志を継ぐ意味を込め、創業者ふたりの名前を社名から残している。
代表コレクションとその歴史
パテック フィリップは現在、8つの現行コレクションを展開しているが、その中から代表的なコレクションと歴史を紹介しよう。
究極のエレガンス 「カラトラバ」
前述したように「カラトラバ」は1932年に初代モデルが発表された、ロングセラーのドレスウォッチシリーズだ。これまで多くの派生モデルが生まれ、現行モデルだけでも13種類が展開されている。
コレクション名は、スペインのカラトラバ騎士団を由来としている。剣と百合の花を組み合わせた「カラトラバ十字」が、パテック フィリップの伝統的なエンブレムとなっていることからも、このコレクションが同社の象徴的なモデルであることが分かるだろう。
優美さや気品高さを備えたシンプルなラウンドデザインで、立体的なインデックスや、ドフィーヌ針に象徴される上品な時分針が全体の美しさをさらに引き立てている。
現行モデルは、Ref.96の意匠を踏襲しながらも、ケースサイズをはじめとするディテールをモダンにアップデート。手巻き(Cal.215 PS)。18石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。18KYG(直径37mm)。3気圧防水。257万円(税別)。
船の舷窓から着想 「ノーチラス」
当時の薄型時計としては例外的な12気圧の防水性能を持つスポーティーウォッチとして1976年に発表された「ノーチラス」は、船の舷窓からインスピレーションを得てデザインされたモデルだ。
ケースデザインは、オーデマ ピゲの「ロイヤ ルオーク」など数々の名作を手掛けたジェラルド・ジェンタが担当している。
デザインの特徴は、オクタゴン型のフォルムと、「耳」と呼ばれる左右の突起部分だ。耳はノーチラスのシンボルであると同時に、噛み合わせてビスで固定する構造になっているため防水性を高めるための役割を担っている。
スポーティーさと薄さの共存を追求し、かつ防水性の向上にもチャレンジしたモデルである。
デザインは1976年の初代モデルから大きく変わらないが、現行モデルではケースを2ピース構造から3ピース構造に変更。写真のモデルは人気が高く、現時点では入手困難となっている。自動巻き(Cal.26-330 S C)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(10時〜4時方向の径40mm)。12気圧防水。
丸みのある8角形ケース 「アクアノート」
ノーチラスに次ぐスポーティーウォッチとして1997年に発表された、比較的新しいコレクションが「アクアノート」だ。現行モデルでは「5167」を代表とする10モデルが展開されている。
8角形のケースはノーチラスを継承しているが、アクアノートのほうがより丸みを帯びている。文字盤の夜光アラビア数字インデックスも特徴的だ。
モデル名にふさわしい120mの防水性を備えており加えて、牽引耐性や紫外線耐性に優れたハイテク・コンポジット素材の「トロピカル」バンドの実用性も高く評価されている。
ケース径40mmとなった現行モデル。ダイアル外周の目盛りを小さくすることで、よりスポーティーでモダンな雰囲気に仕上げている。自動巻き(Cal.324 S C)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(10時〜4時方向の径40mm)。12気圧防水。226万円(税別)。
歴史を知ると理解が深まる
パテック フィリップは、長い歴史の中で数多くの名作を世に送り出し、高い評価を得続けた結果、現在の地位を築いている。
代表モデルそれぞれの歴史にも触れることで、特徴やブランドの魅力に対する理解もより深まるはずだ。
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