数々の複雑機構を製作することで知られるジャガー・ルクルトは、トゥールビヨンにおいても圧倒的な技術力と創造性を見せつける。独自機構と組み合わせた時計も秀逸な、ジャガー・ルクルトのトゥールビヨン搭載モデル6選を紹介しよう。
トゥールビヨンの進化
トゥールビヨンは3大複雑機構のひとつとして知られるが、1980年代以降、さまざまな時計メーカーが技術を刷新するべく尽力している。
調速脱進機をキャリッジに格納して回転させるこの機構が、どのような派生形を生み、進化しているのかを見ていこう。
トゥールビヨンの主な種類
「トゥールビヨン」はブリッジで固定したキャリッジが一定周期で回転する構造だ。60秒周期で1回転する動きを利用して、秒針を取り付けるモデルもある。
「フライングトゥールビヨン」は、ブリッジを巧妙に隠したり部品を透明にしたりして、キャリッジが浮いているかのように見せる機構。
そして「ジャイロトゥールビヨン」は球体のキャリッジを採用し、2軸以上で複数方向に回転する仕組みを持つ。ジャガー・ルクルトは、同じく多軸球体トゥールビヨンの「スフェロトゥールビヨン」も採用する。
各メーカーでの実用的な進化
トゥールビヨン搭載モデルは1000万円以上の超高級腕時計となることが一般的だが、タグ・ホイヤーなど一部の時計ブランドは、100万円台や200万円台のモデルも展開している。
基本的に、機構の複雑さと耐振動性や耐衝撃性はトレードオフの関係にあるが、リシャール・ミルではV字ブリッジの採用により「耐振動トゥールビヨン」を完成させた。
また、キャリッジの小型化や新機軸のローターなど技術開発も進んでおり、最薄トゥールビヨンウォッチで知られるブルガリの「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」に至っては、わずか1.95mmのムーブメント厚を実現している。
マスターの搭載モデル
「マスター」は「1000時間コントロールテスト」を初めて実施したコレクションである。クラシカルなラウンドケースにトゥールビヨンを搭載した、高度なコンプリケーション2モデルを紹介しよう。
マスター・トゥールビヨン
自動巻き(Cal.978B)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWG(直径41.5mm)。5気圧防水。968万円(税別)。
「マスター・トゥールビヨン・デュアルタイム(Ref.1563480)」は、ベゼルやインデックスにダイヤモンドをセットした、エレガントなトゥールビヨン搭載モデルだ。
サンレイ仕上げのブルーダイアルは外周に日付インデックスを配し、針で日付を指し示す。6時位置のトゥールビヨンによって15日と16日は分断されており、この間は日付針が4時間弱で移動する仕組みになっている。
ダイアル12時位置の24時間表示は、24時の表示を下部にレイアウトすることで、ホームタイムの昼夜をひと目で判断できる。上品なデザインだけでなく、機能性にも配慮が行き届いたモデルだ。
マスター・ウルトラスリム・ミニッツリピーター・フライングトゥールビヨン
自動巻き(Cal.362)。72石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KWG(直径41mm)。3気圧防水。
「マスター・ウルトラスリム・ミニッツリピーター・フライングトゥールビヨン(Ref.1313520)」は、ミニッツリピーターとフライングトゥールビヨンを搭載した極薄モデルだ。
566の部品からなるCal.362は厚さ4.7mm、ケース厚もわずか7.8mmで、搭載する複雑機構に対して驚異的な薄さを誇る。
ダイアルは、表示要素を最小限に抑えたミニマルなデザインだ。6時方向のフライングトゥールビヨンに加え、ダイアル外周の12カ所の窓から、リズミカルに駆動するペリフェラルローターを静かに鑑賞できる。