時計に関する資格を知ろう。修理や販売の資格3つを解説

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2021.12.27

時計に関する資格には、時計修理技能士やウオッチコーディネーター(CWC)などがある。時計修理や販売に携わるのであれば、プロの証明として取得したい資格だ。現在では受験できない米国時計学会公認高級時計師(CMW)も含め、3種の資格を紹介しよう。

時計修理技能士の資格を有する専門技術者は、主に時計ブランドでのサービスセンターや時計修理会社など、ウオッチコーディネーターでは販売部門などで活躍している。


時計に関する資格

腕時計のユーザーには、購入した腕時計を定期的にメンテナンスし、状況次第では買取店に持ち込むプロセスがある。

店舗のスタッフはさまざまな肩書きを持つ。有資格者と無資格者を判断する視点を持っておこう。

時計の鑑定士資格はない

腕時計を売却する際には、買取店に在籍する「時計鑑定士」が真がんや資産価値を鑑定するケースがある。時計鑑定士という字面からすると有資格者のように思えるかもしれないが、時計鑑定に関する資格は存在しない。

時計鑑定士というのは査定や買取を担う職種を指す通称であり、経験や技能によらず誰でも自称できる。公的機関による知識や技能の認定を受けた者ではないということだ。

修理には資格がある

時計の鑑定に関する資格は存在しないが、修理に関しては資格が存在する。メーカーや時計修理専門店などに在籍する「時計修理技能士」がそれだ。

1〜3級までの等級があり、公的試験に合格した者以外は時計修理技能士を名乗ることができない。

腕時計のメンテナンスでは、修理やオーバーホールだけでなく電池交換にも専門技術を要する。これらの実務経験や技能の証明となるのが時計修理技能士資格であり、有資格者の在籍の有無は時計修理事業者の信頼性を左右する。

公式リンク:技能検定のご案内 : 中央職業能力開発協会(JAVADA)
公式リンク:時計修理技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目|厚生労働省職業能力開発局※PDFドキュメント


時計修理技能士とは

3級時計修理技能士は当該職種に関する実務経験があれば受検できる。2級・1級と等級が上がるごとに実務経験年数が必要となり、1級時計修理技能士であれば時計修理のプロといえる。時計修理技能士の概要を見ていこう。

時計修理に関する唯一の国家資格

時計修理技能士は、時計修理に関する日本唯一の国家資格である。中央職業能力開発協会が問題作成を行い、各都道府県が試験を実施する。

有資格者は、アナログの機械式時計やクォーツ式時計の修理・オーバーホール・電池交換に関して、一定の実務経験や技能を有した専門家である。

資格試験の内容

時計修理技能士資格の取得にあたっては、すべての等級において学科・実技の2段階で試験を行う。学科試験は腕時計の種類・構造・材料・電気の性質や修理法などに関する内容だ。

実技に関して、令和3年度の課題は、3級ではアナログクォーツ式時計の電池や裏ぶたパッキンの交換、測定、化粧箱の包装、ストラップの調整である。2級では中3針、日・曜カレンダー付きアナログクォーツ式時計の巻き真交換を含む、オーバーホールについての技能を問う。

1級では中3針、日・曜カレンダー付きアナログクォーツ式時計と、中3針、日・曜カレンダー付き自動巻き機械式時計のオーバーホールについて問う内容だ。

技能検定全般に関する問い合わせ:中央職業能力開発協会 技能検定部 企画管理課
03-6758-2861もしくは2858


米国時計学会公認高級時計師(CMW)とは

時計修理技能士は時計修理のプロであることを証明するが、CMWの審査基準はさらに高度だ。米国時計学会公認高級時計師であることを証明する、CMWについて見ていこう。

米国時計学会公認高級時計師(CMW)

CMW試験は2014年から一時的に復活したが、現在は再び休止中である。本画像掲載には2014年に試験へのぞみ、合格を果たした近江時計眼鏡宝飾専門学校 染矢泰輔氏にご協力いただいている。

時計技術者最高峰の資格

「CMW(Certified Master Watchmaker)」とは、1954〜80年に実施された試験であり、その有資格者である高級時計師を指す。学科・実技ともに広範かつ難解な試験内容であり、期間中の合格者はわずかに800人ほどである。

主催は米国時計学会日本支部を前身とする日本時計師会であるが、現在では試験を行っていない。機械式時計修理の高級時計師を認定する、伝説的な資格である。

資格試験の内容

CMW試験は全5日間の日程で組まれ、まずは1次試験として、2日間にわたり学科試験および規定の寸法に合わせた旋盤によるテン真や巻き針の別作が行われる。学科試験の問題数は400にも及んだ。内容は天文学や力学、歯車理論や調速理論など多岐にわたったとされるが、詳細は非公表である。

1次試験通過者は2次試験へ進む。2次試験は3日間にわたり、高度な実技試験を行う内容であった。課題は、故意に壊された機械式腕時計と鉄道時計(懐中時計)の修理である。

別作した部品を用い、ヒゲゼンマイの成形も含めて修理を行い、完全分解掃除後の時計にはクロノメーター級の精度を求めた。


ウオッチコーディネーター(CWC)とは

2011年にスタートしたウオッチコーディネーター資格試験は、時計修理に関しても一定の知識を持つ、販売のプロフェッショナルであることを証明する試験だ。等級や試験内容を見ていこう。

ウオッチコーディネーター検定(CWC)

日本時計輸入協会が主催するウオッチコーディネーター検定(CWC)。

時計販売のプロフェッショナル

「CWC(Certified Watch Coordinator)」とは、日本時計輸入協会が主催する試験であり、その有資格者である時計販売のプロフェッショナルを指す。

等級はCWCと上級CWCに分かれ、有資格者にはピンバッチが与えられる。時計の販売スタッフや店長・リーダーはもちろん、プレスやユーザーも受験対象者として想定している。

資格試験の内容

CWC テキスト

ウオッチコーディネーター検定の公式テキスト。CWC(税込み3980円)と上級CWC(税込み7945円)のテキストは、それぞれ全国の書店および全国官報販売協同組合拠点と、日本時計輸入協会 JWIA-CWC事務局で注文可能。

資格取得に際しては、CWC・上級CWCともに筆記試験を受け、CWCではETA6497を用いたオーバーホールや電池交換などの実技実習も受講する。

出題範囲は専用のテキストからである。CWCでは腕時計の構造や販売に関する基礎知識、上級CWCでは腕時計の製造プロセスや店舗管理など発展的な内容も含む。

【公式】ウオッチコーディネーター資格検定オフィシャルサイト
http://www.tokei.or.jp/cwc/


時計資格に詳しくなろう

腕時計に関する資格は、過去にはCMWも受験できたが、現在では時計修理技能士とCWCが主な選択肢だ。時計修理技能士の受験には半年以上の実務経験を必要とするが、CWCは誰でも受験できる。

実務に携わらないとしても、資格取得を目指す中で時計に関する知識を深められる。実務に携わるのであれば、修理や販売のプロとしての証明手段を持っておきたい。

川部憲 Text by Ken Kawabe


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