時計のベルトやブレスレットの調整はどうする?自分でする方法と依頼のメリット

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2022.10.22

デザインや機能に納得して購入した腕時計でも、いざ着用してみると手首にフィットしなかったというケースもあるだろう。快適な装着感を得るために、ベルトやブレスレットの調整方法や依頼先を見ていこう。自分で調整する方法も解説する。

マニファクチュール ジャン・ルソー

フランスの高級レザーグッズ「マニファクチュール ジャン・ルソー」のストラップ。


時計の長さ調整はどこでする?

今や時計店に直接赴かなくても、インターネット経由で腕時計を購入するケースも一般的となった。場合によっては海外から取り寄せることも珍しくない。

ネット購入は便利な半面、着け心地などの調整は難しい。よくあるのがベルトやブレスレットの収まりが良くないことだろう。

調整の作業自体はそう複雑ではないが、業者に依頼するときは依頼先を正しく選定することが重要だ。調整を依頼する場合と自分でする場合の違いを見ていこう。

メーカーに依頼する

スウォッチ グループ ピックアップサービス

スウォッチ グループのブランドの一部は、宅配サービスで時計のメンテナンスサービスを受けられる「ピックアップサービス」を実施している。対象ブランドであればブレスレットなどの長さ調整も可能だ。

腕時計のベルトやブレスレットを調整するなら、メーカーに依頼するのが安心・確実だ。特殊なブレスレットでも間違いなく調整を行い、部品の交換が必要になった際もメーカー純正品を使って修理してくれるからだ。

時計の寿命や資産価値を重視するなら、間違いのない選択といえるだろう。ただし、一般的に費用は割高だ。国内にサービス拠点がないメーカーであれば、返送までに1カ月以上掛かるケースもある。

専門店や修理店に依頼する

メーカーより安く早く調整を済ませたいのであれば、時計修理専門店や量販店などの修理ブースに持ち込む方法がある。

どちらに依頼する場合も、修理担当者の技術レベルや純正パーツの有無を把握しておこう。「1級時計修理技能士」や「CMW(認定高級時計師)」が在籍しているなら安心できる。

時計修理専門店なら優秀な時計修理技能士が純正パーツで修理を行うケースはあるが、量販店ではあまり期待できない。

いずれも部品の交換や修理を含むなら、正規サービス以外での調整・改造にあたると見なされる可能性があり、メーカー保証が受けられなくなる点に注意しよう。

自分で調整する

ブレスレットによっては特殊な工具や技術を必要とせず、自分で簡単に調整することも可能だ。調整機能付きの三つ折れ式では工具が必要なく、付属品の工具を使って簡単に調整できるブレスレットもある。

その他のタイプであっても、必要な工具をそろえれば自力での調整は可能だ。この場合は、工具代が必要なことや、正しく調整できるかは技術次第という点に注意しよう。

作業は自己責任であり、部品を傷付けたり紛失したりしても保証は受けられない。


自分で調整する方法

ベルトやストラップの調整では、適切な位置に穴開けを行えば良い。ブレスレットの場合は、タイプによってコマの調整方法が異なる。「ネジ式」と「打ち抜き式」のブレスレットの調整方法を見ていこう。

ネジ式の場合

H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」

H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」のブレスレット。コマの形状はH.モーザーの“M”を模したユニークなものである。市販の工具では調整の難しいコマもある。

コマの片側面にネジ頭がある場合、精密ドライバーでピンを取り外す。ブレスレットに傷を付けたり、ピンを変形させたりするのを回避するなら、ブレスレット用のバイス(万力)にクロス(布)をかませて固定しよう。

コマ両端のピンを取り外すまでは簡単だが、取り付けではピン穴の位置をそろえるのに若干のテクニックを要する。手持ちではピン穴がぶれやすいため、穴位置を狙ってバイスで固定してから作業しよう。

打ち抜き式の場合

シチズン「ザ・シチズンキャリバー0100 AQ6021-51E」

標準的なCリング連結を用いたブレスレットを備えるシチズンの「ザ・シチズンキャリバー0100 AQ6021-51E」。

コマの裏側に矢印が刻印してあるなら、その方向にピンが抜ける打ち抜き式だ。この場合、ブレスレット用のピン抜き工具をピンにあて、工具をハンマーで叩いて打ち抜く。

固定しなければ無理があるため、バイスは必須である。クロスより摩擦力の強い合成樹脂フィルムなどをかませ、ピンが下に抜ける空間を確保して固定しよう。

ピンを差す際には、抜けた側から押し戻すようにして打ち込んでいく。穴位置を狙ってまっすぐに打ち込んでいくことがポイントだ。

なお、これはシンプルな「丸ピン式」の例である。取扱説明書を読み、「割ピン式」や「Cリング式」であればメーカーに依頼するのが無難だ。


メーカーなどへ依頼するメリット

工具さえそろえれば自分で好きなときに調整できるが、ブレスレットの仕様やケースの強度によっては、しかるべき窓口に依頼しよう。ここではメーカーや時計修理専門店などに調整を依頼するメリットを解説する。

一番安心なのはメーカー

オリス メンテナンス部門

オリスの本国にあるメンテナンス部門。

ストラップやブレスレットの調整は、やろうと思えば自分でもできるが、構造を理解したうえで力加減を間違えずに作業することが必要だ。時計修理専門店は技術面では信頼できるが、メーカー保証外の作業であることに注意を要する。

作業中に部品が破損した場合、純正パーツで代用したとしても第三者による改造とみなされるだろう。また、調整に特殊な工具を必要とする場合や、腕時計の強度が弱い場合には対応できない。

こういった不安材料が一切ない選択肢がメーカーだ。正規サービスはメーカーが推奨する正しい窓口であり、最も安心・確実である。

時間や料金を気にするなら修理店へ

時計修理専門店

経験豊富で設備も整った時計修理専門店であればパーツの製造から依頼できる場合もある。東京であれば中央区八重洲のゼンマイワークスなどが挙げられる。

メーカーによる正規サービスが本来の窓口だが、調整に掛かる時間や費用を気にするのなら時計修理専門店が候補に挙がる。

メーカーの保証期間を過ぎているのなら、純正パーツを使って割安かつ短期間で調整してくれる時計修理専門店に依頼しても良いだろう。

さらに安く、即日に受け取りたいのなら量販店の修理ブースに依頼しても良い。ただし、この場合は腕時計の寿命や資産価値を無視できる場合に限る。


適切な調整で快適に

ストラップやブレスレットの調整に関する正規の窓口は、メーカーのアフターサービスだ。品質保証を妥協できるなら、技術面では信頼できる時計修理専門店に依頼しても良い。

ブレスレットの構造によっては自分で簡単に調整できる。適切な方法でストラップやブレスレットの調整をし、快適な装着感を得よう。


川部憲 Text by Ken Kawabe


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