腕時計の革ベルトを夏も快適に使うには。劣化の原因と手入れ方法

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2021.01.14

腕時計の革ベルトにとって、夏場は厳しい環境だ。湿度や皮脂など劣化を早める原因は多いが、適切な手入れを行えば快適に使っていける。革ベルトの劣化や臭いの原因と対処法を見ていこう。夏場向きの革ベルトについても解説する。

汗をかく暑い時期にも臆せず使える革ベルト開発にメーカー各社が乗り出している。例えばバンビが手掛ける「プレミアムクロコ」は、表面素材だけでなく、裏面素材・中芯素材にも防水加工を施した天然皮革を採用した、世界初の防水クロコストラップだ。税別26000円からの価格展開も魅力である。(問)バンビ Tel.03-5688-0112


革ベルトの劣化や臭いの原因

革ベルトはエレガントで高級感があり、エイジングも楽しめる魅力的なアイテムだ。しかし夏場にはダメージを受けやすいため、快適に着用するには工夫を要する。まずは劣化や臭いの原因から掘り下げる。

夏場の汗や湿気

革靴や革製バッグと同様に、革ベルトは水分に弱い。夏場に汗を吸い、手洗い時の水はねも吸う。革ベルトは手首に直接装着するため、他の革製品よりもどうしてもダメージを受けやすい。

さらに夏場は高温である。高温多湿の環境に革ベルトを長時間置いてしまうと、雑菌の温床となりかねない。汗や雑菌は肌荒れの原因になる恐れもある。

また、腐食が進みやすい状態では革ベルト自体にも疲労が蓄積しやすく、劣化を早めてしまう。

ほこり汚れや経年劣化

革ベルトには皮革の繊維がある。革製品には目に見える以上に微細な凹凸があり、ほこりや汚れが溜まりやすい。

ほこりが付着していないように見えても、日々の使用の中で小さな汚れは隙間に蓄積していく。これも雑菌の繁殖や腐食を早め、着用感を損なう原因だ。

革製品はエイジングによる色や質感の変化が魅力だが、革ベルトに関しては経年劣化によるダメージの方が目につきやすい。

紫外線や温度変化、水濡れと乾燥の繰り返し、さらに手首の運動による伸縮もダメージとなりへたりにつながる。


手入れや長持ちさせるポイント

革ベルトは使用に伴い、ある程度のダメージの蓄積は避けられない。適切な手入れをするかどうかは、革ベルトの寿命に大きく影響する。

外観も着用感も良好なまま長く使っていけるように、日々のケアや保管の方法を見ていこう。

使用時の注意と毎日のケア

革ベルトは着用者が意識する以上に多くのダメージを受けている。汗・皮脂や伸縮によるダメージを回避するためには、指1本分ほどの余裕を持たせて着用しよう。

水はねで濡れた場合は、すぐに柔らかいタオルかクロスで水分を押し取るように優しく拭き取る。夏場は汗を吸い続けると考え、こまめにケアしよう。

1日の終わりには、繊維の隙間の汚れも丁寧に拭き取る。特に夏場では内面の状態に注意しよう。

落ちにくい汚れや臭いの対策

ステインクレンジングウォーター

表面の汚れ、ベルト内側に付着した汗や皮脂の成分の除去に使えるM.MOWBRAY PRESTIGIOの「ステインクレンジングウォーター」、税別1000円。使用後は栄養クリームなどで保湿することを忘れずに。(問)R&D Tel.03-3847-2255

タオルやクロスで落ちない汚れがあっても、強くこすって落とそうとするのは厳禁だ。逆にダメージを与えて革ベルトの寿命を縮める。落ちにくい汚れはレザークリーナー(革専用クリーナー)で対処しよう。

臭いに関しては、消臭スプレーを直接吹き掛けるのは推奨しない。成分によっては劣化の原因となる。革製品に水は厳禁だが、臭いがどうしても取れない場合は最終手段として、ぬるま湯に30分ほど浸けて、2〜3日陰干しする手もある。

浸け置きするぬるま湯に中性洗剤を少量溶かす方法もあるが、染みや変色になる恐れもある。中性洗剤を使う場合、まずは目立たない部分でテストを行おう。

保管は高温多湿を避ける

ぬるま湯に浸した場合、ドライヤーで急速に乾燥させるとひび割れを起こす恐れがある。高温多湿や直射日光を避け、風通しの良い場所で陰干ししよう。

保管の際にも高温多湿や直射日光は避ける。革ベルトを自然に伸ばした状態で、丸めたりねじったりしないように注意しよう。臭いが気になるなら、ビニール袋の中に消臭剤とともに入れておく方法もある。


交換も考えよう

オーヴァーシーズ・オートマティック

ストラップを簡単に交換可能なインターチェンジャブル機構を備えたモデルが主流となりつつある。ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ・オートマティック」シリーズはピンクゴールド製ブレスレットのほか、付属するブルーのラバーストラップとアリゲーターストラップに同機構で簡単に付け替えることができる。自動巻き(Cal.5100)。37石。パワーリザーブ約60時間。2万8800振動/時。18KPG(直径41mm、厚さ11mm)。15気圧防水。520万円(税別)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755

革ベルトを夏場でも快適に使っていくためには、適切なケアが必要だ。

とはいえ、毎日着用すればダメージは蓄積していき、想像以上に劣化が早い場合もある。革ベルトを適時交換するという発想も持っておこう。

長持ちや気分転換につながる

革ベルトを毎日着用すると劣化が早まる。夏場に同じ革靴を毎日履けばどうなるかという問題と同様だ。

できれば革ベルトは2本以上常備し、定期的に交換することをすすめる。長寿命のためには、革ベルトを休ませることも意識しよう。

革ベルトを交換すれば、気分転換にもなる。着用感が良好になるという意味もあるが、デザインを変えるとスタイリングにも影響する。ビジネス用とプライベート用という使い分けを考えてみるのも良いだろう。

夏用におすすめの素材

夏用の革ベルトには、耐汗仕様のものを選びたい。特に裏面がラバーストラップ仕様になっているものがおすすめだ。このタイプの革ベルトは汗・皮脂によって着用感を損なうことがなく、ケアもしやすい。

また、革ベルトは消耗品という見方もできる。買い替えが多いと出費はかさむが、時計メゾンにOEM提供しているファクトリーブランドの商品であれば安い。

メーカー純正品と同等の品質でも、大幅に安く手に入れることが可能だ。

レグルス

(左)バンビの「レグルス」は、牛革の裏面に抗菌防臭加工付きのラバーを貼り付けたベルト。4000円(税別)。(問)バンビ Tel.03-5688-0112
(右)バンビ「レグルス」は、バネ棒外しが不要なクイックレバー付きで取り替えもしやすい。


夏も革ベルトを楽しもう

夏場は革ベルトにとって厳しい環境である。劣化を早める原因は多いが、適切なケアを行い、適時交換も行えば快適に着用できる。

夏場もエレガントな革ベルトで手首を飾ろう。

川部憲 Text by Ken Kawabe


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