デジタルと機械式の要素を兼ね備えたジャンピングアワー、これは伝統的な針による表示ではなく、時を示す小文字盤を1時間に1コマずつ表示する機構を持つ時計である。今回はジャンピングアワーを搭載する5本の時計を紹介しよう。
Text by Mark Bernardo
2020年5月掲載記事
ブルガリ
「ジェラルド ジェンタ アリーナ バイ レトロ 50周年記念モデル」
オーデマ ピゲ「ロイヤルオーク」やパテック フィリップ「ノーチラス」といった数々の名作を生み出したのち、自身のブランドを1969年に立ち上げた伝説的時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタ。2011年にこの世を去った創業者に敬意を表し、現在ブランドを所有するブルガリは2019年、プラチナケースの50周年記念モデルを発表した。ブルーラッカー文字盤のこの時計には、12時位置にラウンド型開口部を設けたジャンピングアワー表示と、レトログラードの針による分、日付け表示が備わっている。これらの形状は、ブルガリ傘下になる前のジェラルド・ジェンタの時計の特徴であるものだ。また文字盤にはジェラルド・ジェンタのオリジナルを踏襲したロゴが配され、その内部にはブルガリの自動巻きキャリバーが搭載されている。
IWC
「IWC トリビュート・トゥ・パルウェーバー “150 イヤーズ”」
ドイツ・ザルツブルクを拠点として活躍した時計師ジョセフ・パルウェーバーの伝説的な懐中時計を2018年に復刻した「IWC トリビュート・トゥ・パルウェーバー “150 イヤーズ”」。パルウェーバーは針によらず、回転ディスク上の大きな数字によって時分を表示するデジタル式時間表示のパイオニアであった。腕時計へと変身を遂げたこの時計は、18Kレッドゴールドケースにラッカー仕上げのホワイト文字盤、青焼きの秒針を合わせている。キャリバー94200は懐中時計のムーブメントを参考とし、時分ディスクを動かしていた歯車に別の輪列と独立した香箱を加えて改良、ミニッツディスクを単独で回転させる動力を供給する。
クロノスイス
「フライング・レギュレーター ジャンピングアワー」
ルツェルン発の時計ブランド、クロノスイスは、時、分、秒針を独立させたレギュレーター式ダイヤルの腕時計を多く展開している。その中でも「フライング・レギュレーター ジャンピングアワー」は、デジタル式アワー表示の開口部を12時位置に設けていることが特徴だ。文字盤にはクロノスイス独自の立体的ギヨシェ装飾が施される。存在感のある玉ねぎ型リュウズもクロノスイスの特徴的なものだ。
マイスタージンガー
「サルトラ メタX」
シングルハンドの時計作りで知られるドイツのマイスタージンガー。2014年からは、センターの分針と12時位置の開口部で時表示を行うサルトラ・コレクションを展開している。その中でもスポーティーな佇まいを見せるのは、レッド ドット デザイン賞を受賞したメタXモデルだ。ステンレススティール製ケースは逆回転防止ベゼルを備え、また60分のミニッツスケールはセラミックベゼルインレイで配されている。搭載するのはETA2824-2またはセリタSW200-1をベースに自社製のジャンピングアワーモジュールを組み合わせた自動巻きムーブメントだ。
レゼルボワール
「ハイドロスフィア エアゲージ」
レゼルボワール初のダイバーズウォッチは、同ブランドの因習を打破する独特な文字盤レイアウトを備えている。通常の時計の8時位置から4時位置までの大部分を占めるレトログラード方式の分表示、6時位置にあるジャンピングアワー、レッド(ゼロ)からブルー(フル)に展開するパワーリザーブ表示などである。ヘリウムエスケープバルブ搭載により250mの防水性を保持するプロフェッショナルダイバー向けの仕様だ。サテン仕上げのステンレススティール製ケースはラグのないデザインとなっていて、ラバーコーティングされたねじ込み式リュウズが合わせられている。セラミックベゼルにはふたつの15分表示が配され、ダイビングの時間をレトログラード方式の針を通して読み取ることができる。