ゼニスの歴史上、非常に大きなマイルストーンであるのが「エル・プリメロ」ムーブメントの誕生だ。ゼニスは2019年、高らかにその50周年を祝い、1969年の復刻モデルをはじめとしたいくつかの記念モデルを発表した。そして2020年、これに続きゼニスは新たなヴィンテージピースの復刻版「クロノマスター リバイバル シャドウ」を発表。1970年以来、秘密と謎に包まれてきた伝説のプロトタイプを現代解釈した時計である。
Text by Mark Bernardo
ゼニス
「クロノマスター リバイバル シャドウ」
1969年に、自動巻きエル・プリメロを搭載した最初の時計であるステンレススティール製ケースのRef.A384が発表された翌年。ゼニスは、当時まだ珍しかったブラックのステンレススチール製ケースを備えた手巻きクロノグラフのプロトタイプを製作した。この本数はわずかで、市場には出回らなかった。ゼニスの公式記録にもその記述には乏しく、ほんの一握りの社員しか知ることのない情報だった。この特別なモデルが息を吹き返したのは2019年のこと。ゼニスが謎に包まれた歴史を解明すべく、かつてシャルル・ベルモがエル・プリメロをクォーツ危機から救うべくパーツや資料を隠した屋根裏部屋の壁を取り払ったときに、ほとんど忘れ去られていたプロトタイプの1本を発見した時であった。
「クロノマスター リバイバル シャドウ」と名付けられた復刻版は、当時に倣った直径37mmのケースサイズだが、ブラック加工されたステンレススティール製ケースはマイクロブラスト加工が施されたマットブラックのチタン製に置き換えられている。オリジナルの手巻きクロノグラフキャリバーの代わりに搭載されているのは、最新の自動巻きムーブメント、エル・プリメロ4061だ。毎時3万6000振動のハイビートで、約50時間のパワーリザーブ、コラムホイール式のストップウォッチ機構を備えている。
(編集部注:1970年のプロトタイプはブラック処理を施していたが、2020年の本作は処理ではなく、ブラスト加工によりケースを黒く見せている。そのため、理論上は再仕上げが可能だろう。また、搭載するCal.4061はガンギ車とアンクルにシリコン素材を採用した最新型だ)
ブラックの文字盤を引き立たせるのはスネイル仕上げの3つのサブダイアルだ。9時位置にスモールセコンド、6時位置に12時間積算計、3時位置に30分積算計が配され、グレーのタキメータースケールを外周部分に備える。針とアプライドアワーマーカーはロジウム加工が施されたファセット仕上げで、スーパールミノバが塗布され暗所でも明るく浮かび上がる。
コーデュラ調のテクスチュアストラップは裏面がブラックラバー仕様であり、ケースと同じマイクロブラスト仕上げのチタン製尾錠が付属している。価格は88万円(税抜)で、日本への入荷予定は2020年8月だ。
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