IWCアクアタイマーについて知ろう。特徴と主なモデル4選

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2020.06.22

アクアタイマーは、高級時計メーカーのIWCが手掛けるダイバーズウォッチのコレクションである。他ブランドのダイバーズラインにはない、特徴的な機能を搭載した時計だ。アクアタイマーの魅力を知り、主なモデルを押さえておこう。


アクアタイマーとは

IWCが展開するアクアタイマーとは、どのような時計なのだろうか。主な特徴など、概要を解説する。

IWCの伝統的なコレクションのひとつ

アクアタイマーは、スイスの高級時計ブランド「IWC」が展開する、6種類の伝統的なコレクションの中のひとつだ。

1868年に創立されたIWCは、ダイバーズウォッチであるアクアタイマーのほか、ポルトギーゼやパイロット・ウォッチ、ポートフィノ、ダ・ヴィンチ、インヂュニアといった名シリーズを世に送り出している。

IWCの創設者フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズは、米国ボストン出身の時計師/実業家である。米国の先進技術と、スイスの伝統的な職人技術の融合こそが、IWCを立ち上げたジョーンズの狙いであった。

150年を超える長い歴史の中で、日常的に使える丈夫な時計から、プロフェッショナル仕様の複雑機構まで、多様なモデルを発表しながら高い評価を獲得し続けている。

ベゼルや視認性が特徴

プロフェッショナル向けダイバーズウォッチとして開発されたアクアタイマーは、独特のベゼルに搭載された安全装置と、優れた視認性を実現する蓄光塗料を、大きな特徴として備えている。

インナーベゼルに備わる「セーフダイブ・システム」は、内部機構の保護と計測ミスの防止を目的とした機能だ。

ダイビング時間が誤って変更されることを防ぐために、インナーベゼルが片方にしか回転しないような仕組みとなっている。

ダイバーが常に潜水時間を把握するためには、視認性の高さも重要である。アクアタイマーの文字盤には、水中でも優れた視認性を確保できるように、グリーンとブルー2色の蓄光塗料が採用されている。


アクアタイマーの歴史

初代から現行モデルまで、アクアタイマーが進化してきた足取りをたどってみよう。防水性能とベゼルのデザインが、時代と共に変化していることが分かる。

マリンスポーツの人気に応えて誕生

1960年代は、米国を中心に、サーフィンやスキューバダイビングなどのマリンスポーツ人気が高まりつつあった時代である。

本格的な防水機能を備えた時計が求められる気運に乗じるかたちで、1967年にIWCが製作したダイバーズウォッチがアクアタイマーだ。

アクアタイマー Ref.812AD/1812

アクアタイマー Ref.812AD/1812
ピケレ(EPSA)のスーパーコンプレッサーケースを採用したIWC初の本格的なダイバーズウォッチ。なお1975年に、リファレンスは1812に変更された。自動巻き(Cal.8541B)。21石。1万9800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS(直径37mm)。20気圧防水(当時)。

初代アクアタイマーは、200m防水と回転式インナーベゼルを備えていた。一般的な逆回転防止ベゼルではなく、リュウズで操作するインナーベゼルを採用したことが最大の特徴である。

98年には、アウター式の回転ベゼルを備えた「GSTアクアタイマー」が発表される。防水性能が2000mにまで高まり、頑強なアクアタイマーのイメージを確立させた。

GST アクアタイマー2000 Ref.IW353601

GST アクアタイマー2000 Ref.IW353601
オーシャン2000のケース構造を転用した後継機にして、アクアタイマーの原型を定めたモデル。ケース素材にはチタンとステンレススティールが用意された。自動巻き(Cal.37524、ETA2892A2ベース)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Ti(直径42mm)。2000m防水。

リシュモン グループ加入後はスポーティーに

IWCは、リシュモン グループの傘下に入った2000年以降も、アクアタイマーのさらなる発展に力を注いだ。

04年に発表されたモデルは、それまでの屈強なイメージのデザインから、イエローとブラックの配色によりスポーティーな印象が際立つデザインに変更されている。

さらに、09年モデルでは、アウターベゼルに傷が付きにくいよう、表面に幅4mmのサファイアクリスタル製リングが配された。ブレスレットも、ワンタッチで着脱できる仕様となっている。

現行のアクアタイマーは、14年に登場したモデルだ。これまで使いにくかった部分を改善する意味で、回転式のベゼルがアウターベゼルによって操作するインナーベゼルに改められている。


特徴的な機能

ほかのダイバーズウォッチには見られない、アクアタイマー特有の機能を紹介する。プロ仕様の時計として、多くのダイバーに支持される理由をチェックしておこう。

ベゼル論争に終止符を打つセーフダイブ・システム

潜水時間を正確に刻み、ダイバーの命を守るダイバーズウォッチにとって、回転式ベゼルは計測ミスを防ぐために不可欠な機能である。

ダイバーズウォッチが用いる回転ベゼルには、アウターとインナーの2タイプが存在する。しかし、双方にメリットとデメリットがあり、どちらが優れているかという点で、時計界では長い間論争が続いていた。

IWCがアクアタイマーに搭載したセーフダイブ・システムは、ケース内にラチェット機構を組み込み、双方の欠点を補う機能として登場した画期的なシステムだ。アウターベゼルとともにインナーベゼルが反時計回り方向には連動するものの、アウターが時計回りに動いてしまってもインナーベゼルは動かない。

セーフダイブ・システムなら、アウターベゼルのデメリットである視認性の悪さや傷つきやすさをカバーし、操作性に難があるインナーベゼルの弱点も補える。

インナーベゼルの逆回転を防止するクラッチ機構

2014年登場のアクアタイマーから、アウター/インナー式の回転ベゼルが採用された。

アウターベゼルを反時計回りに回転すると、ケースに内蔵された歯車に噛み合って、それがインナーベゼルを反時計回りに回転させる。

歯車にはクラッチ機構が内蔵されており、アウターベゼルを時計回りに回転させた場合は連結がカットされ、アウターベゼルは空転し、インナーベゼルは時計回りには回転しない。

9時側ケースサイドに配されたアウター/インナー回転ベゼルを支えるドライブホイールとギアのカバー。整備性を考慮して、ドライブホイールとギアは分解可能である。


アクアタイマーの主なモデル

IWCは、記念モデルの販売で得た売り上げの一部を、海洋の環境保護活動支援として寄付していることでも知られている。

ふたつの記念モデルを含めた、代表的なアクアタイマーのモデルを紹介する。

アクアタイマー・クロノグラフ

アクアタイマー・クロノグラフ

アクアタイマー・クロノグラフ Ref.IW376804
自動巻き(Cal.79320)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。SS(直径44mm)。30気圧防水。83万5000円。

単独の時刻と最長約12時間までの累計時間を計測できるクロノグラフ機能を搭載し、安心して長時間潜水できるモデルだ。

ムーブメントには、約44時間のパワーリザーブが備わった、自動巻きのCal.79320を採用している。

シンプルな色合いとフォルムが特徴的な文字盤のデザインは、初代アクアタイマーをモダンアレンジしたものである。

防水性能は30気圧(=300m)を誇り、セーフダイブ・システムと併せて、実用性に優れたモデルと言えるだろう。

アクアタイマー・クロノグラフ “ガラパゴス・アイランド”

アクアタイマー・クロノグラフ ガラパゴス・アイランド

アクアタイマー・クロノグラフ “ガラパゴス・アイランド” Ref.IW379502
自動巻き(Cal.89365)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SS(直径44mm)。30気圧防水。108万円。

IWCとチャールズ・ダーウィン財団のパートナーシップを記念して発表されたモデルだ。イギリスの自然科学者ダーウィンが、著書『種の起源』で著述した自然淘汰による自然選択説を着想した場所から名付けられている。

クロノグラフムーブメントとして、パワーリザーブ約68時間の自社製Cal.89365を搭載している。ストップ→リセットの手順を省き、何度も連続して計測を行えるフライバック機能も備えたムーブメントである。

ブラックラバーコーティングされたステンレススティールが異彩を放ち、30気圧の防水性能や、ブレスレットのワンタッチ交換システムが備わっていることも魅力だ。

アクアタイマー・オートマティック

アクアタイマー・オートマティック Ref.IW329002

アクアタイマー・オートマティック Ref.IW329001
ダイバーズウォッチらしからぬ簡潔な造形も魅力的だ。またラグが短いため装着感も良好である。自動巻き(Cal.30120)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径42mm)。30気圧。58万円。

アクアタイマーシリーズの中で、最もサイズの小さいモデルであり、直径は42.0mmである。文字盤のデザインや、インナーベゼルのクォータースケールは、初代の外観をモチーフとしている。

アウターベゼルに見られる、傾斜の付いたスリムなシルエットは、1982年モデルであるポルシェデザインの「オーシャン2000」から着想を得たものだ。

ムーブメントは、約42時間パワーリザーブである自動巻きCal.30120を搭載している。

蓄光塗料が施された視認性の高いブラック文字盤や、30気圧の防水性能、安心のセーフダイブ・システムを備え、深い潜水に適した時計と言えるだろう。

アクアタイマー・オートマティック “エクスペディション・ジャック=イヴ・クストー”

アクアタイマー・オートマティック “エクスペディション・ジャック=イヴ・クストー”

アクアタイマー・オートマティック “エクスペディション・ジャック=イヴ・クストー” Ref.IW329005
自動巻き(Cal.30120)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径45mm)。30気圧防水。60万5000円。

研究者や映画製作者としてだけでなく、スキューバダイビングのパイオニアとしての顔も持っていたジャック=イヴ・クストーへのオマージュモデルだ。

ディープブルーの文字盤と、裏蓋にデザインされたクストーの刻印から、このモデルが特別なものとして製造されたことが見て取れる。

ムーブメントや機能、そのほかのディテールに関しては、前項で紹介したアクアタイマー・オートマティックと同じである。


アクアタイマーの魅力を知ろう

高級時計メーカーのIWCが展開するアクアタイマーは、優れた安全性能を備えた独特のベゼルや、高い視認性を誇る文字盤により、多くの支持を集めているダイバーズウォッチだ。

30気圧の防水性能やワンタッチ交換できるブレスレットなど、数多くの魅力を知り、購入を検討する際の参考にするとよいだろう。


川部憲 Text by Ken Kawabe


【アイコニックピースの肖像】IWC/アクアタイマー
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