世界的な名門時計ブランド「オーデマ ピゲ」は、2019年に「SIHH(ジュネーブサロン)」からの離脱を表明、2020年に初の独自発表をした。オーデマ ピゲが展開するコレクションと、2020年発表の新作に迫る。
オーデマ ピゲの基礎知識
オーデマ ピゲとは、どのようなブランドなのだろうか。スイスを代表する名門たらしめる特徴をチェックしておこう。
ロイヤル オークで知られるスイスのブランド
オーデマ ピゲは、パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンと並ぶ、世界3大高級時計メーカーのひとつに数えられているブランドだ。
1875年にスイスのジュウ渓谷で創業して以来、現在まで1度も他社資本に買収されず、一族経営を継続し続けている数少ない名門である。
創業当時から複雑機構の分野で業界屈指の地位を確立し、時計の薄型化や小型化でも、時計史に名を残すほどの実績を残している。
1972年に発表した「ロイヤル オーク」は、その独創的な八角形のベゼルと相まって、ステンレス製の高級時計として、それまでの常識を覆し、業界に衝撃を与えた名作だ。現在でも、オーデマ ピゲの象徴として広く知られている。
代表的なコレクションが多数
オーデマ ピゲの特徴として、数多くのコレクションを展開していることが挙げられるだろう。
ブランドの代名詞とも言える高級スポーツウォッチ「ロイヤル オーク」は、「オフショア」や「オフショア ダイバー」といった派生モデルも有名だ。
ほかにも、ラグジュアリーなデザインが特徴的な「ミレネリー」や、創業者の1人ジュール=ルイ・オーデマ(1851-1918年)へのオマージュを奉げる「ジュール オーデマ」も、主力コレクションに名を連ねている。
トップブランドとしてのステータスを確立した現在でも、完全なる新作を精力的に発表し続けていることも、オーデマ ピゲが評価を集めている理由のひとつと言える。
オーデマ ピゲの魅力
オーデマ ピゲは、由緒ある長い歴史だけでなく、優れた技術や芸術性の高いデザインによっても、名門としての価値を維持してきた。
傑作を生み出し続ける支えとなっている、これらふたつの魅力に迫る。
ミニッツリピーター開発など高い技術力
オーデマ ピゲは、時計史に刻まれるほどの改革を成し遂げた、高い技術力を有するブランドだ。
パーペチュアルカレンダーやトゥールビヨンと並び、世界3大複雑機構のひとつに数えられる「ミニッツリピーター」を、1892年に世界で初めて、懐中時計へ搭載することに成功している。
1986年には腕時計サイズの「トゥールビヨン」も、世界で初めて自動巻き化することに成功している。
特徴的なデザイン
オーデマ ピゲの代表作ロイヤル オークは、「八角形(オクタゴン型)」のベゼルをデザインの特徴として備えている。ベゼルから裏蓋まで貫かれた8本のネジも印象的だ。
このネジは、単なるデザイン上のアクセントではない。各部をネジにより結合する特許技術であり、時計製造における革命的な技術と言われている。
ロイヤル オークの文字盤には、独自の装飾であるギヨシェ彫りの「タペストリー」が施されている。優れた技術により、網目模様と点状装飾を均一に細かく施した装飾だ。
タペストリーダイアルは、精巧な技術が垣間見えるだけでなく、光の反射を利用して上品な輝きを演出できるようにも設計されている。
2020年の新作モデル
スイスでは、高級時計見本市「SIHH」(現Watches & Wonders)が、毎年1月頃に実施されきた。オーデマ ピゲは、2020年以降のSIHHへの不参加を表明している。
独自に発表された2020年の新作モデルを中心に、2019年のSIHHで発表された主な新作も含めて紹介しよう。
ロイヤル オーク オートマティック
自動巻き(Cal.5800)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径34mm、厚さ8.8mm)。5気圧防水。190万円(税別)。ほかにSS +ダイヤモンドセットベゼルモデル(240万円、税別)、SS×18KPGモデル(225万円、税別)、18KPGモデル(465万円、税別)がラインナップされる。
2019年のSIHHでは、ロイヤル オークの約7年ぶりの新モデル「Ref.155500ST」がリリースされた。
2019年に発表されたRef.155500STのカラーバリエーションは、ブラック・ブルー・グレーのみであったが、2020年には、シルバーの文字盤が追加されている。
定番カラーのシルバーがあしらわれたグランドタペストリーダイアルは、ステンレススティールやブレスレットのシルバーと相まって、上質な輝きを放つことが特徴だ。
ムーブメントは、パワーリザーブ約70時間を備えた、自動巻き式の自社製Cal.4302が搭載されている。
リマスター01 オーデマ ピゲ クロノグラフ
30分積算計の15分を示す目盛りの上の赤い4/5表示をオリジナルモデルから継承する。これは、サッカー好きであったオーデマ ピゲ創業者一族の三代目に当たるジャック=ルイ・オーデマ(1910-2003年)が、ハーフタイムを知らせるためにリクエストしたものだ。自動巻き(Cal.4409)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×18KPG(直径40mm)。2気圧防水。ブティック限定500本。555万円(税別)。
オーデマ ピゲの歴史的名作であるクロノグラフ「No.1533」を、現代版としてリメイクしたモデルだ。
かつてのNo.1533には、手巻き式クロノグラフが搭載されていた。2020年に発表された新作では、自動巻き式のCal.4409が採用されている。
このムーブメントは、フライバック機能や約20m防水機能を備え、パワーリザーブも約70時間を誇るなど、優れた利便性を実現した機構である。
デザイン面では、基本的にNo.1533を踏襲しているため、オリジナルのレトロ感を失っていない。生産本数も絞られることから、将来的な希少化が予想されるモデルである。
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック
適度な湾曲を与えたラウンドケースに、多様なフォルムを融合させたコード11.59のベーシックモデル。全4種展開で、他に18KPGのブラックダイアル、18KWGのブルーダイアルがある。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。右:18KWG、左:18KPG(直径41.0mm、厚さ10.7mm)。30m防水。共に280万円。
2019年のSIHHで発表された新シリーズだ。ロイヤルオークの誕生から47年ぶり、オフショアの発表から数えても26年ぶりの、完全なる新作モデルである。
新しい日付に変わる直前という意味で名付けられた「11.59」からは、新しい挑戦に対するオーデマ ピゲの意気込みを感じ取れる。
2019年のローンチモデルとして6モデル・13リファレンスが発表され、それぞれのモデルに計6つのムーブメントが搭載された。このうち3つは、新たに開発されたものである。
風防が広がり文字盤全体の視認性向上が図られていることや、独特なラグの形状による唯一無二の造形美など、デザイン面でも革新性が光っている。
新作をチェックしよう
スイスの世界的名門ブランドであるオーデマ ピゲは、高い技術力や独特のデザインが魅力のコレクションを多数展開している。
2020年の新作発表により、代表作であるロイヤルオークの新モデルや、傑作と称される「No.1533」のリメイクモデルが、オーデマ ピゲのラインナップに追加された。
2019年のSIHHで発表済みの新作も併せて、今後のオーデマ ピゲを牽引する存在になると予想される新コレクションを押さえておこう。
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