数多くの複雑機構時計で知られるオーデマ ピゲは、フラッグシップコレクションである「ロイヤル オーク」などにムーンフェイズを搭載している。主なモデルやムーンフェイズの操作方法を紹介しよう。
オーデマ ピゲとムーンフェイズ
オーデマ ピゲは、時計産業が発達したスイスの中でも複雑系を発展させてきたジュウ渓谷で1875年に創業。以来、ミニッツリピーターや永久カレンダーなど優れた機能を備えた複雑機構時計を製造し続けてきた。
まずは、オーデマ ピゲが初めてムーンフェイズを取り入れたムーブメント、キャリバー「9/10RSQ」の歴史をたどってみよう。
キャリバー9/10RSQがカレンダーリストウォッチの礎
ムーンフェイズは、エナメル素材が採用された回転式のムーンディスクを、スモールセコンドと組み合わせ、月の満ち欠けを表示する機能だが、オーデマ ピゲが初めてその機構を搭載させたムーブメントはキャリバー9/10RSであった。
製造当時の高い技術が集約された、オーデマ ピゲの歴史の中でも重要な意味を持つムーブメントである。
最終的に製造された2811個のうち、カレンダー機能が搭載された9/10RSQはわずか68個。現在も製造されているカレンダーリストウォッチの礎として、意義深い機構である。
6時位置にデザインされたムーンフェイズ
1945年から5年間で製造された、極めて希少性の高い68個のカレンダーキャリバーは、さまざまなデザインで作られた4つのリファレンス(リファレンスナンバー5504、5513、5514、5515)に搭載された。
当時としては大ぶりな直径37mmの丸型ケースの5504、斬新なスクエア型のケース5514など、多彩なデザインの時計として1949年から67年まで販売されている。
カレンダー機能が搭載された68個のキャリバー9/10RSQは、全て6時位置にムーンフェイズがデザインされていた。
ムーンフェイズの主なモデル
オーデマ ピゲが展開する時計には、ムーンフェイズが備わった希少モデルがいくつか存在する。代表的なモデルを3つ紹介しよう。なおどのモデルも生産数が限られているため、入手は困難となっている。
ロイヤル オーク デイデイト ムーンフェイズ
オーデマ ピゲの傑作コレクションとして知られるロイヤル オークには、新旧交えてさまざまなモデルが存在する。デイデイト ムーンフェイズは、3時位置に日付、9時位置に曜日表示のインダイアル、6時位置にムーンフェイズを配したモデルである。
ケース径は約36mmと、現行のロイヤル オークに比べやや小ぶりながら、3時・6時・9時位置にバランス良く並べられたそれぞれの表示は、優れた視認性を保っている。
文字盤のタペストリーデザインやオクタゴン型のケース、角に埋め込まれた8個のネジなど、ロイヤル オークを特徴付けるディテールも健在だ。
ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー
複雑機構の中でも最も精密な構造のひとつとされている、パーペチュアルカレンダーを搭載したロイヤル オーク。毎月末や閏年のズレも正確に反映するパーペチュアルカレンダーは、100年間手動で調整する必要がない。
月・日・曜日・ムーンフェイズを表示するフルカレンダー機能に加え、針でポイントして示す週番号もダイアルの縁に配されている。
ムーンフェイズに施された月は、レーザー加工によるリアルな陰影をまとい、6時位置の美しい夜空をより一層際立たせている。
ジュール オーデマ パーペチュアルカレンダー
ラグジュアリースポーツウォッチとして展開されているロイヤル オークと並び、クラシックな佇まいの「ジュール オーデマ」も、オーデマ ピゲを支え続けている名シリーズだ。
上品なサンレイ仕上げのダイアルに、4つのインダイヤルが視認性良く配されている。繊細ながら立体感に富んだ針・インデックスも秀逸。シンプルだからこそ仕上げの巧みさが際立つ、オーデマ ピゲの技術力の粋を集めた複雑系だ。
ムーンフェイズの操作方法
ムーンフェイズは時刻の進行と同時に動作するが、月齢周期の微妙なズレや時計自体の停止により、調整が必要となる場合がある。
ムーンフェイズが動作する仕組みと併せて、調整方法を理解しておこう。
ムーンフェイズの仕組み
ムーンフェイズの回転ディスクには2個の月が描かれており、ディスクが回転し表示された月の形を見ることで、現在の月の満ち欠けが分かるという仕組みだ。
ディスクの縁には59枚の歯が施されており、59日かけてディスクが1周する。約29.5日の月齢周期を2倍にし、月も2個描くことで、表現が困難な月の満ち欠け表示を実現している。
つまり、満月時には片方の月がディスクの頂上に達し、新月時には月が2個とも隠れるという、優れたシステムだ。
ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーでの例
ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーでは、時計を動かし続けていた場合は100年に一度のみの修正で済むが、長期間着用せず4日以上の差が生じた場合は手動での調整が必要だ。
カレンダーは10時位置のボタン、ムーンフェイズは7時30分位置のボタン、閏年サイクルの年月は2時位置のボタン、曜日は8時30分のボタン、週は4時位置のボタンで修正する。その際には付属の修正ツールを必ず用いる。
その後、時刻を合わせるが、現在時刻が時計の指している時刻よりも前の場合は針を反時計回りで合わせ、現在時刻よりも進んでいた場合は時計回りで合わせる。
ちなみに、このモデルに限ったことではないが、カレンダーの修正は14時から3時の間はメカニズムを損傷させる可能性があるため、行なってはいけない。
ムーンフェイズを楽しもう
オーデマ ピゲのムーンフェイズは、文字盤の6時位置で月の満ち欠けを表示する機能である。製造には高い技術が必要な複雑機構のひとつであり、同ブランドを代表するロイヤル オークやジュール オーデマにも、ムーンフェイズを搭載したモデルが存在する。
デザイン性と実用性とを兼ね備えた精巧な複雑機構で、高級機械式時計の醍醐味を味わってみよう。
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