高級時計の名門ブランドとして知られるオーデマ ピゲは、創業当初から永久カレンダーの開発に多くの時間と労力を費やしてきた。オーデマ ピゲと永久カレンダーが作り上げてきた歴史や功績、主な搭載モデルを解説する。
カレンダーの基礎知識
高級腕時計に搭載されるカレンダー機能には、いくつかの種類が存在する。その中でもより複雑さを極めたふたつの複雑機構について、特徴や違いを押さえておこう。
年1回を意味するアニュアルカレンダー
一般的な日付表示機能を、より精巧な仕組みにしたものが、アニュアルカレンダーと呼ばれる機能だ。
機械式時計の一般的なカレンダー機能では、小の月(31日が存在しない月)で月をまたぐ際に自分で日付を「30」から「1」に進めなければならない。
しかし、アニュアルカレンダーは、月の大小を判別して日付を先送りするため、閏年の存在により日数が変化する2月末のみ自分で調整すればよい。年1回しか調整しなくて良いことから、名称に「年1回」を意味する「アニュアル」と名付けられている。
永久を意味するパーペチュアルカレンダー
アニュアルカレンダーよりもさらに修正のいらないカレンダー機構が、パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)である。3月1日の調整も必要なく、約100年もの間、自動で動作し続ける。
この機構は、天才時計師として名高いアブラアン-ルイ・ブレゲ(1747~1823年)が1795年に発明したとされ、その精巧さから世界3大複雑機構のひとつとしても数えられている。
現在、全世界で最も普及しているグレゴリオ歴(1582年にローマ教皇グレゴリウス13世が制定)では、西暦が4で割り切れる年が閏年、100で割り切れる年は平年、ただし400で割り切れる年には閏日を設けるというルールがある。
そのため、永久カレンダーでは、2100年・2200年・2300年……には手動での修正が必要にはなるが、経験する人は少ないだろう。
永久カレンダーは、アニュアルカレンダーの機能をさらに向上させた仕組みに思えるが、アニュアルカレンダーは2000年前後に誕生した比較的新しい機構だ。
オーデマ ピゲと永久カレンダー
スイスの高級時計ブランドのひとつとして名を馳せるオーデマ ピゲは、創業当時から永久カレンダーの開発と進化に力を入れている。
オーデマ ピゲが、お家芸とも言える永久カレンダーとどのように歩んできたのか、その歴史と現在の進化版を紹介しよう。
世界で初めて閏年に対応した腕時計を製作
20世紀初頭には、永久カレンダーを搭載した懐中時計はすでにあり、カレンダー機能を備えた腕時計もスイスの時計メーカーから登場していた。しかし当時の腕時計は、閏年に対応する機能を長い間備えられずにいた。
そんな中、1955年にオーデマ ピゲが世界で初めて、閏年に対応した永久カレンダーを腕時計に搭載し、画期的な出来事として時計史に名を刻むことになる。
また78年にはステップベゼルが特徴的な「Ref.5548」を製造し、オーデマ ピゲの大ヒットモデルとなった。その後の業界に大きな影響を与えた名作と言えるだろう。
複雑さと精巧さは進化し続ける
2015年に誕生した「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」は、オーデマ ピゲの永久カレンダーが、現在もなお進化し続けていることを示すモデルだ。
搭載されている永久カレンダーは、月・曜日・日付を表示するインダイアルと、6時位置に月の満ち欠けを表現するムーンフェイズを備え、センターの3本目の針で週番号を示すなど、極めて精巧なカレンダー機能を誇る。
厚さわずか4.31mmの薄型ムーブメントの中に、高度な技術で永久カレンダーを組み込んでいることも特徴的だ。
主な搭載モデル
オーデマ ピゲが展開するモデルのうち、永久カレンダーを搭載した時計を紹介する。その他の機能やデザインにも注目してみよう。なおここで紹介したモデルは全て生産数が限られているため、入手困難となっている。
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ パーペチュアルカレンダー
2019年、四半世紀ぶりにオーデマ ピゲに新たにラインナップされた「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」コレクション。
一見すると丸型のフォルムだが、オクタゴン型のミドルケースを採用しすることで、オーデマ ピゲのDNAを感じさせるデザインだ。
永久カレンダー搭載モデルには、約40時間のパワーリザーブと30m防水を備えた、自社製ムーブメントCal.5134を搭載。アヴェンチュリンガラスを用いた満天の星を思わせるダイヤルも、高級機にふさわしい品格を放つ。
ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー
オーデマ ピゲのフラッグシップモデルであるロイヤル オークに、永久カレンダー機構を搭載したモデルだ。
自社製ムーブメントCal.5134を採用し、ロイヤル オークを特徴付けるタペストリーデザインの文字盤上で、優れた視認性を保ちながら時を表示している。
ムーンフェイズのプレートはアベンチュリン製。レーザー加工によりリアルな陰影を演出した月からも、魅力を感じられるだろう。
ロイヤル オーク オフショア グランド コンプリカシオン
ロイヤル オークの派生シリーズ「ロイヤル オーク オフショア」にも、永久カレンダーを搭載するモデルがある。複雑機構を搭載したコンプリカシオンである。永久カレンダーやムーンフェイズのほか、スプリットセコンドクロノグラフやミニッツリピーターといった機構も備えた超複雑モデルだ。
特に、鐘の音によって経過した時刻を知らせるミニッツリピーターは、複雑機構の中でも希少価値が高く、当モデルの価値をさらに高めている要素となっている。
ケース素材には軽量かつ耐傷製に優れたセラミックを採用し、他の高級時計では得られないような素材感を醸し出していることも魅力と言えるだろう。
機構を理解するとより楽しめる
高級機械式時計に組み込まれるカレンダー機能の中でも、最も複雑で高性能な機構が永久カレンダーだ。
オーデマ ピゲは、世界で初めて閏年に対応した永久カレンダーを腕時計に搭載し、その後もより複雑かつ精巧に進化させた永久カレンダーを開発し続けている。
世界3大複雑機構のひとつにも数えられている複雑機構の仕組みを理解し、オーデマ ピゲのモデルでその精巧さを体感してみよう。
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