時計愛好家の中には、どのようなデイト表示も文字盤の美しさを阻害し、デザインの調和を乱すため不要と思う人が少なからずいる。しかしその一方で、デイト表示を好ましいと思う愛好家だって当然ながら多く存在するのだ。今回は後者の方たちに向けて、カレンダー表示の中でも特に高い視認性と存在感を放つ「ビッグデイト」を搭載したお勧めモデルを選出。今回のリストをまとめてみた。
Text by Mark Bernardo
2020年6月掲載
ブランパン「ヴィルレ グランドデイト」
自動巻き(Cal.6950)。35石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRG(直径40mm、厚さ10.9mm)。3気圧防水。210万円(税別)。(問)ブランパン ブティック銀座 Tel.03-6254-7233
「ヴィルレ グランドデイト」は真夜中に瞬時に切り替わる設計のビッグデイト機構を備えた自社製自動巻きムーブメントCal.6950を搭載するモデルだ。Cal.6950はツインバレルによって約72時間のパワーリザーブを実現しており、非磁性素材のシリコン製ヒゲゼンマイも採用する。文字盤に目を移せばローズゴールド製の夜光処理が施された時分針がなめらかにシルバーオパーリンの文字盤上を滑り、アプライドのローマンインデックスで時刻を表示する。ビッグデイトのふたつの小窓は6時位置にあり、メインダイアルから2段階沈み込みんでいるのが特徴。つまり、ベゼルに施された「ダブル・ポム」デザイン同様の手法が取られているのだ。シースルーバックからはコート・ド・ジュネーブ仕上げやローズゴールド製ローターに施された「ハニカム」デザインを鑑賞することができる。
カール・F・ブヘラ「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」
自身のアーカイブで発見された1956年製のツーカウンタークロノグラフにインスパイアされた「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」は、アニュアルカレンダーとクロノグラフの組み合わせを持つ。41mm径ケースにはステンレススティールまたはSS×18Kローズゴールドのコンビネーションが用意されている。アニュアルカレンダーの表示にはビッグデイト式カレンダーを12時位置に備えており、月の表示は4時位置と5時位置の間に配されている。アーカイブモデルに範を取った文字盤には、シリンジ状の針やヴィンテージスタイルのアラビア数字インデックス、ボックスタイプのサファイアクリスタル製風防が合わせられている。また、長方形のクロノグラフプッシャーもアーカイブモデルから受け継いでいる要素のひとつだ。搭載するのは自動巻きキャリバーCFB 1972。これはETAのムーブメントをベースにデュボワ・デプラ製モジュールを組み合わせたものだ。パワーリザーブはベースムーブメントのCal.2892A2に同じく約42時間である。SSケース、コンビモデル共に888本の限定販売とされるのは、ブヘラの創業年である1888年にちなんだものである。
ショパール「L.U.C オール・イン・ワン」
手巻き(Cal.L.U.C 05.01-L)。42石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約170時間。18KRG(直径46.00mm、厚さ18.53)。30m防水。世界限定10本。完売。
「L.U.C オール・イン・ワン」の名前の由来は、14もの機構をすべてこの1本に収めたことに由来する。2018年に写真の18KRGケースとプラチナケースがそれぞれ10本発売された。文字盤はゴールド製であり、これにアプライドバーインデックスやドーフィン針、そして12時位置にあるビッグデイトの開口部から放射状に広がる手彫りのギヨシェが合わせられている。なお、同作においてビッグデイトはパーペチュアルカレンダーという氷山の一角でしかない。文字盤側からはパーペチュアルカレンダー機構の一部として週や月表示、リープイヤー表示も見て取れる。さらにスモールセコンドの針を備えたトゥールビヨンや24時間表示までが備わるのだ。裏蓋側はさらに独特な仕様で、イクエーション・オブ・タイム、7日間スケールのパワーリザーブインジケーター、昼夜表示、日の出・日の入りの時刻、そしてL.U.C コレクションのホールマークであるムーンフェイズなどが集められる。
グラスヒュッテ・オリジナル「パノマティックルナ」
自動巻き(Cal.90-02)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KRG(直径40.00mm、厚さ12.70mm)。5気圧防水。214万円(税別)。(問)グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 Tel.03-6254-7266
ムーンフェイズを搭載したタイムピースからなる「パノマティックルナ」。グラスヒュッテ・オリジナルは同コレクションに独特の左右非対称のデザインを与えた。時分針とスモールセコンドのサブダイアルは文字盤9時位置側の垂直線上に並び、グラスヒュッテ・オリジナルではパノラマデイトと呼ばれるビッグデイト表示とシグネーチャーであるムーンフェイズ表示を3時位置側に配している。写真は2019年に発表されたモデルで、18Kローズゴールドの40㎜径ケースにつややかなガルバニック加工が施されたブルー文字盤とダークブルーのルイジアナアリゲーターストラップが合わせられている。ムーブメントはグラスヒュッテ・オリジナルの自社製自動巻きCal.90-02で、ザクセンの時計作りの伝統にのっとった特徴的なハイエンドの仕上げが施されている。
H.モーザー「パイオニア・パーペチュアルカレンダー MD」
手巻き(Cal.HMC808)。32石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約168時間。SS(直径42.8mm、厚さ11.3mm)。120m防水。世界限定50本。480万円(税別)。(問)エグゼス Tel.03-6274-6120
「パイオニア・パーペチュアルカレンダー MD」は3時位置にあるふたつの小窓が特徴的だ。ひとつは日付、もうひとつは月の表示である。月と日付表示の数字は別々のディスクで表示され、H.モーザーのフラッシュカレンダーシステムにより、瞬時に切り替わる。有名なフュメ文字盤上では、時分がリーフ状の針によって示され、スモールセコンドは6時位置にある。また約7日間(=約168時間)のパワーリザーブはアップダウンスケールとして9時位置で表示される。パーペチュアルカレンダーでは特に珍しく、カレンダー修正の禁則時間帯がないうえ、日付を戻すこともできる。リープイヤー表示はムーブメントは側に移動されており、シースルーバックから確認することが可能だ。42.8mm径のステンレススティール製ケースが内包するのは手巻きCal.HMC808で、H.モーザー独自の技術がふたつ搭載されている。つまり、プレシジョン・エンジニアリング製の「シュトラウマン・ヘアスプリング」とメンテナンスが容易な「インターチェンジャブル・エスケープメント」である。
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