Q:何をもって「マニュファクチュール」と定義していますか?
A:『クロノス日本版』では設計部門があり、地板や受けといった部品を自製できるメーカーを最低条件としています
時計関係者がよく使う言葉がマニュファクチュール。本来の意味はフランス語で工場や(手工業的な)製造所。しかしスイスの時計業界では、時計をほぼ完成体にできる工場を意味します。つまり、ムーブメントを自社で一貫製造できるメーカーを指すようになりました。対義語は、購入した部品を組み立てるエタブリスールです。
現在広く使われるようになったマニュファクチュールという用語。しかし、スイスでさえも明確な定義はないのです。最もゆるい定義は、ETAやセリタといったエボーシュムーブメントをそのまま使わないメーカーのこと。事実、マニュファクチュールを称するメーカーの中には、改造したエボーシュを搭載するメーカーが少なくありません。
・ムーブメント用のネジを作る「エルウィン」
・ヒゲゼンマイをはじめとする脱進調速機を製造する「アトカルパ」
・ムーブメントの設計ならびに組み立てを行う「ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ」
・ケースを作る「レ アルティザン ボワティエ(LAB)」
・文字盤製作の「カドランス・エ・アビヤージュ」
より厳格になると、部品を自社製造できるメーカーをマニュファクチュールと呼びます。地板や受けといった大物部品に加えて、歯車やカナといった小物部品まで製造できるメーカーは、マニュファクチュールと見なしていいでしょう。事実、『クロノス日本版』では、社内(もしくはグループ内)に設計部門があり、地板や受けといった部品を自製できるメーカーを、マニュファクチュールの最低条件と定めています。最も優れたマニュファクチュールは、素材自体を開発できるメーカーと言われています。しかし、素材までコントロールできるメーカーは、資本力のある大規模なメーカーに限られます。
以前ほどマニュファクチュールであることは重要ではない
なお、マニュファクチュールが製造したムーブメントを、一般的に自社製ムーブメントと言います。しかし、設計や製造を外部に委託したムーブメントにも優れたものが増えました。とりわけ、スケールメリットのない小メーカーは、現在多くが、マニュファクチュール(自社一貫生産)ではないムーブメントを載せています。好例は、MB&Fや、リシャール・ミル。マニュファクチュールでなくても優れたムーブメントが得られると考えれば、以前ほど、マニュファクチュールであることは重要でなくなった、と言えるでしょう。
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