高い完成度のファーウェイ製ウェアラブル、今後はあらゆるメーカーの脅威に/ファーウェイ「WATCH GT2」

テクノロジーの分野で知らぬ人はいないほどのジャーナリストが、本田雅一氏だ。その本田氏が、ウェアラブルデバイスについて執筆する本連載。今回はファーウェイが自社OSを搭載して販売する「WATCH GT2」を紹介。昨年レビューした初代「WATCH GT」のバッテリー持ちという利点はそのままに、よりブラッシュアップされた同作について語る。

WATCH GT2

本田雅一:文
Text by Masakazu Honda

ファーウェイ「WATCH GT2」

 webChronosで「ファーウェイ」という企業について書くことになるとは思わなかった。ご存知、中国の大手ハイテクノロジーメーカーだが、基本的には通信インフラ機器の開発に長けており、コンシューマー製品……ましてやウェアラブルデバイスで存在感を出すとは想像できなかった。

 しかしファーウェイのウェアラブルデバイスは、納得感のある製品ばかりだ。

 昨年に連載でも紹介したHUAWEI WATCH GTという製品に感心していた。アプリケーションの追加インストールこそできないものの、当初より必要なアプリは機能として導入されており、接続するスマートフォンはiOS、Andoridの両方に対応。

 しかもリーズナブルな価格の上、バッテリー持続時間はApple Watchが1.5日程度のとのころ、2週間も持続する。

 OLEDをディスプレイとして採用するスマートウォッチにもかかわらず、ここまでバッテリーを気にせず使えるものかと感心したのだ。今回、主役となるのはその後継製品であるHUAWEI WATCH GT2だが、同時にHUAWEI Band 4 Proも紹介したい。この2製品は相互補完の関係にあり、同時に所有していると使い勝手が高まるからだ。

WATCH GT2

ファーウェイ「WATCH GT2」
「WATCH GT」の後継モデルとして2019年11月に発売。軽量で取り回しに優れる42mmケースモデル(写真左と中右)とバッテリー容量の大きな46mmケースモデル(写真中左と右)がラインナップされる。独自開発のOSを搭載しており、iOSとAndroidどちらの搭載機種とペアリングが可能だ。AMOLEDディスプレイ。5気圧防水。Bluetooth 5.1BLE/BR/EDR。Android4.4以降、iOS9.0以降対応。42mmモデル:2万2800円〜(税別)。46mmモデル2万4800円〜(税別)。

ウェアラブルデバイス市場に焦点を当てて独自性を引き出す

 スマートフォン端末でもここ数年、急速にその存在感を増してきたファーウェイ。このメーカーは、もともと電話網やインターネット網を構築する通信インフラ用の機器で名を知られた会社だったことをご存知だろうか。

 その後、WiFiルーターなどで名を知られるようになったものの、派手さはあまりないが、通信インフラを支える大企業だった。特に業界筋には評価され続けてきた会社だ。

 そんなファーウェイがメジャーブランドになったのは、スマートフォン端末の開発を始めたからに他ならない。携帯電話向け基地局など、通信インフラ機器を開発するには、単なる設計技術や生産能力だけではなく、技術面での深い知識やキーデバイスの開発能力、ソフトウェア開発能力なども必要だ。

 と、いきなりお堅い話になったが、要はハイテク機器を開発するために必要な技術を、そもそもファーウェイは持っていた。その上で端末開発に力を入れ、とうとう台数ベースではアップルを追い抜く位置にまで成長したのだ。

 そんなファーウェイがウェアラブルデバイスを本気で開発したらどうなるのか。その答はこの2製品に表現されている。

 同社はスマートフォン向けに「Kirin」というSoC(システム統合型チップ)を自社開発しているが、ウェアラブルデバイス向けにも「Kirin A1」というチップを開発した。コンパクトに必要最小限のデバイスを集約し、必要な機能を省電力に動かすための基礎を作った。

WATCH GT2

 アップルも各デバイスごとに独自SoCを開発することで、ハードウェア、ソフトウェアの両面で付加価値を出そうとしているが、こうした手法は電子機器では常套手段と言える。しかしこの常套手段を使うためには、大量の製品を販売できなければならない。自社製品専用に半導体チップを開発しなければならないからだ。

 このため、どんな高級ブランドでも……いや、少量生産の高級ブランド品であるほど、ウェアラブルデバイスのプラットフォームには“汎用品”を使う必要がある。

 ファーウェイがこのハードルを越えることができるのは、ひとえに中国という大市場におけるトップ企業であるこことが大きい。その上で技術力、生産能力があるため、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによる差異化ができるわけだ。