世界中で推奨されている外出自粛とリモートワーク。それは現地取材を命題としてきた各メディア媒体にとっても例外ではない。しかしWatchTime編集部のマーク・ベルナルドはリモートワークを導入したことによって、むしろ世界各国の時計業界関係者への取材頻度がより多くなったことに気付いた。しかしこれは同時に、アポイントメントの際に世界中の時差を考慮する必要があることを意味する。そう、リモートワーク時こそ、ワールドタイマー活躍の場なのだ!! そう考えた彼はボール ウォッチの「エンジニアマスター Ⅱ ダイバー ワールドタイム」のレビューを始めた。
ボール ウォッチ「エンジニアマスター Ⅱ ダイバー ワールドタイム」
Text by Mark Bernardo
2020年6月公開記事
実はリモートワーク時こそ時差計算が必要
長く終わりが見えなかった封鎖による孤立から、徐々に回復しつつある。自宅にこもり、世界の時計業界についてのレポートを書き続け、同僚とつながりをもち、アメリカそして世界の各地とリモートで、もしかしたら前よりもコンタクトを取ってきたのかもしれない。
世界の24の標準時間帯の時間を知るのに、シティリングのベゼルを回すだけで時刻を知ることのできるワールドタイムの時計は、長い在宅勤務の状況において理想的なタイムピースであろう。コロナウィルスのせいで、検証できる実機のない状況において、幸運にも普段より長く手元においてレビューできる時計があった。ボール ウォッチの「エンジニアマスター Ⅱ ダイバー ワールドタイム」である。
ステンレススティール製ケースは直径42mmで、サテン仕上げと一部分にポリッシュ仕上げが使用される。ラグは短く切られており、わずかにカーブするため手への収まりが良い。
刻みのついたベゼルはダイビングスケールと前出の24都市シティリングの役割を兼ね備えている。つまり、ベゼルは逆回転防止だ。回転する際の操作音は静かで、誰かとZoom会議をしている間に、時間帯の異なる都市の時刻を確認しようとしても邪魔にならない。
ふたつのリュウズガードに間にしっかりとねじ込まれたリュウズの表面には、スタイリッシュな“RR”のレリーフが刻まれている。これは1891年にウェブ・C・ボールによって創業された同社が、世界に知られるきっかけとなった「Rail Road watch」から取られている。
ワールドタイム機構はベゼルで調整
このモデルの特徴であるワールドタイム機能を操作するためにベゼルを回転させると、ブラックカラーの見返し部分にある24のタイムゾーンを表す都市の名前が移動する。そして昼夜がホワイトとブラックで分けられたシティディスクに組み込まれた24時間スケールでそれぞれの時刻を読み取る。
つまりロンドンにいて、ドバイで午後1時に行われる電話会議に出席という場合は、操作しやすいベゼルをつかんで回転させれば、アラームを午前9時前にセットすればいいと教えてくれるのだ。
全てのボール ウォッチで見られるように、このモデルでもハイレベルの夜光は特筆すべきだ。マイクロガスチューブにふんだんに使われたトリチウムが文字盤の多くの要素に見られる(わずかに放射性があるが、ここで使用されるごく微量では人体への影響はない)。
現在、夜光塗料で視認性を高めようと思った時は多くの場合、たっぷりとスーパールミノバが塗布されるが、トリチウムには他とは異なる利点がある。
今回のテスト機は必要以上に自然の中でのハイキングで太陽光を浴びたが、自発光のため、特に他に光源を必要としないのである。
剣状の時分針と針先に長方形があしらわれた秒針は、明かりを落とした環境下では、明るいオレンジとなる。時計を多目的なモデルと位置付ける他の要素は、デイデイトのコンビネーションが別々にリュウズで調整できる点だ。一段引きの位置でリュウズを(時計回りに)進めると、3時位置の日付表示を1日ずつ進められる。また、この位置でリュウズを逆回しにすると曜日表示が進むのである。近くでよく見ると曜日表示は英語とスペイン語両方の略称が使われている。
前述のようにダイバーズウォッチとしての側面も持つ同機は、300mの防水性能を保持する。ケースバックに縁どられたサファイアクリスタルから鑑賞できるのは、C.O.S.C.クロノメーター取得のCal.RR1501CでETA2836-2をベースとしている。装飾はほとんどされていないが、ローターにはコート・ド・ジュネーブ仕上げが施されている。この自動巻きムーブメントは2万8800振動/時、完全に巻き上げた状態で約38時間のパワーリザーブを有する。
時計に付属するのはブラックラバーストラップにチェッカーボードのようなモチーフが施されたもので、工業的外観をもったステンレススティール製ピンバックルが小さなネジで留められている。
多機能かつ戦略的な価格
エンジニアマスター Ⅱ ダイバー ワールドタイムは多くの機能を小さなサイズとリーズナブルな価格帯に納めているが、少々機能を詰め込みすぎかもしれない。日付及び曜日表示は、サイズが小さすぎるため読み取りが難しい。またベゼルはダイビングスケールとシティリングのふたつを持ち、さらにダイアル外周には24時間スケールの時刻ディスクまであるため、文字盤外周が混みあった印象であり、メインの時刻表示も窮屈そうである。
ただし、これは逆を返せばワールドタイムの混みあった外観を好む向きには、世界を旅するメンバーに迎え入れる要素にもなりうる。なによりもこれだけ多機能ながら、28万円というプライスタグを付けているのだから。
自動巻き(Cal.RR1501)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径42mm、厚さ14mm)。300m防水。28万円(税別)。
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