一流のセレブたちは一体どんな腕時計を選ぶのか? 世界のセレブたちのワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は、キング・オブ・ハリウッドことスティーヴン・スピルバーグ監督が選ぶ腕時計2本を紹介しよう!
スティーヴン・スピルバーグ
弱冠21歳でユニバーサルと契約し、そのわずか数年後には人気ドラマ『刑事コロンボ』第3作目で監督を務め、カーチェイス映画『激突!』で劇場監督として世界デビュー。そこから半世紀にわたり、2020年で74歳を迎える現在まで映画界の頂点に君臨し続けているのが、今回紹介するスティーヴン・スピルバーグ監督だ。
『ジョーズ』『E.T.』『インディ・ジョーンズ』や『ジュラシック・パーク』シリーズといった娯楽性の高い作品を撮る一方、スピルバーグは『シンドラーのリスト』や『プライベート・ライアン』『リンカーン』といった社会派ドラマでリアリズムを追求し、歴史的変遷の瞬間を描き続けてきた。
2018年のSFアドベンチャー映画『レディ・プレイヤー1』は、スピルバーグの80年代ポップカルチャーへの愛が溢れた作品であり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『シャイニング』といった名作映画の要素から、機動戦士ガンダムやハローキティなど日本のアニメやゲームのキャラクターまで多数登場する。このヒットによって総額で世界興行収入100億ドル以上を稼いだ史上初めての監督となった。
アメリカのライフ誌には"アメリカのホメロス"と呼ばれた稀代の映画監督、スピルバーグ。腕時計にはどのようなものを選ぶのだろうか?
今回は2本の腕時計を紹介したい。
まず挙げた写真は、2019年に行われたアカデミー賞のアフターパーティーで、友人の女優グレン・グローズと自撮りをする彼の姿である。写っている腕時計は、カルティエの「ドライブ ドゥ カルティエ エクストラフラット」だ。
カルティエ
「ドライブ ドゥ カルティエ エクストラフラット」
「ドライブ ドゥ カルティエ」は、タキシードからモードやカジュアルまで幅広いファッションに合わせられる腕時計、つまりさまざまなシーンを謳歌する男性をイメージしてカルティエが2016年から展開するコレクションだ。スピルバーグ着用モデルはムーブメントにピアジェ製手巻きキャリバー430 MCを搭載する、ラインナップの中でも際立って薄型のドレスウォッチである。
カルティエは世界のセレブリティが正装する際に最も多く選ばれる腕時計ブランドのひとつだといっても過言ではない。しかしその多くがタンクやサントスの正統派デザインであるなかで、このぽってりと独特な丸みを帯びたクッション型ケースのドライブ ドゥ カルティエは異なった種類の存在感がある。所有者の程よく力の抜けたキャラクターや遊び心を表出させるようだ。
ルイ・ヴィトン
「タンブール オトマティック GMT ブラウン」
もう1本、パーティーなどハレの場ではなく、スピルバーグが日常的に愛用している姿を見られた腕時計を紹介したい。ルイ・ヴィトンのアイコニックウォッチ「タンブール」だ。
16世紀に製造された太鼓(=タンブール、tambour)型の旅行用時計へのオマージュとして、2002年よりルイ・ヴィトンが展開するタンブール。スピルバーグの写真のいくつかには、この最初期に作られた1本のタンブールが写っていた。ブラウンカラーで、現在地と異なる場所の時間つまり第2時間帯を表示するGMT機能を有するモデルだ。普段着で撮られた写真のほか、例えばスピルバーグへのインタビューを取りまとめて2012年に出版された「Steven Spielberg: A Retrospective」(邦訳版タイトルは『スピルバーグ その世界と人生』)の表紙でも、この時計が左手首をばっちりと飾っている。
リチャード・シッケル/著 大久保 清朗、南波 克行/翻訳
記念すべき本にも写す前提で選んだろうことから、スピルバーグがいかにこの時計を気に入っていたかが伺えるようだ。また過去・未来といった時空を超える旅に誘う作品を多く手掛けた彼にとって、「旅」×「時間」というタイムトラベラーのようなストーリーを持つタンブールは心引かれるものだったろうと考えるのは、穿ち過ぎではない気がしている。
スピルバーグは多様な世界観を巧みに演出し、観る人の心理を操る映画監督だ。なぜこれらの時計を選んだだろうか? その正解は分からないが、考察を巡らせる時間はひときわ面白い。
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