オメガ「スピードマスター」以外で宇宙を旅した歴史上重要な時計6選

FEATUREWatchTime
2021.08.09

時計の愛好家のみならず、バズ⁠・オルドリンが月着陸船イ⁠ーグルの中でオメガのスピードマスター(Ref.105.012)を着用する写真は広く知られたものだろう。1969年7月21日、NASAはスピードマスターが月面で着用された最初の時計となったことを公式に認めた。ただこの有名なクロノグラフは宇宙に旅立った最初の時計でも、月へ行った最後の時計でもない。今回は無限の宇宙で特別な役割を果たした歴史上重要な6本のタイムピースを紹介する。

(C) NASA
月面着陸ミッションに挑むバズ⁠・オルドリンとスピードマスター。この写真は着陸の前日である1969年7月20日にニール・アームストロングが撮影した。
Originally published on watchtime.com
Text by Jens Koch
2020年7月掲載記事

ホイヤー
ストップウォッチ「2915A」

2915A

ジョン・グレンが着用したホイヤーのストップウォッチ「2915A」。生産終了。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054

 アメリカ人宇宙飛行士ジョン・グレンはホイヤーのストップウォッチRef.2915Aを宇宙服の上からラバーバンドで着用。このストップウォッチは1962年2月22日、宇宙船フレンドシップ7号で、グレンとともに4時間半をかけて地球周回軌道を3周している。このミッションで、ホイヤーのストップウォッチは宇宙空間における初のスイス時計となり、宇宙飛行士ユーリー・ガガーリンが着用したロシアの「シュトゥルマンスキー」に続き、宇宙飛行士が着用した2本目の時計となった。Ref.2915Aの生産本数は少なく、現在では所在をほとんど確認できていない。2012年には、グレンの偉業から50周年を記念し、タグ・ホイヤーからRef.2915Aへのオマージュを捧げる「カレラ1887クロノグラフ スペースX」が発表された。


ブライトリング
「ナビタイマー コスモノート」

ナビタイマー コスモノート

デビュー50周年を記念して2012年に発表された、ナビタイマーRef.809の復刻となる「ナビタイマー コスモノート リミテッド」。直径43mmのステンレススティールケースには手巻きムーブメント(Cal.B02)を搭載。生産終了。(問) ブライトリング・ジャパン Tel.03-3436-0011

 1962年5月24日。アポロ計画の前身となるマーキュリー計画によって「オーロラ7ロケット」に乗船し、衛星軌道を3周したアメリカ人宇宙飛行士スコット・カーペンターが着用していたのは、ブライトリング「ナビタイマー」Ref.809だった。ステンレススティールケースのこの時計の文字盤には、昼夜を知らせるために特別に24時間表示へと調整が加えられた手巻きキャリバー・ビーナス178が搭載された。それから50年が経った2012年、ブライトリングは同モデルの限定復刻版を発表。「ナビタイマー コスモノート リミテッド」と名付けられたこの時計は1962年のモデル同様に、24時間表示、航空用回転計算尺、手巻きムーブメントを搭載した。


セイコー
「ファイブスポーツスピードタイマー」

ファイブスポーツスピードタイマー

(C) Heritage Auctions
セイコー「ファイブスポーツスピードタイマー」、ウィリアム・ポーグは現代的な自動巻きクロノグラフの祖であるキャリバー6139の搭載機を着用して地球を1214周した。生産終了。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012

 セイコーが1969年に発表した世界最初期の量産タイプの自動巻きクロノグラフは、宇宙へも進出を果たしている。1973年にNASA宇宙飛行士のウィリアム・ポーグが「スカイラブ4」計画の遂行にあたり、サターンロケット内で着けていたのが「ファイブスポーツスピードタイマー」だった。彼の私物であるこの時計は左手首に、右手首にはNASA公認腕時計が着けられた。当時の最長記録となる84日間の宇宙滞在の後、ファイブスポーツスピードタイマーはスカイラブ4とポーグとともに帰還を果たした。


ロレックス
「オイスター パーペチュアル GMTマスター」

オイスター パーペチュアル GMTマスター

1954年に登場した「オイスター パーペチュアル GMTマスター」。アポロ計画で最後の月面着陸を行ったユージン・サーナン、ロナルド・エヴァンスらが着用したのは第2世代のRef.1675だった。生産終了。

 スピードマスターはNASAの公式時計であるが、宇宙飛行士の中には私物の時計を着用していた者もいる。例えばアポロ計画における最後の飛行、1972年のアポロ17号に登場したユージン・サーナン、ロナルド・エヴァンスが着用したのはロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスター」だった。GMT針と、赤と青で昼夜を区別した両方向回転24時間ベゼルを備えるこのファーストモデルは1954年に登場した。83年にはメインの時針の調整方法を改良した「GMTマスターⅡ」が発表され、その後現在までオリジナルのフォルムを踏襲しながら進化し続けている。


ジン
「140.S」

140.S

ジンのクロノグラフ「140.S」は、直径41mmのステンレススティールケースを採用。仕上げにはマットブラックのPVDコーティングを施した。生産終了。(問)ホッタ Tel.03-6226-4715

 1985年、ドイツの物理学者であり宇宙飛行士でもあるラインハルト・フラーは西ドイツ航空宇宙局が中心となって行ったスペースラブ D1 ミッションの際に140.Sを装着して宇宙に飛び立った。このクロノグラフに搭載されていたのは、現在は生産を終了したレマニア 5100ムーブメントだ。現行モデル140.ST.Sでは、センター配置の60分積算計を備えるバルジュー 7750をモジュールとするジンのキャリバーSZ01を採用している。


フォルティス
「オフィシャル・コスモノート・クロノグラフ」

オフィシャル・コスモノート・クロノグラフ

1994年、フォルティスの「コスモノート クロノグラフ」Ref.602.22.11が宇宙へと旅立った。レマニア5100を搭載するこの直径38mmの時計は、ロシアのミール宇宙ステーションで使われた最初の時計となった。生産終了。(問)ホッタ Tel.03-6226-4715

 1994年、ロシア宇宙局(現・国営宇宙公社ロスコスモス)による宇宙探査で飛行士に使用された時計は、レマニア5100ムーブメントを搭載する直径38mmのフォルティス「コスモノート クロノグラフ」だった。実はフォルティスのクロノグラフは元々、スペースアートプロジェクトの限定モデルとして製作されたモデルが2年前に無人船で宇宙に飛び立っていた。そのプロジェクトが評価され誕生したのが公式装備品の「コスモノート クロノグラフ」である。ロシアの宇宙飛行士たちに20年以上愛用され、宇宙飛行士がISS国際宇宙ステーションに工具を置き忘れた時などは、間に合わせのハンマーとしての役割を果たしたこともある。2003年からは、バルジュー 7750を搭載する「オフィシャル・コスモノート・クロノグラフ」として後継機を展開している。


オメガの魅力に迫る。特徴やおすすめモデル

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