ブレゲを極める Timeless Style of Breguet(後編)

2020.08.04

マリーン〝黄金時代〟

1990年に誕生した「マリーン」は、2004年のリニューアルでスポーティールックを強調した新たなコレクションへと生まれ変わったが、それから14年後の 2018年にさらにフルモデルチェンジされた。完全に新しいデザインをまとって、3針、クロノグラフ、アラームの3種類が揃って発表された。 さらに2020年は、チタンのブレスレットモデルに続いてゴールドの全モデルにブレスレットを投入。 重厚なゴールド素材によってラグジュアリー感が格段に増し、「マリーン」に文字通り“黄金時代”が到来した。

奥山栄一:写真 Photographs by Eiichi Okuyama
菅原 茂:文 Text by Shigeru Sugawara

 1990年に誕生した初代から数えて3代目となる新世代の「マリーン」は、2018年のフルモデルチェンジに際して、従来とはイメージを異にする斬新なデザインが採用された。

 一見して分かるのは、時計のフェイスを成すダイアルのディテールだ。蓄光のローマ数字やブレゲ針、ブレゲのイニシャルを海洋で用いる国際信号旗の「B」で表現した秒針のアクセント、海を象徴する波模様のギヨシェ彫りなどである。クラシカルなブレゲのデザイン・コードはモダナイズされ、エレガントな余韻を残しつつ、スポーティーでインフォーマルなデザインへと様変わりした。

 ダイアルと並んで、ブレゲが新生「マリーン」を開発するにあたって、おそらく最も計算を尽くしたと思われるのがケースとラグの形状だ。新しいケースは、上下に太いセンターラグが突き出しているのが特徴で、船の係留具からインスピレーションを得たというシリンダー状のバーでストラップをしっかり固定するようになっている。この印象的なセンターラグの形状は明らかにブレスレットの中コマを連想させる。この事実が示唆するように、新生「マリーン」は当初からブレスレットウォッチを念頭に置いてデザインされたに違いない。

 高級時計ブランドが力を入れるラグジュアリースポーツウォッチの分野では、以前からケース一体型のブレスレットが重視されてきた。ブレスレットは時計本体を腕に装着するための単なる付属品なのではなく、それ自体にも個性的なデザイン性や機能、そして上質感が求められるのがラグジュアリースポーツウォッチの世界だ。もちろん、ブレゲもそれを熟知している。

Marine 5517

新世代「マリーン」の中で最もシンプルなのは 自動巻き中3針の「5517」モデルだが、 ケースと滑らかに連続するブレスレットによって 「マリーン」のデザインは際立ち、 独特のスポーティールックが存在感を増した。 普段使いをはじめ、着用シーンを選ばず ブレゲのラグジュアリーが楽しめる。

マリーン 5517

マリーン 5517
チタン(右)はサンバースト仕上げのス レートグレー、ローズゴールド(中)は波 模様のギヨシェ彫りを施したシルバー、 ホワイトゴールド(左)は、同じく波模様 のギヨシェ彫りを施したブルー。素材に よってダイアルのカラーと装飾が違い 印象も異なる。自動巻き(Cal.777A)。 26石。2万8800 振動/ 時。パワー リザーブ約55時間。直径40mm、厚 さ11.5mm。10気圧防水。Tiモデルは 216万円、18KRGと18KWGモデルは 各531万円。

Marine Chronographe 5527

新世代「マリーン」コレクションの中で、愛好家にとって技術の点で興味深いのは、クロノグラフの「5527」だろう。このモデルが搭載する自社製ムーブメントは、最新のテクノロジーでアップデートされたCal.582QA。精巧なメカニズムと洗練されたデザインが新たなブレスレットによって一段と引き立つ。

マリーン クロノグラフ 5527

マリーン クロノグラフ 5527
素材違いのブレスレットモデルは、ホワイトゴ ールドは波模様のギヨシェ彫りを施したブルー ダイアル(左)、ローズゴールドは波模様ギヨシェ彫りのシルバーダイアル(中)、チタンはサンバースト仕上げのスレートグレーダイアル(右)を組み合わせる。自動巻き(Cal.582QA)。 28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約 48時間。直径42.3mm、厚さ13.85mm。10気 圧防水。18KWGと18KRGは各610万円。Tiは261万円。

Marine Alarme Musicale 5547

「マリーン」コレクションの3本柱のひとつは、ブレゲが開発したオリジナルの複雑機能と実用性を併せ持つトラベルウォッチである。チャイム音で知らせるアラーム機能と第2時間帯表示を融合したその複雑ムーブメントは実にユニーク。新たにゴールドブレスレットを加え、ワン&オンリーの個性が海洋のテーマや世界の旅を象徴的に表現する。

マリーン アラーム ミュージカル 5547

マリーン アラーム ミュージカル 5547
素材違いのブレスレットモデル。ローズゴールドは波模様のギヨシェ彫りを施したシルバーダイアル(左)、ホワイトゴールドは波模様のギヨシェ彫りを施したブルーダイアル(中)、チタンはサンバースト仕上げのスレートグレーダイアル(右)を組み合わせる。自動巻き(Cal.519F/1)。36石。2万8800 振動/ 時。パワーリザーブ約45時間。直径40mm、厚さ13.05mm。5気圧防水。18KWGと18KRGは各653万円。Tiは337万円。

 2018年の刷新モデルの発表時にはチタン、ホワイトゴールド、ローズゴールドという3種類のケース素材に対して、まずラバーとアリゲーターストラップを組み合わせてスタートした新生「マリーン」だが、翌年には早速、チタンの3針、クロノグラフ、アラームの全モデルにブレスレットモデルを投入した。チタンの平面部に繊細なヘアライン、角を落とした面取り部にはポリッシュ仕上げを施した3列のブレスレットは、ケースと完全に一体となった美観や軽快な装着感も素晴らしいが、実用面での工夫も凝らされていて、すべてのコマが分解でき、メンテナンスの際に洗浄や仕上げが1コマ単位で可能というから秀逸だ。

 2020年の今年、チタンに続いてゴールド製の3針、クロノグラフ、アラームの全モデルにブレスレット仕様が追加され、ホワイトゴールドケース×ブルーダイアル、ローズゴールドケース×シルバーダイアルという組み合わせは変えずに、それぞれにケースと同素材のゴールドブレスレットを装備した。独特な形状のラグによってケースと見事に一体化を成し遂げた3列ブレスレットには程よい重厚感があるにもかかわらず、手首のサイズを選ばずにフィットする形状を持つ。また、平面のヘアライン仕上げと面取り部のポリッシュ仕上げ、そして、すべてのコマが分解できる点などは、チタンブレスレットとまったく同じである。

 こうしたブレスレットモデルの登場によって、「マリーン」は3針、クロノグラフ、アラームのすべてでバリエーションが広がった。その充実したラインナップは、ラグジュアリースポーツウォッチを好むユーザーにとっては間違いなく魅力的な選択肢となり得るだろう。

ゴールドモデルのダイアルは、海にちなんで波をイメージした新しいパターンのギヨシェ彫りが施されているが、これを実現するのが最新のマシン。波のような曲線の不規則な連なりは、従来の機械では表現が困難だったが、新しいマシンではそうした複雑な模様を彫り込むことができる。これもまた、ブレゲにおける伝統をふまえた革新の一例だ。

Marine Haute Joaillerie 9509 Poseidonia

「マリーン」コレクションには、贅沢に宝石で彩った女性用のハイジュエリーモデルも新たに加わった。その名は「ポセイドニア」。地中海に生息する貴重な海草種をモチーフにしたダイアルは、カラフルな宝石とマザー・オブ・パールが象徴的なアラベスクを織り成す。ケースを埋め尽くすダイヤモンドも豪華の極み。海がテーマのマリーンを高度なメティエダールでポエティックに描く。

マリーン ハイジュエリー 9509 ポセイドニア

マリーン ハイジュエリー 9509 ポセイドニア
海底で揺らめく海草のモチーフは、「自然の宝物」と呼ばれるポシドニア・オセアニカをイメージ。ダイアルはマザー・オブ・パールのマルケトリを駆使した絶妙な作り。ベゼルはダイヤモンド、ブルーをはじめとする各色のサファイア、アメシスト、ツァボライトによるグラデーションが実に素晴らしい。自動巻き(Cal.591C)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KWG(直径35.8mm、厚さ10.46mm)。2772万円。

フルート装飾のケースバンドやリュウズもバゲットカット・ダイヤモンドで埋め尽くし、18Kゴールド製のローターにはタヒチ産マザー・オブ・パールを貼り、半円形の淵に31個のダイヤモンドを真珠の粒のように配し、ケースバックから見える機械式ムーブメントも華麗なジュエリーに仕立てた。

「ポセイドニア」はバゲットカットの宝石が異なる4 種類を発表。上のサファイアがメインのモデルのほかに、すべてがダイヤモンドのモデル(右)2993万円、ルビーをメインにダイヤモンドとサファイア各色を用いたモデル(中)2772万円、エメラルドをメインにツァボライト、ダイヤモンド、サファイア各色を用いたモデル(左)2993万円。また、バックルもベゼルと同様に、ダイヤモンドもしくは宝石のグラデーションをあしらう。


Contact info: ブレゲ ブティック銀座 ☎03-6254-7211

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