世界を驚かせるグランドセイコー史上最高ムーブメント(後編)

2020.08.06

Sport Collection Spring Drive 5 Days

セイコーの独創性を象徴するのが、第3のエンジンであるスプリングドライブだ。市販化されたのは1999年のこと。しかし、グランドセイコーへの搭載は2004年を待たねばならなかった。それから16年。Cal.9R65を熟成させたセイコーエプソンの技術陣は、次世代の基幹キャリバーを完成させた。その記念すべき初の搭載モデルがダイバーズウォッチなのには、明確な理由がある。

前編から読む
https://www.webchronos.net/features/50751/

グランドセイコー SLGA001

SLGA001
こちらは世界限定700本の仕様違い。600m防水のダイバーズウォッチながら、リュウズのチューブを含めて外装は完全に分解可能。ケースの直径は46.9mmだが、ラグを短く切り、ケースを裏蓋側に向けて絞ってあるため、装着感は快適だ。基本スペック、価格、発売時期は右モデルに同じ。グランドセイコーブティック、グランドセイコーサロン、グランドセイコーマスターショップ限定モデル。
グランドセイコー SLGA003

SLGA003
新規設計のCal.9RA5を搭載したモデル。グランドセイコーらしい仕上げに、600m飽和潜水仕様や高い視認性を両立している。自動巻きスプリングドライブ(Cal.9RA5)。38石。パワーリザーブ約120時間。ブライトチタン(直径46.9mm、厚さ16mm)。600m飽和潜水用防水。付け替え用シリコンストラップ付属。グランドセイコーブティック限定モデル。国内限定60本。115万円。2020年11月下旬発売予定。
奥山栄一、三田村優:写真 Photographs by Eiichi Okuyama, Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

 機械式腕時計の大トルクとクォーツ腕時計の高精度を両立したスプリングドライブ。この傑出したムーブメントが、グランドセイコーの躍進を支えてきた一因であることは間違いない。その次世代機に当たるのが、キャリバー9RA5である。

 このムーブメントは既存の9R系に比べてパワーリザーブが約1・66倍に延びただけではない。ワンピースセンターブリッジの採用で耐衝撃性が高まったほか、温度補正機能を加えたことで温度変化にも強くなった。また、9SA5同様、ムーブメント全体に部品を分散させることで、薄型化に成功した。単なるパワーリザーブの長い9Rではなく、今後のグランドセイコーを支える基礎体力の高いムーブメント。こういった個性を強調すべく、9RA5が、まずはダイバーズウォッチに採用されたのは当然だろう。

 グランドセイコーのダイバーズウォッチは、頑強な外装と高い視認性に特徴がある。中でも9RA5を搭載した「スポーツコレクション スプリングドライブ 5 Days」は、飽和潜水対応の600m防水と、耐食性の高いチタンケース、そしてエクステンションを内蔵したバックルを持つ、プロフェッショナルユースにも対応できるモデルとなった。加えて、このモデルはグランドセイコーならではの優れた仕上げを持つ。

 プロフェッショナルが使えるタフネスと高級腕時計ならではの質感を両立した「スポーツコレクション スプリングドライブ 5 Days」。9RA5という新しい心臓は、グランドセイコーの可能性をさらに押し広げようとしている。

(左)文字盤にグランドセイコーブルーを採用したのはSLGA001。文字盤表面に半ツヤのラッカーを吹いているが、強い光源下でも文字盤はホワイトアウトしない。
(右)深緑の文字盤と見返し部の黄色が印象的なSLGA003。文字盤表面の仕上げは研ぎ上げたポリッシュラッカー。しかし、わずかにツヤを落とすことで視認性を高めている。

(左)文字盤と針の間隔も詰められている。あえて詰められるのは、ショックを与えても歪まないという自信の現れだ。
(右)本作が高級機であるゆえんが、デイトリングと文字盤のクリアランスの狭さ

(左)600m防水に相応しい重厚感のあるリュウズ。写真が示すように、ザラツ研磨仕上げのケースは極めて複雑な形状を持っている。
(右)回しやすくするため、大ぶりな刻みが与えられたベゼル。しかし、袖口を傷めないよう、エッジを落とす配慮が見られる。