グランドセイコーの時計はどのぐらいの頻度でオーバーホールする?

FEATUREその他
2020.12.29

グランドセイコーの時計は、長い時間をともに歩めるデザインとクオリティを兼ね備えた一流品だ。そのためにも欠かせないのがオーバーホールである。オーバーホールの必要性や適切な頻度に加え、グランドセイコーが実施するサービス内容について解説しよう。

オーバーホールはなぜ重要なのか?

ジャンルを問わず、一生ものとして手に入れたアイテムを大切に使い続けるためには行うべきことがある。時計で重要なのがオーバーホールだ。

オーバーホールという言葉を耳にしたことがあっても、どのようなものか、具体的には理解していない人も少なくないのではないだろうか。

なぜオーバーホールが必要で、どのような作業を行うものなのか、その内容について改めて整理しておこう。

オーバーホールの必要性

オーバーホールは、日本語では分解掃除と言われる。修理とは異なり、時計における定期検診のようなものだと考えれば良い。

時計のケース内には、多数の部品が収まっている。それらが緻密に組み立てられることで規則正しい動作を生み、正確な時を刻んでいる。

とはいえ、時計は使い続けるうちにいろいろな変化が生じてくる。劣化した内部のオイルが広範囲に伝わって汚れとなるほか、連動する部品が摩耗したり、各部の劣化などが起こったりすることで、故障の原因にもなり得るのだ。

時計が不具合を起こす前に分解して内部を確認し、不適な部分があれば良好な状態へと調整する。グランドセイコーのような高級時計のみならず、一般的な時計も含めて、オーバーホールは快適な動作を維持するために、有効かつ不可欠なものなのだ。

オーバーホールの流れ

オーバーホールとは、どのように行われるものなのか。一般的な流れを説明しよう。

分解する前にまず外観をチェックし、作動、防水性能、ガラスやストラップの傷などの確認から始める。その後、ケースを開けてムーブメントを分解し、各部に不具合がないかを確かめる。

ここで異常などを発見すると、調整または修理を行う。また、劣化や消耗しているパーツがあれば交換となる。

不具合が生じていなくても、オイルなどによる汚れは見られる。それらは薬品などを用いた専門的な洗浄方法で落としていく。

洗浄後、注油しながら各部を正確に組み立て直し、表面の傷などを研磨して蘇生したケースやバックル・ストラップなどを装着し、外観や防水性能などの合否判定へと進む。

そして、ゼンマイを巻き上げ、日付設定や運針動作のチェックといった最終確認を経て終了となる。

9Sメカニカルは約200〜300点ものパーツで構成される。不具合を防ぎ、高い精度を長期にわたって維持するためにも、定期的なオーバーホールは欠かせない。


オーバーホールの頻度はどれくらい?

愛着ある時計を長持ちさせるために不可欠なオーバーホールだが、どれくらいの頻度で行うべきものなのか。グランドセイコーのようにムーブメントが複数あるブランドも少なくない。ムーブメントのタイプ別に頻度について説明する。

一般的には3〜5年に1度

多くの機械式時計では、快適な動作を保つために3~5年に1度のオーバーホールが望ましいと考えられている。

それ以上長期間に渡って放置してしまうと、例えば潤滑油が劣化して部品の著しい摩耗を生み、場合によっては故障を引き起こす可能性もある。

また、ケース内への水の侵入などを防ぐパッキンなども経年劣化は避けられない。これも、放置してしまうと防水機能の低下などにつながってしまう。

それゆえに各部の耐用期間内でのチェックは大切であり、3~5年に1度は実施すべきなのだ。

クォーツ時計の場合は4年に1度

一方でクォーツ時計は、電池とモーターを用いて駆動する。そのため、機械式時計のようなオーバーホールはいらないと考えている人も多い。

たしかに、電源で動く動力部に関してはオーバーホールが不要であることに間違いはない。だが、アナログ表示のクォーツ時計であれば、その針の動きは歯車によるものだ。

歯車の動きをスムーズにして摩耗を抑えるには、オイルが必要になる。そのような部分については、機械式時計と同様に劣化が起こるため、やはりオーバーホールは必要なのだ。

もっともオーバーホールの間隔は、機械式時計より長くても問題は生じにくい。4年に1度ほど行うことを目安とすると良いだろう。

9Fクオーツ

多くのクォーツ時計と異なり、グランドセイコーの9Fクオーツは、職人によって手作業で組み上げられ、高い精度を維持している。ゆえに、クォーツ時計と言えどもオーバーホールは不可欠なのだ。

使い方によっても頻度は異なる

機械式時計やクォーツ時計それぞれのオーバーホールの適切な頻度について触れてきた。ただし、使い方によって、その間隔は異なることも知っておきたい。

身に着ける人によって、時計の使い方はまちまちだ。仕事やプライベートを問わず常に愛用する人もいれば、休日にのみ着用する人もいるだろう。

着用時間が長くなれば、それだけ環境の変化も起こる。汚れが付着するのはもちろんのこと、気温の変化にさらされ、風雨にあたるなどの機会が増えれば、それだけ劣化を招く要因は増していく。

時計に負荷がかかってきたと感じたら、先述の頻度にこだわらず、時期を早めてオーバーホールを行うようにしたい。それが、大切な時計を長持ちさせることにつながるのだから。


グランドセイコーはコンプリートサービスで対応

グランドセイコーは、時計の品質の高さだけでなく、オーナーへのサービスも一流だ。その充実の内容を見てみよう。

内装修理・オーバーホール・ライトポリッシュ

コンプリートサービスとは、内装修理にオーバーホール、そしてケースやメタルバンドのつや出しなどを行うライトポリッシュがセットとなった、グランドセイコー独自の3年保証のサービスだ。

オーナーは、ホームページ上の申し込みフォームに沿って、オーバーホールや修理など希望するサービスを送信する。その後、送られてくる発送キットに時計を梱包し、返送すればよい。

依頼に基づき検品・問診表の作成を経て、見積もりが行われる。その見積もり額をオーナーが了承すると作業開始となる。

そして高度な技術を有した技師によって作業された時計は、申し込み時の住所宛てに返送され、オーナーの手に戻る。

費用や修理期間

コンプリートサービスにかかる費用は、サービス代に送料を加えた金額となる。依頼内容によって費用は異なるが、概算見積もり内ならすぐに作業開始、それ以上の金額の場合はオーナーに確認の連絡が入る。

修理期間は、必要な作業によって違うが、発送キットによる返送後、おおよそ3~6週間がひとつの目安となっている。

グランドセイコーのホームページから「SUPPORT」→「コンプリートサービス・修理」の順に進むと、サービス内容の具体的な説明が閲覧でき、申し込みボタンをクリックすると「グランドセイコー オンライン修理受付」から依頼できるようになっている。


オーバーホールで時計を長く使おう

時計のケースには、実に多数の部品が使用され、それらが精密に組み立てられている。それだけに、とてもナイーヴなケアも求められる。

お気に入りの時計をいつまでも使い続けたいならば、オーバーホールは不可欠だ。大切に扱い、長く愛用してほしい。



Contact info: セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012

川部憲 Text by Ken Kawabe


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