ジャガー・ルクルト2020年のモデル。ふたつの人気シリーズに新作

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2021.02.02

ジャガー・ルクルトといえば複雑機構の名手であり、コレクションでいえば「マスター」や「レベルソ」が著名だ。ムーブメントの設計・製造に関して潤沢すぎるほどのノウハウを蓄積した同社の、2020年発表モデルを紹介しよう。


時計愛好家から人気のジャガー・ルクルト

腕時計の内部構造まで愛でる時計愛好家にとって、ジャガー・ルクルトの技術や作品は別格である。なぜ同社の腕時計は愛されるのか、その理由を歴史から見てみよう。

ジャガー・ルクルトの歴史を振り返る

ジャガー・ルクルト マニュファクチュール

1833年に建てられたマニュファクチュールの建物は、2019年に外装の改修が行われた。

1833年、スイス・ジュウ渓谷にてジャガー・ルクルトの小さなアトリエは誕生した。

44年にはマイクロメートル単位を測定できる史上初の計測器「ミリオノメーター」を開発。これにより、精巧な時計部品の製造が可能となった。66年にはさまざまな時計製造技術をマニュファクチュールに集約する。

1900年までに350種類以上のムーブメントを開発し、この内128種類にはクロノグラフ機構、99種類にはミニッツリピーター機構が搭載された。

世界三大時計メーカーとして知られるパテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲへのムーブメント提供実績もあり、190年弱の歴史の中で製作したムーブメントは1200種類以上にも及ぶ。


ジャガー・ルクルトの代表的なコレクション

ジャガー・ルクルトといえばムーブメントと複雑機構、コレクションでいえば「マスター」や「レベルソ」の評価が高い。

マスターの中でもスタンダードで着用しやすい「マスター・コントロール」と、同社の技術力の結晶といえるレベルソについて見ていこう。

1000時間の厳格検査 マスターコントロール

マスター・コントロール

ジャガー・ルクルトの腕時計は、スイス公認クロノメーター検定協会「C.O.S.C.」を上回る検査基準の「1000時間コントロールテスト」を受け、約42日間にも及ぶ厳格な製品検査をクリアすることが求められる。

「マスター・コントロール」は、この独自規格のテストを初めてクリアしたコレクションである。クラシックなラウンドケースに幅狭のベゼル、端正な針とインデックスなど、ミニマリズムを極めたエレガントなデザインも特徴だ。

回転する文字盤が特徴 レベルソ

レベルソ

1931年に生まれた「レベルソ」は、レクタンギュラーケースやゴドロン装飾などアールデコの特徴を備え、ケースが反転するという独自機構が秀逸なコレクションである。

元々、反転式ケース開発の目的はポロの試合中の衝撃から時計を守るためだったが、現在では裏面にもダイアルを配したダブルフェイス式の「デュオ」もラインナップされる。


ジャガー・ルクルトの2020年新作モデル

ジャガー・ルクルトは複雑機構を熟知しており、メカニズムをパズルのように組み換えるセンスが卓越している。デザインは概してシンプルで、一見しただけではその複雑さに気付けないモデルもあるほどだ。

同社が2020年にどのような新作モデルをリリースしたのか、マスター・コントロールの4モデルとレベルソのレディースモデルを紹介しよう。

マスター・コントロール・カレンダー

マスター・コントロール・カレンダー

1940〜50年代のアーカイブを範にとったトリプルカレンダー・ムーンフェイズ。ダイアル外周の日付表示にジャンピングデイト機能を付加したことで、ムーンフェイズを遮ることはない。改良されたCal.866はパワーリザーブを70時間まで延長した。ジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・カレンダー」。自動巻き(Cal.866)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40mm、厚さ10.95mm。5気圧防水。118万円(税別)。

「マスター・コントロール・カレンダー」は、曜日・月とポインター針による日付表示、さらにムーンフェイズも搭載したモデルだ。

ダイアル外周の日付表示は6時位置のムーンフェイズと重ならないよう、15日から16日へ大きくジャンプする。スモールセコンドのインダイアルにムーンフェイズを収めたのも、ジャガー・ルクルトならではの高度な機構だ。

サンレイ仕上げのシルバーグレーダイアルとロジウムメッキ加工のドーフィン針・インデックスに、使い込むほどに味わいが増すフルグレインレザーのノバナッパ®カーフストラップを合わせるなど、デザイン面でも隙がない。

マスター・コントロール・デイト

マスター・コントロール・デイト

50年代のレトロデザインを取り入れた、新生マスター・コントロール・デイト。過去15年にわたって主要ムーブメントであったCal.899をアップデートし、パワーリザーブは70時間に延長、針飛びの問題を解消した。ジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・デイト」。自動巻き(Cal.899AC)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40mm、厚さ8.78mm)。5気圧防水。72万4000円(税別)。

「マスター・コントロール・デイト」は、2020年のマスター・コントロールの基準となる、最もシンプルかつピュアなモデルだ。

3針以外の機能は3時位置のデイト表示のみだが、香箱・潤滑油・秒針の調整やシリコン製脱進機の採用により、パワーリザーブは約38時間から約70時間へと大幅に向上した。

シルバーで統一されたケースにはブルースティール秒針がささやかな彩りを添え、ノバナッパ®カーフストラップが際立つデザインだ。

マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー

マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー

同ブランド初となるクロノグラフ、トリプルカレンダー、ムーンフェイズを組み合わせたモデル。複雑機構のノウハウを遺憾なく発揮しながら、左右対称のレイアウトにより視認性も担保している。長方形のプッシュボタンが知的なデザインに調和する。ジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー」。自動巻き(Cal.759)。37石。パワーリザーブ約65時間。SS(直径40mm、厚さ12.05mm)。5気圧防水。156万円(税別)。

「マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー」は、トリプルカレンダー・クロノグラフ・ムーンフェイズを搭載した、ジャガー・ルクルトとして初の試みとなるモデルだ。

3時位置には30分積算計、9時位置にはスモールセコンド、6時位置にはムーンフェイズと同軸上にポインターデイトを配した。シンメトリーな配置により情報の多さを感じさせない、端正な仕上がりとなっている。

ダイアル外周にはパルスメーターを配し、ヴィンテージな味わいがあることも魅力である。

マスター・コントロール・ジオグラフィーク

マスター・コントロール・ジオグラフィーク

複雑機構を盛り込んだトラベルウォッチ。10時位置のリュウズでダイアル下部のタイムゾーンを操作すると、6時位置のサブダイアルに第2時間帯が表示される。改良版Cal.939により、パワーリザーブを延長させつつ、ケースの薄型化を図った。ジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・ジオグラフィーク」。自動巻き(Cal.939AA)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40mm、厚さ10.96mm)。5気圧防水。135万2000円(税別)。

「マスター・コントロール・ジオグラフィーク」は、第2時間帯表示・デイナイト表示・ポインターデイト・パワーリザーブインジケーターを搭載する、多機能でありながらスタイリッシュなトラベルウォッチだ。

6時位置のタイムゾーン表示をミニッツサークル内に収めるなど、要素を整然と配置している。従来のケース径より1mm大きくした一方で、薄型化し着け心地を向上させた。

さらに、パワーリザーブは約43時間から約70時間へ向上させている。高度な機能がデザインの中に溶け込んだ、実用性の高いモデルである。

レベルソ・ワン

レベルソ・ワン

1930年代に人気を博した、初代レベルソ・ワンをワインレッドに染め上げた。丸みを帯びたアラビアインデックスやソレイユギョシェがレトロな雰囲気を醸す。ケースの裏面にはエングレーブを施すことも可能だ。ジャガー・ルクルト「レベルソ・ワン」。クォーツ(Cal.657)。4石。SS(縦40.1×20mm、厚さ7.9mm)。3気圧防水。57万円(税別)。

レベルソの女性向けモデル「レベルソ・ワン」に、ダイアルとレザーストラップをワインレッドに統一したモデルが追加された。

1930年代開発の女性向けレベルソにインスパイアされたデザインで、ケース幅20mmというスリムなシルエットや、ケース上下にセッティングされたダイヤモンドが女性の手元を美しく飾る。

控えめな配色が多かったレベルソ・ワンだが、個性的なカラーバリエーションが増えたことは朗報といえるだろう。ムーブメントはクォーツ式であるため、機械式時計に不慣れな女性でも安心して着用できる。


ジャガー・ルクルトの新作を手に入れよう

ジャガー・ルクルトは現在までに1200種類以上ものムーブメントを開発しており、複雑機構の組み合わせや内部機構の配置などに関して、潤沢すぎるほどのノウハウを蓄積している。

同社の腕時計はすでに複雑機構の極地といえるほどに洗練されており、新作ではデザイン面の精緻さも一層増していくのだ。



Contact info: ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

川部憲 Text by Ken Kawabe


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