オメガの「スピードマスター」は有人宇宙飛行に携行された輝かしい経歴を誇り、時計史だけではなく人類史にもその名を刻む傑作コレクションだ。伝説的な初期モデルの復刻版や最先端のマスター クロノメーターも魅力的なスピードマスターを紹介しよう。
オメガの成り立ちと主なコレクション
1848年、時計師ルイ・ブランはスイスのラ・ショー・ド・フォンにオメガの前身となる小さな時計工房を開いた。ルイは時計の精度に情熱を注ぎ、1879年に死去すると、その後は2人の息子ルイ=ポールとセザールが経営を引き継ぐ。
今や世界的に大きなシェアを占めるほどになった、オメガの成り立ちと主なコレクションを見ていこう。
日本でも抜群の知名度を誇る老舗高級ブランド
1880年、ブラン兄弟はスイス・ビエンヌに本社屋を移転する。1894年には高精度かつメンテナンスが容易なムーブメントを開発し、時計製造におけるひとつの基準を確立した。
世界的に成功を収めたこのムーブメントに与えられた名称は、「最高の達成」を意味する「オメガ」。1903年にはこの名を社名(ルイ・ブラン&フレール-オメガウォッチ)にも用い、オメガというブランドが誕生した。
その後、オメガは1932年以来28回ものオリンピックで公式計時を担当。またNASA(アメリカ航空宇宙局)唯一の公式装備品として採用されており、それらの輝かしい経歴は比類なき精度や信頼性の証でもある。
現在、オメガは世界的に最高峰の知名度と人気を誇るブランドとなった。日本国内ではその歴史や価値を知るミドルエイジやコレクターから厚い支持を集めるとともに、若年層からも憧れの高級腕時計ブランドとして広く認知されている。
実用性とデザインに優れたコレクション
オメガは計測機器としての信頼性を追求した時計製造を続けており、精度や視認性はもちろん、耐久性や耐磁性についても高級腕時計の模範となるクォリティを備えている。
創業100周年の1948年に生まれた「シーマスター」は、第2次世界大戦中に英国軍向けに納品していた軍用時計を原型とする本格ダイバーズウォッチだ。
そして、1957年発表のプロフェッショナルモデル「シーマスター 300」をベースとして開発されたのが、レーシングモデルの「スピードマスター」と、鉄道員や技師向けの「レイルマスター」である。
これら兄弟機は「マスター3部作」と呼ばれ、現在のレイルマスターはシーマスター コレクションに統合されている。
オメガのコレクションは他にも街角を意味する「デ・ヴィル」や、星座を意味する「コンステレーション」があり、これらはレディースラインも用意する上品なスタイリングだ。
スピードマスターを知ろう
「スピードマスター」と「シーマスター」はオメガの代表的コレクションだが、これらはマスター3部作の誕生時からターゲット別に性能を特化させてきた経緯がある。
スピードマスターの誕生と変遷
スピードマスターのベースとなった「シーマスター 300」は、300mという当時最高の防水性能に加え、軟鉄製インナーケースの採用により高い耐磁性能と耐衝撃性を備えていた。
この仕様をモータースポーツのプロフェッショナルモデルに転用したのが、1957年発売の初代スピードマスターである。
1965年には名だたる高級腕時計の中からNASA公式装備品として採用され、1964年の第4世代には微小重力環境(宇宙空間)でも精度を保つことの証明として、ダイアルに「PROFESSIONAL」の文字が刻印された。
1969年にはアポロ11号とともに月面着陸を果たして「ムーンウォッチ」の称号を獲得。1970年頃からは裏蓋に「THE FIRST WATCH WORN ON THE MOON」と刻まれ、以降も究極の信頼性を求めて進化を続けている。
シーマスターとの違いとは
スピードマスターは「スピードマスター レーシング」や「スピードマスター ムーンウォッチ」に代表される、10分の1秒を競うレースや宇宙空間における計測機器としての信頼性を求めたコレクションだ。
対するシーマスターは、英国空軍のパイロットや水兵が求めた精度や視認性、防水性を基準とする。
深海での使用を前提とした300m以上の防水性能とダイビングベゼルを持つモデルが多く、600mや1200m防水を誇るモデルもある。
ダイビングベゼルを持たない150m防水の「アクアテラ」やオリジナルモデルの復刻版「シーマスター 1948」、初代シーマスター 300の兄弟機である「レイルマスター」など、ラインナップは豊富だ。