パティスリー イーズ(日本橋)/この世ならぬ美味のクリエイター

2020.09.04

名店で腕を振るってきたパティシエ・大山恵介氏が、今春、待望の独立を果たした。歴史と伝統を感じさせる日本橋兜町の地で、独自の感性を発信する。

外川ゆい:取材・文 Text by Yui Togawa
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura

パティスリー イーズ

フィナンシェ
フランス菓子でありながら、和菓子のようなホッとする風味も感じられ、幅広い年齢層に好まれそう。隠れたアクセントとなっている塩は、ブルターニュ地方のゲランド産を使用。右から、大納言、ショコラ・ノワゼット、ミエル、抹茶カシスの4種をラインナップ。各2個ずつ入った「フィナンシェ詰め合わせ」2380円(税別)。オンラインでも購入可能。


街を物語る 心和むお菓子

 金融、証券の街として栄える日本橋兜町。歴史や伝統を色濃く残しつつ、再開発が進む注目のエリアに一軒のパティスリーが誕生した。

 名刺代わりともいえる4種類のフィナンシェを手に、「日本らしく小判型にしました」と語るのは、シェフパティシエの大山恵介氏。もともとフィナンシェは「金融家」という意味を持つフランス語だ。色や形が金塊に似ているからという説や、パリ証券取引所周辺の金融街に店を構えたパティシエが考案したという説もある。

大山恵介

大山恵介(Keisuke Oyama)
1986年、埼玉県生まれ。日本菓子専門学校にて和洋菓子を専攻。東京・京橋「イデミスギノ」、浦和「アカシエ」を経て渡仏。新橋「レストランラフィネス」、千駄ヶ谷「レストランシンシア」などでパティシエを務める。料理人コンペティションRED-U35にてシルバーエッグを獲得。

「パティスリー イーズ」では、バターやアーモンドの風味を存分に感じさせながらも、生地には白餡を練り込むといった和菓子のようなアプローチもあり、ほのかな塩味がバランスを整えている。食べ進めると、どこか懐かしい気持ちに。「“ いい塩梅”という言葉がありますが、目指すのはまさにそこです。そのためには一切の妥協なく、納得するものだけを提供し続けることを日々大切にしています」と大山氏。

 およそ15種類の焼き菓子のほか、ショーケースに優美に並ぶケーキは15~20種類、イートイン限定のデセールは4種類を展開。一概にお菓子と言っても、それぞれの存在や意味は全く異なる。「イートインでしか提供できないデセールは、食べるその時に焦点を当て、食感も温度も最高のタイミングを合わせます。いわば、その瞬間を切り取るような一皿。そして、余韻が豊かに続くように考えています」。一方、テイクアウトできるケーキでは、ショートケーキに小さな試験管に入ったソースが付いているなど、発見や驚きを感じる一面も。いずれも決して奇を衒うことなく、美味しさが優先。優しく儚い口どけが印象的だ。そして、新しさを秘めている。

 店名の“イーズ(ease)”とは、気兼ねなく来店できる店であり、安心して食べることができるお菓子でありたいという想いを込めて。独自の感性を発揮しながらも、常に食べ手の想いを汲み、寄り添うよう。大山氏が生み出すお菓子は口にすると、心や身体を和らげてくれる。


パティスリー イーズ

パティスリー イーズ

モスグリーンが印象的な外観を目印に扉を開けると、開放感あふれる空間が広がる。オープンキッチンになっており、パティシエがお菓子を製造する姿を見ることができるライブ感もこちらの醍醐味。

東京都中央区日本橋兜町9-1
Tel.03-6231-1681 不定休
11:00~19:00(生菓子11:00~、イートイン11:00~L.O.18:30)