海外ジャーナリスト的「上半期に発表された時計」ベスト5 モンブラン、IWCなど/ギズベルト・L・ブルーナー編

2020.08.29

時計業界に限らず、世界がこれほど異常事態に見舞われた例を知らない。我々、時計業界に身を置く者としては、大規模な国際時計見本市が1月のドバイを除いてすべて中止となり、多くの新作に触れ、情報交換する〝場〟を失った。そんな2020年上半期発表の新作から、時計業界を代表するジャーナリストにベスト5を選出していただいた。同時に、岐路に立たされる大規模国際時計見本市に関するそれぞれの見解をうかがった。今回は時計ジャーナリストのギズベルト・L・ブルーナー氏だ。
※本記事は2020年6月3日発売『クロノス日本版』89号を再編集して掲載しています。

ギズベルト・L・ブルーナーが選ぶ上半期ベスト5

1位
モンブラン「モンブラン 1858 スプリットセコンド クロノグラフ リミテッドエディション100」

モンブラン 1858 スプリットセコンド クロノグラフ リミテッドエディション100

モンブラン「モンブラン 1858 スプリットセコンド クロノグラフ リミテッドエディション100」
手巻き(Cal.MB M16.31)。25石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ti(直径44mm、厚さ14.55mm)。3気圧防水。世界限定100本。3万9500ユーロ(時価)。

モンブランは100本限定生産の「モンブラン 1858 スプリットセコンド クロノグラフ リミテッドエディション100」に、輝くようなブルーのエナメル文字盤を与えた。タキメーターとテレメーターの目盛りによって、この時計はより一層、ノスタルジックな印象に仕上がっている。クラシカルなチタンケースのトランスパレントバックから鑑賞できる手巻きムーブメント、Cal.MB M16.31は圧巻である。正確な時刻表示と1/5秒単位での計時を可能にするため、熟練の時計師はひとつひとつ丁寧に加工された262個の構成部品を慎重に組み立てなければならない。 ラトラパント機構によってふたつの計時を同時に開始、停止し、ラップタイムを記録することができる。

2位
IWC「ポルトギーゼ・ヨットクラブ・ムーン&タイド」

ポルトギーゼ・ヨットクラブ・ムーン&タイド

IWC「ポルトギーゼ・ヨットクラブ・ムーン&タイド」
自動巻き(Cal.82835)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRG(直径44.6mm 、厚さ14.4mm)。3気圧防水。358万円(税別)。

直径約45mmのIWC「ポルトギーゼ・ヨットクラブ・ムーン&タイド」を所持していれば、潮の満ち引きを常に正しく把握することができる。この18Kゴールド製ウォッチを駆動するのは自社製自動巻きムーブメントで、軸を中心に規則正しく表示が行われる。小潮から大潮まで、潮の強さは文字盤を見ればひと目で判別できる。しかも、精度は100年で日差約10分/日と高い。12時位置にはダブルムーンフェイズ表示も搭載されており、北半球と南半球から見た月の満ち欠けを表示する。

3位
ピアジェ「アルティプラノ アルティメート コンセプト」

アルティプラノ アルティメート コンセプト

ピアジェ 「アルティプラノ アルティメート コンセプト」
手巻き(Cal.900P-UC)。13石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。コバルト合金(直径41mm、厚さ2.0mm)。2気圧防水。4280万円(税別)。

ピアジェの「アルティプラノ アルティメート コンセプト」は、コバルト合金製ケースも含め、厚さがわずか2mmである。時計師は、香箱からテンプ、脱進機構に至るまでの輪列を厚さ1.2mmの裏蓋に直接組み付ける。歯車は「フライングホイール」、つまり片持ちである。6時位置に配された蓋のない香箱は、完全にゼロから設計されたもので、セラミックス製のボールベアリングで回転する。香箱には約40時間のパワーリザーブが蓄積され、テンプは1時間で2万8800回振動する。

4位
ブルガリ「セルペンティ セドゥットーリ トゥールビヨン」

ブルガリ「セルペンティ セドゥットーリ トゥールビヨン」
手巻き(Cal.BVL150)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KRG(縦34mm、厚さ8.9mm)。30m防水。850万円(税別)。

ブルガリのセルペンティ セドゥットーリに搭載されている手巻きCal.BVL150はサイズが22mm×18mm、厚さわずか3.65mmである。そのフォルムの恩恵により、幅34mm、3気圧防水の18Kピンクゴールド製ケースに完璧にフィットしている。この時計のハイライトはやはりワンミニッツトゥールビヨンである。この繊細な回転体の軸受として利用されているサファイアクリスタルを通して、トゥールビヨンケージの中で2万1600振動/時で振動するテンプを存分に鑑賞することができる。手でいっぱいまで巻き上げると、トゥールビヨンムーブメントは約40時間動き続ける。

5位
ロジェ・デュブイ「エクスカリバー トゥーフォールド」

エクスカリバー トゥーフォールド

ロジェ・デュブイ「エクスカリバー トゥーフォールド」
手巻き(キャリバーRD01SQ)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。MCF(直径 45mm、厚さ 15mm)。3気圧防水。世界限定8本。3216万4000円(税別)。

ロジェ・デュブイから登場するのは、ダブルフライングトゥールビヨンを搭載した「エクスカリバー トゥーフォールド」である。その45mmのケースは、高級機械式腕時計ではいまだかつて使用されたことのない独自の複合繊維、ミネラルコンポジットファイバー(MCF)で作られる。この純白の素材は99.95%がシリカ(二酸化ケイ素)である。ムーブメント上部のプレートのすべてのアングルは、通常の材料の場合に比べ60%も長く発光する。ラバーストラップのスペシャリスト、ビウィが提供する世界初のテクノロジー「LumiSuperBiwiNova」により、ルミネサント加工が施された独自素材FKMラバー(フッ素ゴム)製のストラップは、暗所で強く光を放つ。