時計好きや実用時計を探す人だけでなく、今や広い層に支持されるチューダー。時計としての物堅さに加えて、よく練られたディテールを持つのが一因だろう。今年加わったのは、さらに人気を集めるであろうネイビーブルーの新作だ。
Photographs by Yu Mitamura, Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2020年9月号初出]
ブラックベイ フィフティ-エイト“ネイビーブルー”
大ヒット作の色違い。本作は、ブルーのファブリックストラップを備えたものである。定革、遊革ともに丈夫なスティール製なのは見識だ。自動巻き(Cal.MT5402)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径39mm)。200m防水。36万5200円(税込)。
チューダー2020年の新作は、「ブラックベイ フィフティ-エイト」の新色である。カラーが変わっただけと言えばそれまでだが、さまざまな展開ができるのは、そもそもの基礎が良ければこそだ。
本誌でも再三述べてきたが、本作の高い完成度を改めて述べてみたい。まずは弓管とケースのクリアランス。噛み合わせが精密なため、両者の間には隙間がほぼない。今の時計はどれもクリアランスを詰めるようになったが、このプライスレンジで、チューダーの品質に及ぶものはまだない。
フランネルのような肌触りの「“ソフトタッチ”ストラップ」も用意されている。ケースが薄いため、このストラップでも装着感は良い。ラバーを用意しなかったのは、いかにも今のチューダーだ。時計としては文句なし。基本スペックはすべて共通。36万5200円(税込)。
バックルには、スポーツウォッチらしく、誤開閉を防ぐためのセーフティキャッチが備わる。固定するボールはスティール製ではなく、摩耗しにくいセラミックス製だ。数年前、パテック フィリップが採用し、オメガも使うようになった機構をチューダーも取り入れた。売れるからこその凝ったディテールだが、まさかアンダー40万円の時計が採用するとは思ってもみなかった。
もうひとつはファブリックストラップである。ほつれないよう、先端を熱で固めたものは他にもある。しかし、フィフティ-エイトのストラップのように、先端を縫い込んだものは多くない。実用時計らしからぬ配慮が、チューダーの魅力を大きく高めている。
こちらはいわゆる「リベットブレス」を備えたモデル。左右の遊びも適切で、ヘッドとのバランスも良好である。弓管とラグの狭いクリアランスに注目。チューダーの生真面目さをよく示すポイントだ。基本スペックは上記のモデルに同じ。39万9300円(税込)。
ラグの先端は、往年のモデルのように先が尖っている。あえて複雑に成形しなかったのは、製造コストを抑えるためか。しかし、うまく角を落とすことで、今の実用時計にアップデートしている。
時計として、また工業製品としては文句の付けようがないブラックベイ フィフティ-エイト。抑えた色味を持つ本作は、間違いなくお勧めの新作だ。しかしひとつ大きな問題がある。これほどの時計が人気を集めない方がおかしい。入手困難は必至だろう。
https://www.webchronos.net/features/22155/
https://www.webchronos.net/features/46994/
https://www.webchronos.net/features/42472/