タグ・ホイヤーが今年、創業160周年というアニバーサリーイヤーを祝うべく投入したのが、アイコンモデルである「カレラ」の新作だ。特に1960年代モデルを巧みにリデザインした復刻版と、70年代風のカラーリングを持つ“モントリオール”は直径39mmケースに自社製のCal.ホイヤー02を収めた、気兼ねなくレトロスタイルのクロノグラフを楽しめるモデルとして見逃せない。
細田雄人(本誌):取材・文 Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2020年9月号初出]
タグ・ホイヤー カレラ 160周年 シルバーダイヤル リミテッドエディション
1964年発表モデルの復刻版。ラグの形状や見返しリングなど、往年のカレラが持っていた特徴をしっかりと押さえている。自動巻き(Cal.ホイヤー02)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SS(直径39mm)。100m防水。世界限定1860本。69万5000円。
1964年の「2447S」の復刻モデルとして発表された「タグ・ホイヤー カレラ 160周年 シルバーダイヤル リミテッドエディション」。今やデジタルスキャン技術の発達により、オリジナルのデザインを完全に再現した復刻モデルも珍しくなくなった。しかし、今回の新作では直径36㎜だったケースが39㎜に拡大され、インダイアルが一段下がるなど、細かいところが変更されている。おそらく前者は、自社製クロノグラフであるホイヤー02の搭載と100m防水を実現するため。後者は文字盤に立体感を与えるためだろう。それでもカレラを特徴付けてきた細長いラグや、目盛りをプリントした見返しのテンションリングなどポイントはしっかり押さえているため、2447Sの復刻モデルとして成立している。デシマルメーターを外したことでダイアルがより端正になったことを考えると、あえて忠実な復刻としなかったことは正解だったと言える。
タグ・ホイヤー カレラ 160周年 モントリオール リミテッドエディション
ホイヤー モントリオールのカラーリングをカレラに落とし込んだモデル。そのため、「MONTREAL」ロゴは「CARRERA」に変更されている。自動巻き(Cal.ホイヤー02)。33 石。2 万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SS(直径39mm)。100m防水。世界限定1000本。73万円。
もう一方の「タグ・ホイヤー カレラ 160周年 モントリオール リミテッドエディション」は、72年に発表された「モントリオール」のデザインコードを落とし込んだモデルである。オリジナルのモントリオールはラグと一体化したクッションケースを持つ別コレクションだったが、30分積算計をはじめとするサブダイアルの意匠に、72年モデルの特徴的な赤、青、黄を配色。結果、本来全くの別モノであるカレラに、モントリオールの佇まいを与えることに成功している。デザインに対する柔軟さは復刻モデルにも共通している点だ。
2モデルともパワーリザーブ約80時間のホイヤー02を搭載し、防水性能も100mと実用性は申し分なし。現代的なスペックで気兼ねなく、60〜70年代の雰囲気を楽しむことができる。
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