時計フェアはなかったが傑作ぞろい 2020年のオメガ、グランドセイコー、パテック フィリップ、ロレックスなどの新作時計を総括

ウォッチジャーナリスト渋谷ヤスヒトの役に立つ!? 時計業界雑談通信

2020年9月1日、ロレックスがついに新作モデルをオンラインで発表した。それに先駆けて、8月26日からブルガリ、ブライトリング、ジラール・ペルゴ、ユリス・ナルダン、H.モーザーなど数社が、スイス・ジュネーブで「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」を開催した。4月25日にヴァーチャル開催となった「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」や、各社がオンラインで随時発表したものも含めて、これで主要ブランドの2020年の新作がほぼ出そろったことになる。そこで今回は、今年の新作時計のトレンドと注目モデルについて総括してみたい。

ロレックス

2020年9月1日、待望の新作をついに公開したロレックスのオフィシャルサイトのトップページ。
渋谷ヤスヒト:取材・文・写真 Text & Photographs by Yasuhito Shibuya
2020年9月13日掲載記事


誰もが納得の「ニュー・クラシック」ウォッチ続々

 今年発表されたさまざまなブランドの新作を総覧した結果、筆者が考える今年2020年の新作時計の最大のトレンド。それは「ニュー・クラシック」だ。

 では「ニュー・クラシック」な時計とはどんな時計か?

 それはブランドの伝統的なスタイルを継承しつつ、現代的にリファインしたデザインと最新のムーブメントを併せ持つ時計である。だから安心して購入でき、買って後悔することも少なく、いつまでも飽きずに使うことができる。しかも、各ブランドの努力で、これまでにない魅力的で良心的な価格が実現されているのも、今年の新作の大きなトレンドだ。

 これは時計の購入を考えている消費者にとってうれしいことだ。また、時計フェアの中止による新作発表の遅れに加えて、この春の営業自粛で厳しい状況に置かれてきた時計店にとっても「売れる」「売りやすい」新作がそろったこの状況は、危機の中での大きな福音といえる。

ロレックス

 そして、このトレンドを最も象徴する新作が、全世界注目の中、9月1日にオンラインで発表されたロレックスの「サブマリーナー」と「オイスター パーペチュアル 41」「オイスター パーペチュアル 36」。どれも新開発の新型ムーブメント「キャリバー3230」を搭載している。その結果、スペックで唯一の不満とも言えたパワーリザーブ(駆動時間)も従来の約48時間から約70時間に向上。さらにケースサイズやフォルムなど細部もリファインされている。

 なかでも注目したいのが、初の直径41mmというケースサイズ、サンレイ仕上げシルバー文字盤にイエローゴールド製で蓄光塗料付きのインデックスや時分針、イエローゴールド製の秒針を備えた「オイスター パーペチュアル 41」だ。絶対定番モデルの安心感に加えて適度な新鮮さもある、まさに「ニュー・クラシック」な1本だ。

オイスター パーペチュアル 41

シルバーとゴールドの色使いが魅力的なロレックスの新作「オイスター パーペチュアル 41」。ロレックス定番としての伝統的なスタイルを継承しつつも、ケースサイズを直径41mmに拡大することで、より現代的にリファインされた。搭載するのは最新のキャリバー3230だ。

カルティエ

 さらにこのトレンドを象徴するのが、これより約4カ月前に、世界初のオンライン時計フェアとなった「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2020」で発表されたカルティエの新作「パシャ ドゥ カルティエ」と「サントス デュモン XL ウォッチ」。こちらもひと目で魅了された人は多いだろう。特に後者のステンレススティールモデルの60万円(税別)という価格に心を動かされた時計好きは多いはず。

パシャ ドゥ カルティエ

© Cartier
最新の技術が惜しみなく投入されて生まれた「パシャ ドゥ カルティエ」のケース径41mmのSSモデルと「サントス デュモン XL ウォッチ」。良心的な価格設定もうれしい。

オメガ

 また、今年2月に第5世代モデルが発表され、7月にケース径41mmのモデルが追加された「コンステレーション マスター クロノメーター」を筆頭に、随時発表されてきたオメガの一連の新作も、どれも同様の魅力を備えている。

コンステレーション マスター クロノメーター

オメガの「コンステレーション マスター クロノメーター」のケース径41mmモデル。ムーブメントはもちろん、ポリッシュ仕上げのセラミックスにセラゴールドでローマ数字を施したベゼルなど最新技術を採用し、落ち着きとスポーティーなセンスを両立したデザインが新鮮だ。

タグ・ホイヤー

 最新の完全自社製クロノグラフムーブメント「キャリバー ホイヤー02」を搭載したタグ・ホイヤーの「カレラ キャリバー ホイヤー02 スポーツ クロノグラフ」も、間違いなく「ニュー・クラシック」に位置付けられる1本だ。これまでこのムーブメントを搭載してきたモデルとは一線を画した上品さが香る飽きのこないデザインと魅力的な価格に驚いた人は少なくないはず。

タグ・ホイヤー カレラ

満を持して登場した「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 スポーツ クロノグラフ」。完全自社製の新型ムーブメントを搭載した、事実上初のスタンダードモデルだ。

オーデマ ピゲ

 同じクロノグラフのジャンルでは他にも「ニュー・クラシック」を体現した魅力的な新作が数多く登場している。複刻を超えた魅力的な作り込みが素晴らしいオーデマ ピゲの「リマスター 01 オーデマ ピゲ クロノグラフ」40mm。初代の「ルーローブレスレット」を継承しながら大きく進化したブライトリングの「クロノマット B01 42」。さらに、ロンジンの「マスター コレクション」やモンブランの「モンブラン 1858」「ヘリテイジ」の一連の新作などである。

リマスター 01 オーデマ ピゲ

左上から時計回りに、オーデマ ピゲの「リマスター 01 オーデマ ピゲ クロノグラフ」40mm、ブライトリングの「クロノマット B01 42」、モンブランの「ヘリテイジ モノプッシャー クロノグラフ」。ロンジンの「マスター コレクション クロノグラフ」。それぞれ格は大きく異なるが、どれも“クラシック顔”の下で各社が誇る自社ムーブメントが時を刻む。