IWCのコレクション別オーバーホール料金を解説。内容や期間も紹介

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2021.02.03

時計は単に時を知るためだけの道具ではない。生活をともにすることで深い愛着がわいた時計は、いつまでも使用し続けたいと思わせるパートナーになる。そのために大切なことは、オーバーホールだろう。IWCを愛用する人に向けて、料金や内容などについて解説する。


IWCの時計とオーバーホール

IWCは、1868年に創業された老舗高級時計ブランドである。時計製造の聖地・スイスで生まれ「International Watch Company(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)」のイニシャルを取ってIWCと称されている。

質実剛健なたたずまいを持ち、品質には定評のあるブランドだが、同社の時計を愛用し続けるにもオーバーホールは不可欠だ。その必要性について理解を深めておこう。

オーバーホールの必要性

高級時計の内部には、複雑な機能を稼働させるために数多くの部品が使用されている。それらの摩耗を防止するために用いられているのが潤滑油だ。

各部品の相互作用によって動作しているうちに、ケース内部のオイルは劣化を招く。潤滑油が蒸発したり凝固したりしてその役目を低下させると、パーツ同士が傷つけ合うことになってしまう。

スムーズな動作が奪われることで、損傷や破損、摩耗などの現象を引き起こす要因となってしまう。結果として時計の精度にも大きく影響することになるため、オーバーホールが必要となる。

オーバーホールは、人間の生活で言えば人間ドックのようなもの。定期的に検査を行って、しっかりとケアしておくことが、時計を長持ちをさせることにつながるのだ。

IWCのコンプリートサービス

厳しい検査の後、ムーブメントは分解され、各部品の清掃が行われる。オーバーホールに要する期間は、基本的には4週間前後とされている。

IWCにはコンプリートサービスという制度によって、ユーザーへのフォローを行っている。

サービスセンターに持ち込まれた時計は、まず時計診断師が厳しく検査する。そして、技術的なトラブルが発生していないか確かめられ、必要な対応やパーツが決定される。

その後、経験豊富な技師がムーブメントをすべて分解し、各パーツの清掃に当たる。同等の純正パーツのみを使用し、精密な機構を組み立て直していく。

ケース及びブレスレットの研磨などを、オプションで選択することも可能だ。専門的にトレーニングされたポリッシング技師によって、鏡面仕上げやヘアライン仕上げが施される。


主なコレクション別の正規料金

IWCでは、さまざまなコレクションが発表されている。それぞれに異なる魅力を備えたモデルを展開することで、時計愛好家の期待に応えているのだ。

そして、オーバーホールに関しても、コレクションごとに必要となる費用は異なる。タイプ別に、その正規料金を確認しておこう。

ポートフィノ

スリムな時分針とインデックスを採用したことでエレガントな雰囲気を放つ「ポートフィノ」。写真はブラックダイアルとブラックのアリゲーターストラップを組み合わせた「ポートフィノ・オートマティック」。自動巻き(Cal.35111)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm)。3気圧防水。48万円(税別)。

「ポートフィノ」は、IWCにおいて特に人気を集める、同社の代表的なコレクションのひとつ。

伝統的なスタイルが洗練された雰囲気を生み出し、ビジネスから社交まで、幅広いシーンにマッチする。

ポートフィノのオーバーホール料金(税込)に関して、駆動方式別にまとめてみた。次の表を参考にしてほしい。

駆動方式 金額(レザーブレスレット/メタルブレスレット)
3針+デイト 5万6160円/6万6960円
クロノグラフ 6万9120円/7万9920円
ムーンフェイズ 7万9920円/9万720円
手巻き・エイトデイズ 9万2880円/10万3680円

アクアタイマー

コレクション中、最小サイズの「アクアタイマー・オートマティック」。ダイアルデザインと、回転式インナーベゼルに用いられたクォータースケールは、初代の外観を再現したもの。自動巻き(Cal.30120)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径42mm)。30気圧防水。58万円(税別)。

「アクアタイマー」も、IWCが展開する伝統的な6種類のコレクションのひとつであり、同社を代表するダイバーズウォッチである。

海中でオーナーの身を守るため、ベゼルには安全装置が備えられ、夜光塗料による高い視認性も確保している。

また、故障による潜水時間の変更などを防止するため、一方向にしか回転しない仕組みを施したインナーベゼルによるセーフダイブ・システムも装備している。

アクアタイマーのオーバーホールに必用な費用は、以下が基準となっている。

駆動方式 金額(レザーブレスレット/メタルブレスレット)
3針+デイト 5万6160円/6万6960円
クロノグラフ 6万9120円/7万9920円
クロノグラフ・スペシャルエディション 9万2880円/10万3680円

ポルトギーゼ

1939年に誕生したRef.325のデザインを継承した、2020年発表の「ポルトギーゼ・オートマティック 40」。自動巻き(Cal.82200)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径40.4mm)。3気圧防水。72万5000円(税別)。

「ポルトギーゼ」が誕生したのは1939年のこと。「大きさは問わないので、航海に最適な高精度の時計を」というポルトガル商人からのオーダーを受けて作られた。

安定性を重視するIWCの時計は、ビッグサイズになりがちであった。ポルトギーゼはよりその傾向が強く、発表当時は人気ラインには名を連ねてはいなかった。

時代を経て、サイズの大きさが魅力のひとつとして注目されるようになると、ポルトギーゼは再び脚光を浴びる。

特徴は、大型化した時計をスタイリッシュに見せる高度な工夫が随所に施されていること。例えば、ケース構造や裏蓋の意匠は、厚さを感じさせないよう計算されたものだ。

そして95年にリリースした「ポルトギーゼ・クロノグラフ」は、人気コレクションへと飛躍を果たしたのである。

ポルトギーゼをオーバーホールする際に要する費用の概要は、以下の通りである。

駆動方式 金額
クロノグラフ 6万9120円
ハンドワインディング(手巻き) 7万9920円
自社製オートマティック 9万2880円
ヨットクラブ 9万2880円
パーペチュアルカレンダー 15万9840円
グランド・コンプリケーション 28万7280円

インヂュニア

初期のインヂュニアを想起させる、シンプルなデザインの「インヂュニア・オートマティック」。自動巻き(Cal.35111)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm)。12気圧防水。51万5000円(税別)。

IWCが「インヂュニア」を発表したのは1955年のこと。ドイツ語でエンジニア(技術者)を指す言葉が、コレクション名の由来となっている。

インヂュニアの最大の特徴は、高い耐磁性にある。IWCが生産する軍用パイロット・ウォッチで培った耐磁技術をベースとして設計されている。

この耐磁性は、現代の生活においても大いに役立っている。時計に影響を及ぼす電磁波を発生させる数々の電子機器に囲まれた暮らしから、大切な時計を守ってくれるのだ。

インヂュニアのオーバーホールにかかる費用は、以下の通りである。

タイプ 金額
通常モデル 7万9920~9万720円
コンプリケーション 15万9840円~

※年式によって金額が異なる場合あり