1860年にスイスで誕生したタグ・ホイヤー。その知名度は、数ある一流時計ブランドの中でもトップクラスである。そんな同社が手掛ける「カレラ」は、モータースポーツの世界でも高い支持を得ているモデルだ。その魅力の神髄に迫ってみよう。
タグ・ホイヤーのフラッグシップモデル「カレラ」
「カレラ」はデビュー以降、10回以上のモデルチェンジを経ながら、タグ・ホイヤーのコレクションにおける基軸となってきた。まさに、同社を象徴するフラッグシップといえる1本だ。
タグ・ホイヤーというブランドを語る上でも欠かせない存在であるカレラとは、どのような時計なのか、概要を見てみよう。
タグ・ホイヤー渾身のクロノグラフ
カレラの誕生からさかのぼること77年前の1887年、ホイヤーの創業者であるエドワード・ホイヤーが「振動ピニオン」を発明した。これは「ロッキングピニオン」とも呼ばれる、両端にピニオンを備えた主軸のことで、現在でもクロノグラフの定番の技術だ。
次男シャルル-オーギュスト・ホイヤーはさらに高精度なストップウォッチの開発に心血を注ぎ、1916年に100分の1秒まで計測可能な「マイクログラフ」を発表。スポーツ界の計測の歴史を塗り替えたとされる。
時間を計測することに情熱を懸けるホイヤー一族の流れを継ぎ、エドワードのひ孫で4代目のジャック・ホイヤーは、開放的な文字盤と1/5秒目盛付きフランジを特徴とした渾身のクロノグラフ「カレラ」シリーズを開発。突出した視認性の高さでクロノグラフのエポック的モデルとして歴史に名を刻んだ。
伝説のカーレースが由来
「カレラ」という名はスペイン語のレースに由来する。ジャック・ホイヤーは、1950~54年にメキシコで開催されていた「カレラ・パン アメリカーナ・メキシコ」という伝説的なレースに引かれ、モデル名に採用した。
「カレラ・パン アメリカーナ・メキシコ」の総走行距離は3000km以上。そのコースは山あり谷ありでアップダウンが激しく、世界で最も過酷なものとされていたレースだった。
熾烈なレースは、多くの熱狂的なファンも生んだが、一方では過酷さゆえに事故が頻発し、死亡者も少なくなかったため、54年に中断され伝説となった。
この逸話を耳にした当時の社長であるジャックは、大いに刺激を受けた。伝説のレースからイマジネーションを掻き立てられ、名機・カレラの着想を得たとされる。
タグ・ホイヤーが誇る主な技術
タグ・ホイヤーは誕生以来、時を測ることに傾注して技術革新に努めてきた。同社が誇る主な技術について見てみよう。
クロノグラフ
速さを計測することはタグ・ホイヤーの存在意義そのものとも言える。伝説のカーレースにルーツを持つ「カレラ」に代表されるように、クロノグラフ(ストップウォッチ機能)は極めて重要なメカニズムだ。
前述したように1887年に実用化に成功した振動ピニオンは、クロノグラフの起動の高速化を実現した。
その後も「マイクログラフ」や「自動巻きのクロノグラフムーブメント」など、画期的な計測機能を初めて完成させ、2011年には1/1000秒単位で計測・表示する機械式クロノグラフ「マイクロタイマー フライング1000」も発表している。
モータースポーツ
タグ・ホイヤーは、多数のスポーツにおいて、オフィシャル・タイムキーパーとして活躍してきた。高精度化を叶えてきた実績への信頼によるものである。
中でも、モータースポーツとの関係は深い。1971年には、F1レースの公式時計として初めて選ばれ、以降「カレラ」や「モナコ」「モンツァ」といういくつものレーシング・クロノグラフをリリースする。
2004年以降は、一旦F1の世界から離れ、インディカー・シリーズでオフィシャル・タイムキーパーを務めていたが、16年にレッドブル・レーシングチームのタイムキーパーに任命されたことで、再度、F1の舞台への復帰を果たすことになった。
カレラが世界から認められるポイント
タグ・ホイヤーの代名詞として語られる「カレラ」は、押しも押されもせぬ同社のフラッグシップ・モデルだ。世界が評価するポイントを確認してみよう。
伝統と革新を宿すデザイン
レーシーでメカニカルな雰囲気はそのままに、GMT機能を付与したモデル。自動巻き(Cal.ホイヤー02)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SS(直径45mm)。100m防水。100万1000円(税別)。
モーターレースにインスパイアされたカレラは、伝統的なクロノグラフを踏襲しつつ、コンテンポラリーな要素に満ちている。
その革新性が強く表れているものが、カレラの主要モデルに搭載されているムーブメントCal.ホイヤー02だろう。スタイリッシュなオープンワークタイプのダイアルだ。
また、このCal.ホイヤー02を搭載した「タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ GMT」(Ref.CBG2A1Z.BA0658)といったモデルでは、オープンワークダイアルという革新性に満ちた大胆な意匠で、あふれる機能美を堪能できる。
加えて、革新への挑戦は、価格にも反映されている。時計の高機能を支えてきたトゥールビヨンの価格常識を大きく覆したことも、タグ・ホイヤーの功績といってよいだろう。
豊富なラインナップ
新たにパートナーシップを締結したポルシェとのコラボレーションによって生まれた注目作。自動巻き(Cal.ホイヤー02)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SS(直径44mm)。100m防水。91万8500円(税別)。
豊富なラインナップも、カレラの魅力だ。本格腕時計のビギナーでも手にしやすい価格帯のモデルから、熱心な愛好家も納得の高品質を備えた100万円超のクラスに至るまで、幅広く並ぶ。
デザインや機能においても、カレラをひとくくりにはできない。現行モデルに搭載しているムーブメントは「キャリバー5」「キャリバー ホイヤー02T トゥールビヨン」「キャリバー ホイヤー02」「キャリバー16」、そしてホイヤー02の改良版である「キャリバーTH20-00」など、モデルによってさまざまである。
それぞれのモデルは、異なる豊かな表情をたたえている。インダイアルの数や配置方法も多様で、いくつもの役割がひとつの文字盤に同居する、多機能なタイムピースも多い。
秒針に代わって特殊な形状のスモールセコンドを備えたモデルや、徹底してシンプルさを追求したタイプも人気だ。
ブランド力やサポート
タグ・ホイヤーと聞いて、多くの人がイメージするのが、スポーティーさだろう。クロノグラフで培った技術が生む躍動感は、命を懸けて時を競うモータースポーツの最前線で磨かれたものだ。
一瞬で時を明確に伝えるというミッションは、優れた視認性を備えるデザインを生み出し、そのビジュアルは、高い機能に裏打ちされた機能美にもつながっている。
高い技術力とデザインの完成度を誇りつつ、ユーザーの安心を育む、万全のサポート体制もしっかりと築いている。
日本国内に100カ所以上の取り扱いショップを展開し、各地での要望や依頼に対応している。公式サイトから申し込めるピックアップサービスも受け付けており、利用しやすい環境整備も万全だ。