2020年9月1日、聞こえる話題はロレックスばかりだった。この日、ロレックスが待望の新作を発表したのである。筆者はロレックスの偉大さは分かっているものの、距離は置いてきた。それにそもそも筆者はクロノス日本版の「ロレックス番」ではない。しかし、新作が出たなら見なきゃいかんでしょということで、都内某所に足を運び、一通り新作を見た。すでに色々な媒体が取り上げているので、概要は軽く語るに留め、あとはマニア目線で語りたい。写真が下手なのはご容赦ください。
2020年9月15日掲載記事
サブマリーナーは中身が変わった、だけではない
2008年から12年にかけて、大幅なブラッシュアップを受けたロレックス「オイスター パーペチュアル サブマリーナー」。2020年の新作は、前作と比べてサイズが1mm大きくなり、ムーブメントが31系から32系に置き換わったのが大きな違いとなる。詳細はネットで記事を探してください。それと、ラグがわずかに細くなり、見た目は5桁のサブマリーナーに近くなったのも変更点と言える。といっても、ロレックスファン以外には分からない変化だし、1mm拡大されたケースにしても、正直見比べないと分からない。なお、トップ画像の左が2020年の新作(Ref.126610LV)。右側はかつてのRef.16610LV。
先のサブマリーナーからベゼルはセラクロムに変更された。これは、傷が付きやすく退色するアルミ製のベゼルに比べるとはるかに良い。加えて、ピカピカに光るベゼルは、ロレックスお得意のラッカー文字盤によく映える。分かりやすく高級なので、新しいサブマリーナーが売れに売れたのは納得だ。当然、この特徴は新作にも受け継がれた。
これだけ完成されたモデルは、正直いじりようがなかった。ムーブメントを新しい32系に搭載することをのぞいて、だ。1988年にリリースされた自動巻きの31系は、野心的な30系の弱点を潰した新世代の基幹キャリバーだった。後に耐衝撃性能と耐磁性能を高めたパラクロム ヘアスプリングを採用することで、31系は、21世紀に入っても第一級の自動巻きであり続けた。ただし、基本設計の古さはさすがに隠せなくなったのか、ロレックスは31系を全面的に改良した32系をリリースした。慣性の低いクロナジーエスケープメントと体積を増やした香箱の組み合わせにより、パワーリザーブは約70時間に延長。自動巻きのローターがボールベアリング保持となって耐久性が増したほか、耐磁性能と耐衝撃性能を大きく高めたパラクロム ヘアスプリングが全面的に採用された。この32系の採用が、新しいサブマリーナーの大きなポイントだ。
意外だったのは、セーフティキャッチを固定するボールが、今流行のセラミックスではなく、ステンレスのままであること。耐久性を考えたらセラミックスの方が良さそうだが、ロレックスはあえて変えなかった。理由は不明だが、ロレックスのことだから明確なワケがあるのだろう。あくまで推測だが、セラミックスの割れを気にしたのかもしれない。ちなみに、微調整が可能なグライドロックシステムは前作にまったく同じである。今のサブマリーナーは控えめに言っても軽い時計ではないが、微調整システムのおかげで、優れた装着感を得られる。
もうひとつ加えると、ブレスレットもわずかに太くなり、厚さを減らした。2000年以降のロレックスがたどった歩みは、ヘッド(時計部分)を重くし、対応すべくブレスレットも重く、だった。相変わらず時計全体のバランスは秀逸だが、いたちごっこの結果、時計全体が重くなったことは否めない。対してロレックスは、ようやく重さというものを考えたようだ。サイズアップにもかかわらず装着感が変わらない(これには個人差があるだろうが)のは、新しいサブマリーナーの美点だと思っている。
個人的に好きなのは前作までが採用していた31系。さすがに設計は古くなったが、あの安定感はちょっと比類ない。ただ普通の人が普通に使うなら、パワーリザーブが伸び、耐磁性能が増した新型をお勧めしたい。ただし見た目はほぼ同じ。明らかに違うポイントは、6時位置に王冠マークが加えられたことぐらいか。
スカイドゥエラーはストラップがなにげにすごい
かっこわるいと思っていた「オイスター パーペチュアル スカイドゥエラー」も、見慣れると悪くないと思えるようになった。それに、サロスシステムを採用した年次カレンダーは、簡潔で理論上の耐久性も高い。新しいスカイドゥエラーには、2.5mm単位×6コマで調整できるグライドロックが加わったほか、ラバーストラップのオイスターフレックスが装着された。今後、スカイドゥエラーはレザーストラップではなく、オイスターフレックスに変更されていくようだ。
ロレックスが偉いのは、時計の重さを真面目に考えていることだ。重いヘッドをラバー製のオイスターフレックスで支えるには無理がある。対してロレックスは、ストラップに「縦方向クッションシステム」なるものを内蔵した。これはラバーストラップに非常に薄いチタンのブレードを埋め込んだもの。ラバーがダメになりにくく、仮にラバーが切れてもチタン製の芯を内蔵しているため時計は落下しない。非常に優れたアイデアだ。なお、オイスターフレックスの内側には謎のびらびらがある。ロレックス曰く「汗をかいても張り付かないため」とのこと。汗をかいていなかったので、残念ながら装着感までは確認できなかった。