日本時計輸入協会が2012年にスタートさせたウオッチコーディネーターは、今や有資格者数約2600人の定番資格に成長している。なぜこれほど普及したのか?その意義を探った。
細田雄人(本誌):文 Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2020年11月号掲載記事]
「CWC」-Certified Watch Coordinator-
日本時計輸入協会が手掛けるウオッチコーディネーター(CWC)は、業界全体の顧客満足度を上げるべく、時計販売員の育成を目指す資格検定制度だ。ゼニス ブティック銀座で販売員を務める有資格者の田代しのぶさんはこう語る。
「試験に向けては、雑誌で最新の時計情報を取り入れつつ、テキストを読み込むことで対策しました。初めての時計業界だったのですが、時計の仕組みから業界の歴史など、イチから基礎を学べました」
確かに公式テキストは時計産業の発展史から、コーアクシャル脱進機の構造に至るまで、情報が広く収録されている。「テキストは写真が細かく載っているので勉強しやすかったです。ムーブメントのオーバーホールについて記載されている箇所は、さすがにオシドリなどのパーツ名を覚えるのが大変でしたが……」。なんと、試験に受かるためにはETA2824-2のオーバーホール手順まで頭に入っていないといけないという。時計の販売スタッフがこれだけの知識を持っていれば、顧客は購入時だけでなく、アフターサービス時にも安心して相談できる。高級時計は敷居が高いと考える新規顧客にとって、購入のハードルはぐっと下がるはずだ。時計好きの間口を広げるCWCは、日本の時計文化を根底で支えていると言えよう。
なお、CWCの取得後には、ユニタスことETA6497を使用しての分解・組み立て実習も行う。つまり、自動巻き、手巻きの差こそあれ、オーバーホールの手順を細かく学ぶきっかけと、それを実践する機会が得られるのだ。販売員でなくても、興味をそそられる時計趣味人は少なくないだろう。また、独立時計師を招いての講演会や有資格者を集めての懇親会など、より時計に関して見識を深める場も設けられている。資格勉強も、資格取得後も、愛好家の時計に対する知識欲を刺激してくれるCWC。次回の試験日は2021年1月27日だ。