ロレックスGMTマスターの歴史と系譜。現行モデルの特徴も紹介

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2021.02.25

ロレックス「GMTマスター」には、1955〜99年頃まで販売された「GMTマスターI」と、82年から現在まで続く「GMTマスターII」という2種類のシリーズがある。歴史や系譜から過去モデルの価値を知り、現行モデルの魅力をより深く堪能しよう。

GMTマスター


ロレックスGMTマスターとは

1955年に登場したロレックス「GMTマスター」は、元祖GMTモデルといえる特別な腕時計であり、パイロットから時計愛好家まで幅広いユーザーに愛されている。GMTマスターの成り立ちや豊富なペットネームについて見ていこう。

空の実用時計として登場

GMTマスター

1955年に発売された初代「GMTマスター」。このモデルにはまだリュウズガードがなく、以降のモデルと比較すると、ややすっきりとした印象を受ける。

1950年代は、旅客機による大陸間旅行が発展し、複数のタイムゾーンをまたぐ移動が盛んになった時代である。ジェット機黎明期の50年代、パン・アメリカン航空の要望を受けて開発されたのがGMTマスターだ。

54年に発表、55年に発売された初代GMTマスター(Ref.6542)は、GMT機能つまり第2時間帯表示機能を備えたパイロット向け腕時計である。

これに先立つ53年には、人類初のエベレスト登頂にインスパイアされた「エクスプローラー」と、100m防水を備えるダイバーズウォッチ「サブマリーナー」が発売されている。

陸海に続いて空のプロフェッショナルモデルとして登場したGMTマスターは、世界初の超音速旅客機コンコルドのテスト飛行に携行されたほか、NASA(アメリカ航空宇宙局)や空軍パイロットにも愛用されるなど輝かしい経歴を誇る。

著名キャラの愛称が付いたモデルが有名

GMTマスターII

1982年に誕生した「GMTマスターII」。時針の単独操作が可能になり、第3時間帯の表示まで行えるようになった。

GMTマスターは時計愛好家やコレクターの間でも人気が高く、両方向回転ベゼルのカラーリングなどによってさまざまなペットネーム(愛称)が与えられている。

初代GMTマスターは昼夜を一目で識別するためベゼルを赤青に色分けしており、ペプシコ社のロゴをイメージさせることから「ペプシ」と呼ばれる。

赤黒の色分けはコカ・コーラをイメージさせることから「コーク」、茶黒や茶金なら同じくノンアルコール炭酸飲料の「ルートビア」といった具合だ。

1982年発売の初代「GMTマスターII(Ref.16760)」は赤黒だが、同時期のGMTマスターIより分厚いため「ファット・レディ」あるいは「ソフィア・ローレン」という特別なペットネームで呼ばれ、非常に希少価値が高い。

また、2013年には青黒の新色ベゼル搭載モデルが登場し、その昼夜ともにダークなカラーリングから「バットマン」と呼ばれる。


歴史と系譜

「GMTマスターI」は1955年に登場し、4世代目までのモデルチェンジを経て99年頃に生産終了した。「GMTマスターII」は82年に登場し、現行モデルの4世代目まで販売が続いている。82〜99年頃まではGMTマスターIと併売された。

2007年のモデルチェンジで人気急騰

GMTマスターは登場初期からパイロットや海外出張が多いビジネスパーソンなどに愛用されてきたが、コレクションとしての人気で比較すればエクスプローラーやサブマリーナーほどではなかった。

契機が訪れたのは2007年、第3世代GMTマスターII(Ref.116710LN)の発売である。オイスタースチール製のケースは前作よりやや大きくなり、極めて耐傷性が高く紫外線で退色しにくいセラクロムベゼルを採用した。

高耐磁性のCal.3186を採用した上、リュウズはツインロックからトリプロックに変わって堅牢性が増し、ブレスレットの着用感や高級感も向上している。

さらに、ベゼルは黒のモノトーンのみ、GMT針は赤からグリーンに変更された。高級かつ実用的な性能・デザインは多くのユーザーに歓迎され、過去モデルの価値を再発見させるきっかけも与えた。

GMTマスターI

GMTマスターI

1960年頃に発売された「GMTマスター」の第2世代モデル。リュウズガードが備わり、蓄光塗料はラジウムからトリチウムへと変更された。

初代GMTマスターI(Ref.6542)は赤青ベゼルとミラーダイアルを採用し、リュウズガードが付いていないことが特徴だ。発売当初、ベゼルはプレキシガラス製だったが、2年後にはアルミ製に変更され、59年頃まで生産された。

60年頃に発売された2世代目(Ref.1675)はリュウズガードを備え、GMT針先端の三角形は現行モデル同様に大型化している。80年頃まで生産されたロングセラーモデルだ。

80年に発売された3世代目(Ref.16750)は赤青に加えて黒のベゼルもラインナップされ、日付クイックチェンジ機構を持つ2万8800振動/時のCal.3075を搭載した。88年頃に生産終了となっている。

90年頃に発売された4世代目(Ref.16700)は耐傷性が高いサファイアクリスタル風防を採用し、フリースプラング仕様のCal.3175を搭載して精度や耐衝撃性、メンテナンス性も向上した。99年頃に生産終了している。

GMTマスターII

GMTマスターII

1990年頃から2007年まで製造された「GMTマスターII」のセカンドモデル。当初は赤黒のベゼルのみだったが、やがて赤青や黒のベゼルもラインナップに追加された。

初代GMTマスターII(Ref.16760/通称ファット・レディ)は時針の単独操作が可能なCal.3085を搭載し、GMT針・ベゼルと組み合わせて第3時間帯の表示に対応した。ベゼルは赤黒のみで、88年頃に生産終了した希少モデルだ。

90年頃に発売された2世代目(Ref.16710)は、2007年まで販売された。発売当初はテンプ受けが両持ち式のCal.3185を搭載したが、後期モデルから高耐磁性のCal.3186に変更された。また、99年頃までのベゼルは赤黒のみだが、生産終了したGMTマスターIのカラーを吸収して赤青や黒もラインナップに加えている。

07年には3世代目(Ref.116710LN)が登場。13年にはRef.116710BLNR(通称バットマン)を追加し、いずれも19年まで販売された。

18年には4世代目(Ref.126710BLRO)が発売され、19年にはRef.126710BLNRをラインナップに追加した。これらが現行モデルである。


GMTマスターの魅力や使い方

ロレックスの「GMTマスター」は、GMTモデルの象徴ともいえる不動の地位を確立している。そのデザインや機能性、GMT機能の使い方を見ていこう。

特徴的なデザインと機能性

GMTマスターはGMTモデルの始祖といえる腕時計だ。24時間表示の両方向回転ベゼルと24時間で1周するGMT針を備え、この特徴的なスタイルは、ユーザーはもちろん、他の時計メーカーにも多くのフォロワーを生んでいる。

最新モデルは高い耐磁性や耐傷性、耐候性、耐衝撃性、100mの防水性能に加え、C.O.S.C.(スイスクロノメーター検定協会)が定めるクロノメーター基準以上の精度も誇るなど、高度な性能・スペックも魅力だ。

ブレスレットはイージーリンク システムにより簡単に5mm延長でき、装着感も良好。ムーブメントの部品製造からベゼルの素材改良・仕上げまで隙がなく、石鹸水で水洗いができるメンテナンス性の高さまで備える。

GMTマスターIIの使い方

GMTマスターIIは時針の独立調整機能を備えるため、ホームタイム(母国時間)とローカルタイム(現地時間)の表示に加え、回転ベゼルを組み合わせることで第3時間帯の表示も同可能にしている。

時分秒針で表示するのがローカルタイム、GMT針(24時間針)で指すのがホームタイムである。さらにベゼルを回転させ、GMT針が指し示す回転ベゼル上の時間が第3時間帯だ。

リュウズを2段階引くとローカルタイム・ホームタイムが連動して動く。1段階引くとローカルタイムのみの調整が可能だ。

たとえば日本時間を起点として、リュウズを1段階引いて9時間巻き戻すと、ローカルタイムにはロンドン時間が表示される。この状態で回転ベゼルの基準時を14時間分進めると、GMT針で指すベゼル上の時間がニューヨーク時間となる。

GMTマスターIとIIの違い

GMTマスターIは、リュウズガードを備えた2世代目(Ref.1675)以降は、見た目ではGMTマスターIIと大きな違いはない。特に後期GMTマスターIは、ベゼルのカラーが同じになるとGMTマスターIIと見分けるのは困難だろう。

実際、GMTマスターIIという名称は時針の独立調整機能を持たせたモデルを呼び分けるために生まれた経緯があり、GMTマスターIとの大きな違いはGMT機能だ。

GMTマスターIは時針の独立調整機能を備えていないため、時刻合わせの際にはローカルタイムとホームタイムが連動する。第2時間帯を調整する場合には、ベゼルを時差分回転させることが必要だ。つまり、第3時間帯は表示できない。

なお、この操作方法はリュウズを2段階引けばGMTマスターIIでも可能である。GMTモデルとしての機能拡張版がGMTマスターIIと考えよう。