ロンジンを着けるとは語るべきストーリーがあるというメッセージだ
2011年の就任以降、ラドーの在り方を一新したのがマティアス・ブレシャンである。20年7月、ウォルター・フォン・カネルの後任として、彼はロンジンのCEOに就任した。「破壊的なイノベーション」をモットーに、マーケティングから製品までを刷新した彼は、老舗のロンジンでどういった手腕を振るうのだろうか?
「ロンジンにおいて、伝統と革新は相関的なキーワードですね。ロンジンには豊かな歴史がありますが、とはいえ過去に生きている、ということではないのです。伝統とは、技術力、審美性の両面での革新を刺激するためのスプリングボードだと考えています。これからも私たちはロンジンのヘリテージモデルを再解釈してローンチし続けていきますが、同時に過去のモデルから新作を創造していくためのインスピレーションを受け続けています」
ロンジンCEO。オーストリア生まれ。1996年、スウォッチ グループに入社。スウォッチ テレコムでエリアセールスマネージャーなどを務めた後、ハミルトンに移籍。ハミルトンCEOを経て、2011年にラドーCEOに就任し、同ブランドの在り方を変えた。20年7月より現職。ロンジンを成功させる要素として、彼は「1にイノベーション、2にイノベーション、3にイノベーション」を挙げる。
現在、ロンジンは全方向で成功を収めている。復刻版は手堅く売れているし、ベーシックなコレクションも支持を集めている。しかし、スポーツウォッチが弱いように思う。どのように手を入れていくのか?
「いや、コンクエストやハイドロコンクエストに代表されるように、ロンジンはスポーツウォッチの分野においても強さを発揮してきました。コンクエスト V.H.P.やそのほかの新しいバリエーションなどがその例です。しかし、さらに重要視しているのは、今回スポーツラインに加えられた新コレクションの『ロンジン スピリット』ですね。これは、探求心と勇気をもって記録を打ち立て、歴史に名を刻んだ英雄たちへの輝かしい賛辞を込めたコレクションであり、彼らのパイオニア精神を具現化したタイムピースです。このコレクションは、スポーツモデルがロンジンにとって重要であることを示しています」
そしてもうひとつが、新型コロナウイルス後にどのような戦略を採っていくかである。消費者はどう変わり、ロンジンはどう対応していくのか?
「ブランドのDNAに忠実であることで、ロンジンの長期的戦略がうまくいくと信じています。私たちは自らの製品に自信を持っており、その価値は将来的にも継続的な成長の助けとなるでしょう。そしてコロナ禍を経て、さらにこれまで以上に、人々は自分たちが信頼の置ける、自身のパーソナリティーに合うブランドに投資をするでしょう。ロンジンの時計を着けることは『私の時計には語るべきストーリーがあり、私にもストーリーがあります』というクリアなメッセージを与えると思っています」
就任10年足らずでラドーを刷新したマティアス・ブレシャン。就任直後だけあって具体的な話は聞けなかったが、今後どのような舵取りを行っていくのか注目したい。
ロンジンらしい、クラシカルなテイストを盛り込んだクロノグラフ。スポーツウォッチを標榜するだけあって、防水性能は10気圧まで高められている。ブレスレットの質感も良好だ。自動巻き(Cal.L.688.4、ETA A08.L01ベース)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径40mm)。10気圧防水。36万8000円。
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