2020年8月26日、ブルガリはいくつかの新製品を発表した。その目玉のひとつが、「ブルガリ アルミニウム」のリバイバルだ。筆者はアルミニウムという素材には懐疑的だが、かつてブルガリが時間をかけて耐食性という課題をクリアしたことは聞いている。そんな同社が満を持して発表したのだから、新しいアルミニウム製ウォッチには期待を持ってしまう。説明してくれたのは、デザインを担当したファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニだ。
アルミニウムとはブルガリの革新という伝統の一部です
ブルガリ ウォッチ デザイン センターシニア・ディレクターとしてデザイン部門を率いるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ。1971年、イタリア・ナポリに生まれる。工業デザイン大学ローマ校を卒業後、1998年にフィアットに入社。後に独立し、2005年には自身のデザインスタジオを設立。それをブルガリが吸収するかたちで、ブルガリに参画。以降、同社のプロダクトデザインを刷新した。工業デザイナーであったが、近年はメティエダールにも目を向ける。代表作は「オクト フィニッシモ」「ルチェア」など。
「ブルガリというのはイノベーティブなブランドであり、1998年に採用したアルミニウム製のケースとカウチュストラップの組み合わせはブレークスルーでした。これはブルガリの伝統となりました」。しかし、ブルガリは樹脂製ケースを採用した革新的な「ブルガリ・ブルガリ シティーエディション」をリリースしたばかり。さらにアルミニウムを加えた理由は何なのか?
「オクト フィニッシモはハイエンドを目指した時計です。対して新しいアルミニウムは違う層に向けたものです。時計にあまり興味を持たない人でも使えるスポーツシックな時計。ミレニアル世代は、ヘリテージ、テクノロジー、魅力的な価格、クォリティが揃ったプロダクトを欲しがっているのです」
確かに新生アルミニウムは、ブルガリに新たな顧客層を拓くかもしれない。だが、アルミニウムの耐食性は気になる。ブルガリは前作でアルミニウムの耐食性をクリアしたが、その点はどうなったのか?
「30年前と今では素材も技術も違いますね。自動車産業や航空産業で使われるアルミニウムは大きく変わり、ラップトップPCやスマートフォンにも使われるようになりました。今回、ブルガリは市場にある最も良いアルミニウムを採用しました。デザインは前作からほぼ変えていませんが、質はいっそう高くなりました」。耐食性への配慮は、素材の組み合わせにも見て取れる。「裏蓋とクロノグラフのプッシュボタン、ベゼルの周囲もチタン製に改めました。ですが、あえてデザインはほぼ同じです。オールドデザインをリスペクトしたのと、1年や10年ではなくずっと使える時計だからです。強いて言うと、リュウズとプッシュボタンをわずかに大きくした程度。文字盤の仕上げも製法も変えていません」
発表された新しいアルミニウムは直径40㎜の3針モデルふたつとクロノグラフの合計3モデル。しかし、ブルガリはコレクションの拡充を考えているようだ。
「今後もアルミニウムのコレクションは拡充していく予定です。新しい解釈として、イタリア空軍とのコラボレーションも考えています。スペシャルエディションを出したら面白いでしょう?」
デザインはほぼそのままに、素材のみを一新した新生「ブルガリアルミニウム」。製法は同じだというが、ブルガリの進化を反映してか、文字盤の印字などは明らかに良くなっている。価格を抑えるためか、ムーブメントはセリタ製SW300ベース。自動巻き(Cal.B77)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。アルミニウム×Ti×ラバー(直径40mm)。100m防水。31万5000円。
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