MR PORTERとウォッチズ＆ワンダーズの協業は時計業界のeコマースにおける台風の目となるか

2020年9月、メンズファッションサイトのMR PORTERがウォッチズ＆ワンダーズとパートナーシップを結んだ。両者の発表に拠ればこの協業により、MR PORTERは「マルチブランドオンラインリテーラー」として、ラグジュアリーウォッチを幅広い手段で発表、販売していくという。果たしてこの取り組みは、時計業界のeコマースにおける台風の目となるだろうか。

MR PORTER×ウォッチズ＆ワンダーズ

「マルチブランドオンラインリテーラー」とは

　NET-A-PORTERのメンズファッションに特化したオンラインショップ、MR PORTERはラグジュアリーファッションのeコマースを牽引する存在だが、この度、ウォッチズ＆ワンダーズ初の「マルチブランドオンラインリテーラー」としてパートナーシップを結ぶに至った。

　2020年9月に始まった今回のコラボレーションによって、時計業界でも人気のブランドがMR PORTERに集まり、ワールドクラスのショッピング体験とワンクラス上の記事コンテンツ、さらにオンラインとオフラインのイベントを提供できるようになった。今回のスタートにあたり、トータルで14のプレステージ性の高いブランドが初めて集結している。

　キャンペーンを通じて、MR PORTERの顧客は企画されたさまざまなアクティビティを体験することができる。EIP（Extremely Important Person：企業情報ポータル）が参加する特別なバーチャルイベントから小規模なアポイントベースのセッションや1対1のバーチャルセッション、MR PORTERの編集長サラ・ベイリーやシニアウォッチエディターのクリス・ホールが主催する双方向のインスタグラムのライブ対話などが用意されている。

　さらにカスタマーリサーチを拡大するために、MR PORTERはいくつものラグジュアリーウォッチの購入体験ができるウェブサイトを立ち上げている。改良されたサイズガイドに始まり、トレンド分析やTPOに合わせた設定、素材でのフィルター掛けなど、その他の試作も続く予定だ。

　4月にNET-A-PORTERのTmall（天猫）における旗艦店で、ウォッチズ＆ワンダーズのデジタルプラットフォームが開設されたのに続き、今回の新しい試みは1年を通した取り組みであり、世界トップクラスの時計と宝飾ブランドにとって、世界を対象としたラグジュアリーリテーラーの存在を確立するものである。

　この「三つ折り」のアプローチは、顧客を他にはない新しい形で、変化の速いラグジュアリーウォッチの世界に結び付けることになるだろう。

WatchTime編集部お勧めモデル

　当面、MR PORTERは新作のラインナップと、ウォッチズ＆ワンダーズに参加する14ブランドの人気モデルを販売していく。そこにはカルティエ、エルメス、IWC、ジャガー・ルクルト、ピアジェ、ヴァシュロン・コンスタンタン、そして初参加のユリス・ナルダン、ボヴェなどの名前が見られ、その中にはNET-A-PORTERでレディースのタイムピースを展開するものもある。MR PORTERが取り扱うモデルで、特筆すべきタイムピースを以下に挙げる。

　ビンテージ調で、なおかつメンズのラグジュアリータイムピースに合致するものとしては、ヴァシュロン・コンスタンタンの「フィフティシックス・オートマティック」の18KPGケース＆セピアトーン文字盤のモデルがある。マルタ十字にインスパイアされた40mm径のケースはブラウンのレザーストラップが合わせられ、自社製キャリバー1326を搭載し、約48時間のパワーリザーブを保持している。

　もう少しアヴァンギャルドで、ハイオクなデザインの車やエンジンにインスパイアされた時計が好みの場合は？　ロジェ・デュブイ「エクスカリバー ウラカン」はどうだろう。45.5mm径のチタン製ケース、そしてオープンワーク加工が施されたムーブメントはランボルギーニのレーシングチーム「ランボルギーニ・スクアドラ・コルセ」とのコラボレーションから生まれている。

　洗練された世界の旅を楽しむ人には、ボヴェの「リサイタル 27 リミテッドエディション」が3つのタイムゾーン、24都市名が書かれたふたつのディスク、洗練されたムーンフェイズなど一連のコンプリケーションを提供してくれる。特徴的な「ライティングスロープ」状のディミエケースは、チタンもしくは18KRGから選ぶことができる。

　オートオルロジュリに現代建築的趣を加えた興味深いタイムピースをお望み？　それであればユリス・ナルダンの「ローズゴールド ブラスト」がある。ステルス戦闘機のラインにインスパイアされた彫刻的ケースを備えた、スケルトン加工トゥールビヨンの新作コレクションの筆頭だ。

　もっとトラディショナルなドレスウォッチをお探しなら、新しいカルティエの「パシャ ドゥ カルティエ」であろう。1980年代のアイコンスタイルが刷新され、ブルーのカボションが配されたリュウズと、同じくブルーカボションが付いた開閉式リュウズカバーが備わっている。

　かつてのアイコンを現代的に解釈した時計といえば、ジラール・ペルゴの「フリーブリッジ」だ。同モデルではクラシカルなジラール・ペルゴのスリーブリッジを21世紀に進化させている。一部が肉抜きをされたダイアルからは、香箱からトゥールビヨンに至るまでの各輪列を見ることができる。

MR PORTER CEOはこう語る

「世界でもトップクラスの時計を提案するウォッチズ＆ワンダーズとチームを組むことによって、特別なタイムピースを提供する国際的なプラットフォームを築き上げたかったのです」とNET-A-PORTERならびにMR PORTERのプレジデント、アリソン・ローニスは語る。

「時計のストーリーやそのアイコニックなマーケットをサポートすることが、市場を活性化させ、世界の時計愛好家がアクセスしやすい環境を作るのです」と語るのは、Fondation de la Haute Horlogerie（FHH：高級時計財団）のCEOマチュー・ユメールだ。

　彼はこう続ける。「ウォッチズ＆ワンダーズ、NET-A-PORTER、そしてMR PORTERのユニークな取り組みを発表できることをうれしく思います。FHHのパートナーブランドに、エクスクルーシブなコンテンツをもたらし、新たな高級時計のチャンネルを切り開くことになるでしょう。」