Cal.321の完全復刻を成し遂げたオメガ。原型があったとは言え、これは大きな快挙だろう。その321を搭載したステンレスケースのスピードマスターが、ついに日本でも発表された。正直価格は安くない。しかし、クロノグラフファンなら、一度は手にすべき時計だろう。
第3世代のスピードマスターをほぼ完全に再現したモデル。もっとも風防は内面無反射のサファイアガラスに、ベゼルもセラミックスに変更された。手巻き(Cal.321B)。17 石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径39.7mm)。5気圧防水。151万円。
広田雅将(本誌):文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
圧倒的な操作感
コレクター垂涎の「321ムーン」。2020年に発表されたSSモデルが、早くも日本に入荷した。価格は151万円。「スピマス」らしからぬ価格だが、中身を考えればリーズナブルだ。
以前、オメガ副社長のジャン-クロード・モナションは、321の再生産計画があると語った際に「年産は150〜200本程度だろう」と漏らした。説明を聞けば納得だ。321の組み立てには2日、ケーシングにも1日かかるとのこと。時間のかかる理由は、ムーブメントを組んだ後にもう一度バラして組み上げる2度組みを採用したため。仮にすべての部品を新造していたら、これほどの手間はかからなかっただろうが、オメガは昔の設備も使っているようだ。基本設計を1942年にさかのぼると考えれば、2度組みはやむなしか。
ムーブメントの出来映えは、いうまでもなく見事である。チラネジ付きのテンワに、ニヴァロックスの巻き上げヒゲ、クロノグラフ中間車を支える受けもオリジナルに同じく洋銀製。筆者はかつて、新品の321を触ったことがある。驚くべきことに、新しい321Bも、プッシュボタンの感触はまったく同じなのだ。
ケースバックからのぞくのは伝説のCal.321。チラネジ付きのテンワ、巻き上げヒゲなど、愛好家好みのディテールを備える。ムーブメントの仕上げはセドナゴールドに変更されたほか、パワーリザーブは約55時間に延びた。精度は-1~+11秒/日以内と当時と同じ許容値だが、3姿勢から5姿勢チェックに改められた。
このモデルはブレスレットも良くできている。形状はかつてのモデルに同じだが、重みがあり、左右の遊びも適切だ。ヘッドとブレスレットのバランスもまずまずで、控えめに言っても、現行のスピードマスターの中ではもっとも装着感が良い。
人気沸騰間違いなしの、321ムーン。生産性の低さは気になるが、今後変わるかも知れない。今のオメガは、まず生産性を無視してプロダクトをリリースし、その後に、生産性を改善するというプロセスを取るようになった。と考えれば、今後321にも、それを期待して良いのではないか。
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