「アキュトロン」、60周年の節目で世界初の静電誘導ムーブメントを発表

世界初の音叉式電子時計「アキュトロン」は、2020年で誕生60周年を迎えた。この節目の年に、アキュトロンは再び世界を驚かせる新技術を搭載する腕時計を発表した。静電誘導により駆動する「アキュトロン スペースビュー 2020」と「アキュトロン DNA」だ。21世紀のテクノロジーと20世紀半ばのノスタルジーをふんだんに盛り込んだ2モデルである。

　1960年、機械式時計が主流だった時代に、ブローバは世界初の音叉式電子時計「アキュトロン」を発売した。これは機械式時計の脱進機の代わりに、トランジスタの電気振動を用いた音叉を利用して高精度な計時機能を実現するという画期的な方法を取り入れていた。その名前は「Accuracy」（正確さ）と「Electronic」（電子）に由来する。ブローバの技術者、マックス・ヘッツェルの発案によるこの技術は、360ヘルツもの速さで振動し、その精度は月差1分程度だった。今や伝説となったアキュトロンの初代モデル「スペースビュー 214」（ムーブメント「キャリバー214」に由来する数字表記）は、それまで市場に出回っていた他の時計と一線を画した。そのデザインは、ムーブメントがオープンダイアルから時計基板が見えるようになっており、またリュウズはケースの裏側に配された独創的なものであった。

　アキュトロンは1960年代の宇宙競争真っただ中で、数々の偉業を成し遂げた。ブローバとNASAのパートナーシップにより、アポロ計画すべての宇宙船にアキュトロンのダッシュボードクロックが搭載されたのだ。69年の歴史的な月面着陸の際、重要な月のデータを送信するために行った実験にアキュトロンの計時装置が採用され、現在も「静かの海」に残されたままである。64年にリンドン・B.ジョンソン大統領はアキュトロンを「国家からの贈り物」と宣言し、67年には大統領専用ジェット機エアフォースワンにアキュトロンのクロックが備え付けられた。

　ブローバから独立したブランドとして生まれ変わったアキュトロン。このたび新たに発表した2モデルに搭載されたのは、手首の動きで発電する静電エネルギーを動力源とする独自の新ムーブメントだ。文字盤の5時と7時位置に見えるふたつの静電誘導発電タービンの電極間で、腕の動きに連動してツインタービンが高速回転することにより、電力が生まれる仕組みである。畜電池に蓄えられた電力によって時分針が動き、10時位置に配された静電誘導モーターにより秒針が動く。

　シチズングループ・アメリカのジェフリー・コーエン社長によると、このムーブメントの開発には10年以上の歳月を要したようだ。それはつまり、シチズングループがブローバを買収した2008年直後から続く長期計画だったことを意味する。「テクノロジーは常に時計愛好家の心にある」とコーエンは話し、「それがムーブメントの進歩であろうとも、またその他であろうとも。シチズンではブランドの原点に立ち返りながら、これまでにない時間計測技術の進歩を付け加える」と続ける。

　アキュトロン スペースビュー 2020のケースサイズは、直径43.5mmだ。ムーブメントの露出した文字盤側にグリーンのアクセントを加えた外観はオリジナルモデル「スペースビュー 214」を彷彿とさせるものである。ブラックのレザーストラップが組み合わされたレトロな仕上がりだ。

　アキュトロン スペースビュー 2020と同時に発表された「アキュトロン DNA」は、アキュトロンをさらに現代風にアップデートしたデザイン要素を備える。グリーン以外の色調としてブルー、グレー、ローズゴールドが合わせられたほか、フォールディングバックル付きのラバーストラップを組み合わせ、スポーティーな印象が加えられた。こちらのケースサイズは直径45.1mmとやや大きめである。