時計の文字盤によくあるラッカー仕上げとは?/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

2020.11.08

Q:時計の文字盤によくあるラッカー仕上げって何なの?

2020年11月8日掲載記事

A:塗料を何層にも重ねる塗装方法です

最近増えてきたのが、ラッカー仕上げの文字盤です。塗装を何層も重ねるラッカー仕上げは、メッキのように塗装が薄くないため、文字盤に施された繊細な仕上げを潰してしまいがちです。反面、鮮やかな色を出しやすいというメリットを持っています。かつて、ラッカー仕上げの黒文字盤はミリタリーウォッチに多用されました。

メッキで黒を出すのは大変難しいとされていますが、塗料で黒くするのは容易です。また、大量生産に向くため、省コストな手法だったのです。こういったメリットがあるため、黒文字盤の多くは、今なおラッカー仕上げです。メッキの技術が進歩したとはいえ、黒文字盤は今なおラッカー仕上げの独擅場と言っていいでしょう。


近年は鮮やかで平滑な文字盤を作れるポリッシュラッカーが高級時計の主流に

最近出てきた新しいラッカー仕上げは、表面を研ぎ上げたポリッシュラッカーと呼ばれるものです。これは、ラッカーを何層にも重ねて表面を研ぎ上げる手法のこと。以前はラッカーを重ねるとひび割れしましたが、塗料が進化した結果、重ねても割れにくくなりました。乾燥に時間がかかるため製造コストは跳ね上がりますが、鮮やかな発色が得られるほか、耐久性にも優れるというメリットを持っています。

フュメダイアル

外周に向かって色が濃くなっていくスモークダイアルも、ラッカー塗装の特長を生かした文字盤表現のひとつ。H.モーザーの「フュメダイアル」はその代表的存在だ。
Photograph by Yu Mitamura

発色が鮮やかで、表面が滑らかな文字盤であれば、ポリッシュラッカー仕上げの文字盤と考えていいでしょう。現在この手法を得意とするメーカーには、ロレックス、グランドセイコー、ブルガリ、F.P.ジュルヌなどがあります。ヴァシュロン・コンスタンタンの「オーヴァーシーズ」も、ポリッシュラッカーの文字盤を使うことで、高級感を与えることに成功しています。

H.モーザーのフュメダイヤルも、ラッカーの特長を生かした手法です。文字盤の外周に色を落としたラッカーを吹くことで、文字盤に複雑な表情を与える。これはラッカーにしかできない手法、と言えるでしょう。オーデマ ピゲの「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」の文字盤も、同様の手法で作られたものです。

現在、時計のトレンドはより鮮やかな文字盤に向かっています。そのため、ポリッシュラッカーの手法はいっそう広まりを見せていくに違いありません。


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