やはりリアルフェアは中止! 「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2021」はフルデジタルで開催へ!

ウォッチジャーナリスト渋谷ヤスヒトの役に立つ!? 時計業界雑談通信

日本時間2020年11月17日23時5分、残念なニュースがメールで飛び込んできた。発信元は旧SIHH(ジュネーブ・サロン)、現ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ事務局だ。
その内容は2021年4月7日から13日にかけて開催予定だった「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2021」を物理的なサロンとしては開催せず、2020年と同様に100%デジタル・サロンとして開催するというものだ。その最新情報をお届けする。

渋谷ヤスヒト:取材・文・写真 Text & Photographs by Yasuhito Shibuya
(2020年11月21日掲載記事)


2021年は100%デジタル開催に!

 時計業界関係者、特にスイスブランドの関係者や、スイスブランドと取引の多い時計専門店の方々なら、「まさか」と思うより「やっぱり」と思う人がほとんどに違いない。

 フランス、イギリス、ドイツ、スペインが再びロックダウン(都市閉鎖)に突入していることが報じられているが、時計王国スイスの感染拡大もこうした国々と同様に深刻で、危機的な状況が続いている。スイスに関する情報を日本語でも発信している情報サイト「SWI swissinfo.ch」に掲載されている以下の感染者グラフを見れば、状況がいかに危機的か分かるはず。なにせ、1日1万人超の新規陽性者が報告されている日もあるほどだ。

(出典:「SWI swissinfo.ch」日本語ページより)

 ジュネーブ州などフランス語圏の州は、11月2日からレストランの閉鎖などの部分的なロックダウンを行っている。さらに上の説明にもあるように、医療崩壊寸前の州には、軍隊まで派遣して危機に対応している。

 感染症の常識を考えれば、たとえ有効性の高いワクチンが完成し、接種が行われても、ウイルスは常に変異を続ける。インフルエンザワクチンでも分かるように、コロナウイルス系のワクチンには100%有効なものはない。専門家は「最高のものでも有効性は50%程度だろう」という。

 2021年4月まではまだ約4カ月あるが、気温と湿度が下がり、生活空間の密閉度が高まる冬は感染拡大がどうしても起こりやすい時期だ。この先、何度もこうした「感染拡大→一時収束→感染拡大→一時収束→感染拡大」が繰り返されることは明白である。

 2020年のフェア中止発表は開催の約2カ月前だったが、2カ月前では直前過ぎて関係各位の混乱は免れなったことは記憶に新しい。今後も危機がまだ何度も起きることを考えて、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ事務局は決断したのだろう。「リアルなサロン中止=100%デジタル開催」は当然と言える。

これが、2020年11月17日23時5分(日本時間)に、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ事務局から届いた、100%デジタル・サロンとして開催することを知らせるリリース。

 この対応は、感染の収束など到底見込めないのに、この期に及んでもオリンピックを強行すると言い張っている。しかも、スイスや海外各国のような数多くのPCR検査どころか、限られたエリアのPCR検査による感染の実態把握すら行っていない。海外から見たら「危険度がまったく不明なエリア」になっている。しかも事実上、“感染拡大キャンペーン”でしかない「GoToトラベルキャンペーン」を、巨額の費用を投入して来春まで続ける。海外から見たら“さらに危険な国”にしようとしている愚かなこの国の政府とは正反対。迅速で賢明な判断だ。


ロレックス、パテック フィリップなど5つのビッグブランドも参加

2020年4月14日に発表された、主要5ブランドのバーゼルワールド離脱宣言(FHHのオフィシャルサイトより)。

 今回の「100%デジタル開催」のプレスリリースで注目したいのは、バーゼルワールドに決別を告げたロレックス、パテック フィリップ、シャネル、ショパール、チューダーという5つのビッグブランドが、すでに「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2021」参加ブランドとして名を連ね、「時計界を代表する50のブランドが参加する」と記されている点だ。

 現在、リリースにリストアップされているのは、下記の34ブランドである。

A.ランゲ&ゾーネ、アーミン・シュトローム、アーノルド&サン、ボーム&メルシエ、ボヴェ、カルティエ、シャネル、ショパール、ファベルジェ、クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー、ジラール・ペルゴ、グローネフェルド、H.モーザー、エルメス、HYT、IWC、ジャガー・ルクルト、ローラン・フェリエ、MB&F、モンブラン、パネライ、パルミジャーニ・フルリエ、パテック フィリップ、ピアジェ、パーネル、レベリオン、レッセンス、ロレックス、ロジェ・デュブイ、ルディ・シルヴァ、スピーク・マリン、チューダー、ユリス・ナルダン、ヴァシュロン・コンスタンタン

 事務局は他のブランドにも参加を呼びかけているというから、おそらくラグジュアリーブランドを束ねるふたつのコングロマリット、LVMHグループとスウォチ グループのうち、ひとつはこのデジタル・フェアに参加すると予測できる。

「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2021」は100%デジタル開催となったけれど、その内容は2020年よりもさらに進化して、双方向性のあるプレスカンファレンスやヴァーチャルなファクトリーツアーなど、新たな試みが期待される。素早い決断に拍手を贈ると共に、フェアが今後どのように進化するのか、今から楽しみだ。



渋谷ヤスヒト

渋谷ヤスヒト/しぶややすひと

モノ情報誌の編集者として1995年からジュネーブ&バーゼル取材を開始。編集者兼ライターとして駆け回り、その回数は気が付くと25回。スマートウォッチはもちろん、時計以外のあらゆるモノやコトも企画・取材・編集・執筆中。


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