本間恵子
ウィズコロナで存在感を高める、ジュエラーによるジュエリーウォッチ
ジュエリーシーンではここ数年、空前の「石コンシャス」現象が起きている。カラフルな宝石をちりばめたジュエリーがワールドトレンドとなっているのだ。その影響を受けてか、ゲイプライド月間である6月にレインボーフラッグの色を宝石で表したゴージャスなウォッチが一斉に発表されたことは、今年の大きな特徴であった。宝石で虹色を表現するのはそう容易ではない。ガーネットやサファイアなど何種もの宝石を調達し「石合わせ」と呼ばれる作業でグラデーションの調子をそろえ、宝石の透明度もそろえなければならない。社内に専任のストーンバイヤーがいたとしても、これは大変だったろう。
また、多くの新作が既存コレクションのブラッシュアップやエクステンションだった中で、まったく新しいデザインとして誕生した品々にも目を引きつけられた。とりわけ真性ウォッチメーカーではないジュエラーやファッションブランドの時計が斬新だ。どれも時計っぽくない。ジュエリーに「たまたま時計がついている」といった体なのだ。
COVID-19のパンデミックにより、日常生活が変わった。一日に何度も手を洗い、消毒しなければならないため、デリケートな宝石のついた指輪が着けにくくなってしまったのだ。それに代わって存在感が増しているのが、ジュエリーのような時計。レディスウォッチにより一層の色彩や煌めきが求められる時代が、思いがけなくやってきた2020年だった。
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本間恵子が選ぶ2020年新作腕時計 BEST5
〈パルミジャーニ・フルリエ〉 トンダ 1950 ダブルレインボー フライングトゥールビヨン
ルビー、サファイア、ガーネットで虹色を表現。カラーグラデーションの自然さ、なめらかさが際立ち、目の肥えた宝石好きをも満足させる仕上がりとなった。デザインに合わせて宝石をリカットするのも大変だったろう。
〈ディオール〉 ディオール グラン ソワール プリセ プレシュー
ボールガウン(舞踏会用ドレス)にあしらわれたレースや刺繍、プリーツを思わせるデリケートなレイヤーが新鮮。クチュールメゾンならではの自由な発想がこの文字盤によく表れている。ムーブメントはエリートを採用。
〈ヴァシュロン・コンスタンタン〉 エジェリー・クォーツ
メンズの人気モデルの小型化、というよくある手法ではなく、女性たちのために新たにデザインを開発した心意気がうれしい。37mm径の自動巻きも美しいが、日本人好みなのはやはり30mm径で薄手のクォーツだろう。
〈ヴァン クリーフ&アーペル〉 ミッドナイト ポン デ ザムルー
橋の上で男女がキスを交わすという魅力的なコンプリケーションだが、まさかメンズが登場するとは思わなかった。ボタンひと押しでアニメーションが開始するようになったので「ほらほらキスするよ!」と見せて自慢できる。
〈シャネル〉 マドモアゼル プリヴェ ブトン
ツイードジャケットの袖がそのまま時計になったことに驚いた。大粒のオーストラリア産マベ真珠の下にコンシールドダイアルがあり、真珠のボタンをクラスプとしてブレスレットが開閉する仕組みもヒネリが利いている。
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