CASIO ウォッチメイキングの神髄 Vol.1 カラー(COLOR)

FEATUREその他
2020.12.21
PR:CASIO

「壊れない腕時計」G-SHOCKを筆頭に、常にどこにもない革新的な腕時計を世に送り出すカシオ。その進化、挑戦と革新を語る上で最も重要なキーワードが「CMF」、つまり「C」=「カラー」、「M」=「マテリアル」、「F」=「フィニッシュ」である。そこには、腕時計の感性価値を決めるこの3つの要素に対する開発者たちの並外れた情熱と絶え間ない技術革新への探求心が込められている。本特集では全3回にわたって、カシオの最新モデルを具体例として、この3つの要素にひとつずつフォーカスし、カシオのウォッチメイキングの核心に迫る。

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
渋谷康人:取材・文 Text by Yasuhito Shibuya

COLOR(カラー)にフォーカス

「カラー」は製品の第一印象を左右する、「CMF」の中でも最も視覚に訴える、直感的な魅力を放つ要素だ。カシオはこの分野で独自のアプローチを続けている。特集第1回は、この「カラー」にフォーカス。最新モデルのカラーに関する挑戦と革新をご紹介する。


日本の伝統色「阿波藍」をまとった最新「オシアナス」の粋

オシアナス

(左)OCEANUS Manta/オシアナス マンタ
Japan Indigo 〜藍〜 Ref.OCW-S5000AP-2AJF

伝統の天然「阿波藍」の染料と表面加工処理で“ぼかし染め”の雰囲気を再現した白蝶貝製のメインダイアルを備える。インダイアルにソーラーセルを搭載したBluetooth搭載・世界6局対応電波ソーラー腕時計。パワーリザーブ約5カ月。チタンケース&ブレスレット(縦48.8×横42.3mm、厚さ9.5mm)。10気圧防水。世界限定2000本。23万5000円(税別)。
(右)OCEANUS Classic Line/オシアナス クラシックライン
Japan Indigo 〜藍〜 Ref.OCW-T2600ALA-2AJR

濃いブルーから淡いブルーまで複数のブルー使って藍染めの風合いをイメージした文字盤を採用。“天然藍灰汁発酵建(てんねんあいあくはっこうだて)”という天然素材だけで作られる藍染料を使って染めたレザーバンドが魅力。世界6局対応電波ソーラー腕時計。パワーリザーブ約5カ月。チタンケース(縦48.2×横42.8mm、厚さ10.7mm)。10気圧防水。世界限定1000本。12万円(税別)。

 カシオの腕時計の中でも、最もラグジュアリーでクラシックなスタイルを持つのが、2004年に誕生した「オシアナス」である。ギリシャ神話の天の神・ウラヌスと大地の神・ガイアの間に生まれた海の神・オケアノスに由来する、フルメタルのアナログウォッチコレクションだ。

 このコレクションの登場で、カシオは本格ウォッチブランドになったと言っても過言ではないだろう。製品コンセプトは「エレガンス・テクノロジー」。つまり、カシオ自慢のデジタル技術と、大人を満足させるエレガントなデザインの融合である。

ビジネスマンのための「青い時計」

 オシアナスの重要なブランドアイコンが、海の神の名を持つ腕時計にふさわしい、海の色を彷彿させる「オシアナスブルー」だ。

「オシアナスが誕生した当時はまだブルー、それも金属皮膜による鮮やかなブルーは腕時計では珍しい時代でした。そして現在まで、カラーによるブランディングを貫いてきたことで、今では多くの人に『オシアナス=青い時計』と認知されています」と、カシオ計算機 開発本部 開発推進統轄部 プロデュース部 第一企画室 リーダーとしてオシアナスの商品企画を担当する佐藤貴康(さとう・たかやす)氏は語る。

(左)オシアナスの商品企画を担当するカシオ計算機開発本部開発推進統轄部プロデュース部第一企画室リーダーの佐藤貴康氏。同社の営業担当として毎日スーツを着る日々を経て、ビジネスマンのための腕時計を開発する現職に就任。「このコロナ危機で、ビジネスのスタイルも多様化しています。ブルーだけでなく、さらにオシアナスの世界を広げたいですね」。
(右)ジャパンブルーとして、伝統ある阿波藍と最新技術の融合で魅力を引き出したオシアナスの「Japan Indigo 〜藍〜」コレクション限定モデルのバリエーションは、マンタ2モデル、クラシックライン2モデルの全4モデル。どのモデルも甲乙つけがたい。

 オシアナスの「エレガンス・テクノロジー」というブランドコンセプトの「テクノロジー」がひとつの頂点に達した2014年以降のことだ。

 GPSと標準電波、ふたつの電波を自動的に受信して時刻修正できる世界初のフルメタルGPSハイブリッド電波ソーラー腕時計「OCW-G1000」(2014年)に続き、2017年にはBluetoothで接続されたスマートフォンを介したインターネットのタイムサーバーによる時刻修正機能を備えた究極精度モデル、Bluetooth搭載GPS電波ソーラー腕時計「OCW-G2000C」の登場で、オシアナスの機能はひとつの完成形に到達した。

「オシアナスはビジネスマンをターゲットにした腕時計です。求められているのは機能とエレガンス。機能の追求がひとつの頂点に達したことで、開発の方向性を、最適な機能を備えたエレガントなスタイルの追及にシフトしました」と佐藤氏。

 その言葉通り、オシアナスは文字盤に加えて、さまざまな素材、さまざまな技法でカラーによる挑戦と革新を続け、ベゼル上に唯一無二の「オシアナスブルー」を表現してきた。

「ジャパンブルー」の新世界

 2020年秋、オシアナスは「CMF」の「C=カラー」において、具体的には文字盤とストラップの新色で、新たな挑戦と革新に乗り出した。2018年の「江戸切子」の職人技によるサファイアクリスタルベゼルに続く、日本の伝統技術と現代の革新技術の融合。伝統的な製法によって作られる、日本のブルーの“原点”とも言われ、海外では「ジャパンブルー」とも呼ばれる藍色を文字盤やストラップに採り入れた「Japan Indigo(ジャパン・インディゴ)〜藍〜」シリーズだ。

(左)江戸時代以降、当時の阿波の国、現在の徳島県で発達した「阿波藍」。これは天然の阿波藍から沈殿法で抽出した濃厚な藍の成分から作られた染料。この染料を用いて今回の新作が採用する白蝶貝文字盤を染色している。
(右)藍染めの染液を作るための染料「すくも」作り工程の一部。藍色の成分が抽出できる蓼(たで)を乾燥させた後、水を打って混ぜる工程を繰り返して整頓させることでこの状態になる。「阿波藍」は現在も伝統的な手法で手間と時間をかけて作られる。

 エレガンスラインの「マンタ」2モデルとクラシックラインの2モデルの全部で4モデルが限定発売中のこのシリーズに使われているのは、江戸時代から現在まで受け継がれている、徳島県の「阿波藍(あわあい)」伝統の染色技術と素材である。

(左)「すくも」作りの「切り返し」という作業。「すくも」が発酵し湯気が立ち込める中で職人が作業をする様子は、古くから続く伝統的かつ神秘的な光景である。
(右)今回、阿波藍の魅力を追求した限定モデルの企画・開発に協力してくれたのが、100年を超える歴史を持つ呉服屋の「絹や」。「絹や」で“絞り染め”をカウハイドに施す職人。藍染めは染色を何回も繰り返すことでより深い色が表現できる。なお、阿波藍の原料は今や国内では稀少な蓼藍である。

 藍染めの技術は5世紀に大陸から日本に伝わったとされるが、本格的に日本に定着したのは16世紀の戦国時代。そして普及したのは、絹を着ることを禁止された庶民が木綿の着物を着るようになった江戸時代のこと。藍は木綿を染めることのできる数少ない染料として一気に需要が拡大した。そして当時の阿波の国、現在の徳島が藍染めに使う染料と藍染めの日本における中心地として第2次世界大戦前まで栄えていたのだ。徳島の産業と文化は、この藍を除いて語ることはできない。

「オシアナスブルー」の革新を考えていた佐藤氏をはじめとするオシアナスの開発者たちは、この「阿波藍」の技術に注目。新たに唯一無二の「オシアナスブルー」の世界を創造することに成功した。

藍染めの白蝶貝文字盤とレザーストラップ

 まずケース厚わずか9.5mmのエレガントな薄型ケースの「マンタ」に採用された文字盤カラーに関する進化と挑戦、藍染めの白蝶貝文字盤に込められた「妥協なき追求」をご紹介しよう。

マンタのブレスレットモデルの文字盤の見切り。天然の阿波藍から沈殿法で作られた濃厚な藍の顔料を使った文字盤に合わせ、サファイアクリスタルに24面カットを施した上、シルバーから紺色のグラデーション塗装が施される。

 マンタの白蝶貝文字盤に使用された藍の染料は、藍の生成法のひとつ「沈殿法」で抽出されたもので、これは化学薬品を一切使わない「天然灰汁発酵建て(てんねんあくはっこうだて)」と呼ばれる伝統にのっとって時間をかけて作られた、約1トンの原料からわずか1Kgほどしか取れないという大変貴重なものである。
 マンタの白蝶貝文字盤は、これを塗料化して白蝶貝の裏面から塗布することで染められている。
 さらに文字盤の表側には、この藍の色が、グラデーションが掛かった味わい深いものになるよう、色調整塗装とグラデーション塗装が施されている。

オシアナス マンタ

藍の“ぼかし染め”をイメージして、表面処理でグラデーションを与え、その魅力を引き出したRef.OCW-S5000AP-2AJFのマザー・オブ・パール文字盤。ベゼルにも、文字盤のブルーグラデーションを活かすためにブルーから紫に変化するグラデーションIP加工が施されている。

 そして、マンタのレザーストラップモデルとクラシックラインに使われているレザーストラップにも、これまでにない挑戦と革新が込められている。
 これは徳島で100年を超える歴史を持つ呉服屋であり、藍染め技術を使った革製品作りも行っている「絹や」の協力の下、この伝統的な「阿波藍」を使って染められ、作られたものだ。

 しかも、マンタのストラップはクロコダイル革。「絹や」にとってもクロコダイル革の染色は史上初の挑戦であった。さらに、クラシックラインの2モデルのストラップは、カウハイドと呼ばれる牝牛の革を藍染めの風合いを強く感じる絞り染めにし、ウレタンに貼り付けて作られる。さらに付属のストラップは、同じ素材で、何度も染め直すことで“留紺(とめこん)”という深い色味に染め上げて作られたものだ。そのうえどのストラップも、職人の手で藍染めされた革から作られているため1点モノで、うれしいことに、オーナーが自分の手で簡単に交換できる仕様になっている。

 藍染め製品の魅力は、冴えてしかも深みのある独特の色合い、そして他の方法では出せない絶妙なムラ感。また、使い込むほどに深まる色の変化も魅力だ。
 日本の伝統技術と最新技術が融合したこの「Japan Indigo(ジャパン・インディゴ)〜藍〜」シリーズでオシアナスは、まさに新しい「オシアナスブルー」の新世界を確立したのである。

オシアナス マンタ

絞り染め技法で染色することで生まれた独特の染めムラが印象的なOCW-T2600ALA-2AJRのレザーストラップ。その模様を活かすため、贅沢に革をカットし、職人が手作業で縫い上げたカウハイド製のストラップ。交換用にもう1本、単色染めのストラップが付属する。