現在のトレンドを踏襲し、オリスのデザインアイコンである「オリス ビッグクラウン ブロンズ ポインターデイト」は、ケースだけでなくベゼルやリュウズ、そして文字盤までもが温かみのあるブロンズで包まれている。今回は、日常での装着を意識して着用テストを行った。
Text by Martina Richter
2020年12月22日掲載記事
オリス「オリス ビッグクラウン ブロンズ ポインターデイト」
ブロンズは60%以上の銅を含有した金属組成で、人間が作り出して使用した最初期の合金として知られる。現在では時計のケース素材として人気があり、多くのブランドがブロンズのモデルをラインナップしている。
この素材の良さを理解するためには、経年変化で現れる味わいを好きになる必要があるだろう。ブロンズは空気に触れると変色する。時が経つにつれ表面が酸化するからであるが、耐久性や腐食に対する強さなどは変わらない。色の変化は時の移ろいを反映するのみだ。他にこれほど時間の経過を色濃く映すのに適した素材があろうか? 特に「オリス ビッグクラウン ブロンズ ポインターデイト」のように、過去を彷彿とさせるデザインの時計であればなおさらだ。
1938年、オリスはパイロットが手袋をはめたまま操作できる大きなリュウズを備えた時計を発表した。視認性を高めるための大きなアラビア数字と矢印の形をしたマーカー、日付を示す赤い先端の矢印の形をした針が特徴的な「ビッグクラウン ポインターデイト」だ。この腕時計はオリスの歴史の一部となり、一度も生産中止になったことはない。80年以上もの間、時代の変化や、社会情勢の動乱、多くの流行やすたりなどを乗り越え、オリスというブランドのトレードマークと目されてきた。実際このタイムレスなタイムピースがなければ、オリスは高品質で独立したスイスの時計ブランドとしての現在の評価を得ることはできなかったかもしれない。
オリスの業界での哲学を記すブロンズ
ビッグクラウン ポインターデイトは1980年代後半のクォーツ危機を経てオリスが復活し、将来的には機械式時計のみを製造することを決定した際にも重要な役割を果たした。印象的なこのタイムピースには歴史と目的があり、当時も今も強い感情を呼び起こしている。
ブロンズ製文字盤は化学処理が施され、ケースのように経年変化を起こすことのないよう透明なマットのニスで仕上げられている。数カ月にわたる着用テストの間、ケースのカラーは明るいゴールドからダークブラウンへの変化が見られた。これにより時計には深みが加わり、独自の経年変化を湛えるようになった。文字盤は変化しないのだが、1点ものの雰囲気を漂わせるに相応しい仕上がりだ。
オリスといえばポインターデイト
本機は1938年のオリジナルモデルに比べ、いくつかの小さな変更が加えられている。矢印の形をしたマーカーの代わりに、アラビア数字を備えたアワートラックが採用されている。ミニッツトラックはヴィンテージのように見えるが、これは初期のビッグクラウン ポインターデイトモデルには見られなかったものだ。
6時位置のスモールセコンド仕様は歴史ある1938年製「ポインター」キャリバー373の産物であるが、これはセリタSW200-1をベースとしたキャリバー754ではセンターのスイープセコンドとなっている。ポインターデイトの特徴的な針は1938年製のオリスのオリジナルデザインのままだ。内側がカーブした三角形の針先は、文字盤外周に配されたオリジナルより若干小さい日付の数字をうまくとらえている。
ヴィンテージ感のあるカテドラル様式の時分針には蓄光塗料がたっぷりと塗布された。暗所で時分針はミニッツトラック内のアワーマーカーと共に明るい緑色に浮かび上がる。その他の数字の光り方は少し弱いかもしれない。時間は蓄光処理と本格的なヴィンテージデザインのおかげで、どのような状況下でも読み取りやすい。
ケースに備わるドーム型風防、コインエッジベゼルなどは、時計の歴史的要素を強調し、アイコニックなタイムピースに説得力のある正統性を与えている。下向きに傾斜したラグとしなやかなレザーストラップは、着け心地も抜群だ。ブロンズケースと同様に、ストラップも摩耗による経年変化が見られるが、これもデザイン上考慮されたものであることは間違いない。オリスはストラップの取り外しや交換が簡単なレバーをラグに設けた。シンプルでありながら頑丈なブロンズ製のピンバックルは、時計全体のスタイルによくマッチしている。
もともとパイロットが使用することを念頭においてデザインされた「ビッグクラウン」、つまり大きなリュウズは操作がしやすい。ゆったりとしたサイズと深い溝のおかげで、つかみやすいのだ。デイト表示は真夜中の30分前から徐々に変更が始まり、真夜中ちょうどに表示が切り替わる。針のプロポーションも完璧だ。
精度安定試験の結果、日差は許容できる範囲に収まっている。トランスパレントバックから鑑賞可能な自動巻きムーブメントは目を引くレッドのローターが印象的だ。税別22万円の価格は、非常に納得のいくものである。
精度安定試験
着用時: | +5.4 |
文字盤上: | +8.3/+9.6 |
文字盤下: | +7.4/+12.4 |
3時上: | -1.0/+0.1 |
3時下: | +5.5/+7.8 |
3時左: | +1.5/+2.2 |
最大姿勢差: | 9.3/12.3 |
平均日差: | +4.3/+6.4 |
平均振り角 | |
水平姿勢: | 298゜/266゜ |
垂直姿勢: | 282°/ 245° |
※この記事はクロノスドイツ版の翻訳記事です。
Contact info:Contact info:オリスジャパン Tel.03-6260-6876
https://www.webchronos.net/news/54363/
https://www.webchronos.net/news/44572/
https://www.webchronos.net/news/46689/