『クロノス日本版』92号でも書いたとおり(読んでない方はご購入よろしくお願いします!)、2020年はベーシックウォッチが大豊作の年だった。今年、各社は新製品の発表を控えたが、いわゆる定番であるベーシックは手堅く売れると判断したのだろう。結果、20年はベーシックウォッチの当たり年となった。どのモデルも注目に値するが、今回は編集部がフォーカスしたい、そして読者の関心が高いであろう3本を比較していく。
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
(2020年12月22日掲載)
そのモデルとは、ようやく決定版が出たIWC「ポルトギーゼ・オートマティック40」、往年の輝きを再び取り戻したジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・デイト」、そして掛け値なしに素晴らしいグランドセイコー「グランドセイコー60周年記念限定モデル SLGH003」だ。ちなみに筆者は「ギーゼマニア」なので、クロノスで挙げる2020年のベストウォッチにポルトギーゼを挙げた。
絶妙なパッケージングを持つ3本
結論を先に言うと、IWC「ポルトギーゼ・オートマティック40」とジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・デイト」、そしてグランドセイコー「グランドセイコー60周年記念限定モデル SLGH003」の3本は甲乙付けがたい。新しい「ギーゼ」はオートマティックの決定版と言ってよいし、ルクルトの「マスコン」も、2010年代の迷走っぷりは何だったの? というぐらい良くできている。そしてCal.9SA5を載せたグランドセイコーは、仮に手に入るなら、中身だけで指名買いして良さそうだ。以下、3つのモデルを深掘りして行こう。
2020年にリリースされたベーシックウォッチ3本は、定番時計として最も重要な要素、つまりパッケージングに優れている。3モデルの基本スペックは以下の通り。
IWC「ポルトギーゼ・オートマティック40」
ジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・デイト」
グランドセイコー「グランドセイコー60周年記念限定モデル SLGH003」
注目したいのは、3モデルのサイズである。いずれも直径は40mm台で、IWCとGSはようやくケースの厚みが抑えられた。時計の堅牢さを重視する両社は、ケースの厚みに無頓着ではなかったものの、ケースは決して薄くなかった。しかしIWCとグランドセイコーの新作は、ケースの厚さが13mmを切ったため、シャツの袖口に引っかかりにくい。あくまで筆者の私見だが、ベーシックウォッチの厚みは15mm、理想を言えば13mm以下であるべきだろう。
なお、厚さ10mmを切る「マスター・コントロール・デイト」は相変わらずドレスウォッチ並みに軽快な装着感を持っている。かつては10mmを切る薄型時計は普段使いに向かないと言われていたが、今回、ジャガー・ルクルトは「新定番」に相応しい堅牢さを盛り込むことに成功した。理由は後述する。
ちなみに防水性能が一番高いのは、ねじ込み式のリュウズを採用したグランドセイコーである。10気圧防水もあるため、手洗いの際に時計を外す必要はなさそうだ。ただIWCとジャガー・ルクルトも、実際の防水性能は表記よりも高い。手洗い時には外さねばならない(10気圧防水以下の時計は必ず外すべきである)が、あまり神経質になる必要はなさそうだ。
また老舗の作る定番だから当然だが、どのモデルもケースのエッジが立ちすぎて肌に当たるといった問題はまったくない。