2020年に発売されたクロノグラフのうち、特に特徴的なモデルをWatchTime編集部のマーク・ベルナルドが5本ピックアップ。21年の新作モデルが多く発表される前に、パルミジャーニ・フルリエ「トンダグラフ GT」やグランドセイコーの60周年記念モデルなどを振り返っておこう。
Text by Mark Bernardo
2021年1月13日掲載記事
パルミジャーニ・フルリエ「トンダグラフ GT」
自動巻き(Cal.PF043)。56石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径42mm、厚さ13.7mm)。100m防水。225万円(税別)。(問)パルミジャーニ・フルリエ Tel.03-5413-5745
特別な機会のためのラグジュアリーと日常使いの活動的なピースの間の神秘的なラインを巧みに踏み分け、進んでいるのがパルミジャーニ・フルリエの「トンダグラフ GT」だ。そのやさしくカーブしたラグ、人間工学にのっとりサテン仕上げとポリッシュ仕上げを組み合わせたブレスレット、クラシカルな刻みの入ったベゼル、文字盤のクル・トリアンギュレールギヨシェなどが特徴となっている。直径42mmのステンレススティール製ケースに内包されるのは自動巻きキャリバーPF043で、珍しいクロノグラフとアニュアルカレンダーの組み合わせだ。文字盤には蓄光塗料が先端に塗布されたデルタシェイプの時分針、センタークロノグラフ秒針、12時位置の大きな開口部でのデイト表示、3時位置のスモールセコンド、6時位置の12時間積算計と9時位置の30分積算計が配されている。カレンダー表示(日付・月)には文字盤とコントラストをなすよう明るいオレンジが採用されている。ねじ込み式のリュウズは100mの防水性能を担保し、ムーブメントは約45時間のパワーリザーブを保持している。
グランドセイコー「スポーツコレクション スプリングドライブクロノグラフGMT 60周年記念モデル」SBGC238
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R96)。50石。パワーリザーブ約72時間。18KPG(直径44.5mm、厚さ16.8mm)。20気圧防水。世界限定100本。460万円(税別)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012
15世紀〜江戸時代初期の日本の武士道に敬意を表したのが「スポーツコレクション スプリングドライブクロノグラフGMT 60周年記念モデル」SBGC238だ。戦国武将が身に着けていた甲冑をデザインテーマとしており、藍染めの勝色をあしらった文字盤が合わせられている。獅子はグランドセイコーが長く用いてきたシンボルだが、文字盤の獅子のたてがみのような模様やアングルの効いたステンレススティール製ケースに備わるザラツ研磨を施されたラグは、百獣の王の爪を思わせる。文字盤のセンターに配された針はクロノグラフ秒針。3つあるサブダイアルのうち、2時位置は30分積算計、4時位置は12時間積算計である。デイト表示は3時位置、パワーリザーブ表示は7時位置、スモールセコンドは9時位置、そしてGMTの針はセンターに配置されている。搭載される自動巻きスプリングドライブCal.9R96は主ゼンマイによる駆動ながら、従来の伝統的な脱進調速機を持たず、代わりにクォーツ振動子を用いることで高精度を実現している。
モーリス・ラクロア「ポントス モノプッシャー クロノグラフ」
自動巻き(Cal.ML166)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約58時間。SS+ブラックPVD(直径41mm)。10気圧防水。39万5000円(税別)。(問)DKSHジャパン Tel.03-5441-4515
モーリス・ラクロアはポントス・コレクションの20周年を限定モデル「ポントス モノプッシャー クロノグラフ」の発表をもって祝った。ケース径41mmのステンレススティール製ケースにはブラックPVDコーティングが施され、キズや摩擦に強くなっている。文字盤にはグラデーションカラーが用いられ、センターのミディアムグレーから外周部に向かうにつれて、ブラックへと変化していく。そして文字盤中央にはレッドのテレメーターとブルーのタキメーターがプリントされる。ふたつのメーターがエレガントに30分積算計とスモールセコンドで構成される3時・9時位置のサブダイアルを横断し、6時位置にはデイト表示が配されている。Cal.ML166はセリタSW-500をベースにシングルプッシャーに改良したもので、約58時間のパワーリザーブを保持している。
シンガー「フライトラック パルスメーター」
手巻き(Cal.AG6364)。49石。パワーリザーブ約55時間。Ti(直径43mm)。世界限定10本。2万6500スイスフラン。(問)https://www.singerreimagined.com/en/home/
カリフォルニアのカー・カスタマイザーとジュネーブの時計デザイナーのパートナーシップから生まれたシンガーは、2017年の設立からすぐに多くの注目を集めてきた。同ブランドのクロノグラフと言えば、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ2018で「トラック1 香港エディション」がクロノグラフ賞を受賞したことも記憶に新しい。そんなシンガーより発表されたのが、シンプルさを極めたクロノグラフ文字盤が特徴の「フライトラック」だ。同作はクロノグラフスケールの表示が異なる3つの仕様がそれぞれ限定10本ずつ発売される。タキメーターを配した「フライトラック タキメーター」だけではなく、光と音の時間差を図ることで観測している対象物までの距離を測るテレメーターを有する「フライトラック テレメーター」、そして脈拍を測るパルソメーターを持つ写真の「フライトラック パルソメーター」だ。直径43mmのステンレススティール製ケースにはマットなマイクロブラスト仕上げが施され、ポリッシュ仕上げのベゼルと2時位置にポンプスタイルのモノプッシャーが備わっている。すべての仕様で共通なのは外周ディスクに描かれた三角形のポインターで、これが時針の役割を果たしている。スケルトン加工が施された針は分針、1本のオレンジの針はクロノグラフ秒針となっている。このムーブメントはアジェノーによる開発だ。
ルイ・モネ「メモリス スーパーライト」
自動巻き(Cal.LM79)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Ti(直径46mm)。50m防水。(問)https://www.louismoinet.com
19世紀に活躍した時計師の名前を冠するルイ・モネは2004年の創業。その使命は時計業界における革新を次のレベルへと進めることだ。サテン仕上げのグレード5チタン製ケースを備える「メモリス スーパーライト」の特筆すべき点は、ムーブメントのクロノグラフ関連の機構を文字盤側に配したことだ。2時位置のモノプッシャーを押すと、クロノグラフのカンヌキやクラッチ、リセットハンマー、コラムホイールそして各種歯車が動く様子をみることができる。直径46mmと大型なケースサイズに対して、ケース重量はわずか31gだ。アリゲーターストラップのカラーは文字盤を反映したものである。
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https://www.webchronos.net/features/56776/
https://www.webchronos.net/news/52421/