そもそもクロノグラフとは?/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

2024.11.30

Q:腕時計の機構で人気のクロノグラフって、そもそもなんなの?

広田雅将

2021年2月7日掲載記事
2024年11月30日更新


A:ストップウォッチ機能の付いた時計がクロノグラフ

機械式時計好きなら一度は手にするであろうジャンルが、クロノグラフ。簡単に言うと、ストップウォッチの付いた時計になります。


かつて腕時計に搭載することは困難とされていた

ストップウォッチとの大きな違いは動力源。ストップウォッチはすべての力がストップウォッチを動かすためだけに使われます。しかしクロノグラフウォッチのほとんどは、時計を動かす(時刻表示用の)力の一部を分けて、クロノグラフも動かします。そのため、かつては小さな腕時計にクロノグラフを載せるのは難しいとされていました。力が足りない上、クロノグラフ機構にムーブメントのスペースを割くことができなかったためです。

Cal.6139,61ファイブスポーツ スピードタイマー

自動巻きクロノグラフ元年である1969年に発表されたセイコーのCal.6139と、搭載機である「61ファイブスポーツ スピードタイマー」。垂直クラッチを採用することで、自動巻き機構を併載するスペースを生み出すことに成功している。

しかし、今では機械式クロノグラフは当たり前の存在になりました。理由のひとつが、コンパクトで「省エネ」な垂直クラッチが普及したため。小さいため自動巻き機構などと併用できるほか、力のロスが小さいため、クロノグラフを動かしても、精度に影響が出にくくなったのです。最新型の機械式で自動巻きのクロノグラフは、ほぼ例外なく、垂直クラッチを載せていると考えていいでしょう。もっとも、1980年代以前に広く使われていた水平クラッチと違って、見栄えがするような構造ではありません。

ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」Ref.AB0138211B1P1
垂直クラッチを搭載した、ブライトリングの自社開発クロノグラフムーブメントCal.01。2009年の登場以来、改良が加えられており、初出時とはパーツは100%変わり、最先端になっているという。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。118万8000円(税込み)。

ゼニス「クロノマスター スポーツ」Ref.03.3100.3600/69.M3100
水平クラッチを搭載した自動巻きクロノグラフ「エル・プリメロ」。1969年の登場以来、設計を大きく変えずに使われ続けてきた、最も有名なムーブメントのひとつだ。そのエル・プリメロを、ゼニスが2019年に刷新して登場させたのが「エル・プリメロ 3600」である。1/10秒計測を可能としながら、約60時間のパワーリザーブも備えている。自動巻き(Cal.エル・プリメロ 3600)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm)。10気圧防水。156万2000円(税込み)。


クロノメーターとクロノグラフは別物

なお、一部の人は誤解していますが、クロノグラフとクロノメーターは別物です。前者はストップウォッチが付いた時計。後者は高精度の認証を受けた時計のことです。ですから、市場には「クロノメーター・クロノグラフ」も存在します。


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